「新しい左腕の調子はどうかしら?」
待機室に入ってきた私に三島技官が話しかけてきた。
「調子良いです。スムーズに動きますし、シールドもしっかり作れます」
「そう、ちょっと出力の検査をしたいわ。検査室に回ってもらえないかしら?」
「はい、了解しました」
検査用の弾丸をシールドで弾く。確かに以前よりも出力が上がっているようだ。安定性も段違いだ。
「OK、検査終了よ。予定通りのスペックが出ているわ」
「はい、これならあのビームも十分防げますね」
「ええ、あの程度の出力なら確実に耐えられるわ」
検査室から横の操作室に入る。
「それにしても、凄いですね。この2日でこんな新装備を開発するなんて」
「実は開発は済んでて、最終テスト中だったの。もう少し早く完成していればあんなことにはならなかったのに…」
三島技官が済まなそうに顔を伏せる。
「そんな、何とか勝てましたし、あの子も無事でした。気にする必要ありませんよ」
「けど…」
「大丈夫です。こうして腕も新しく作ってもらえたし、パワーアップも出来ました」
「あなたがそう言うなら…」
「それより、次の襲撃は…」
「ええ、ジェネラル級が来るはずね」
定期的に襲来するアザーズだが、3ヶ月に1度ジェネラル級に分類されるγタイプが現れる。前回から3ヶ月がたっているので、5日後にはγタイプが現れるはずだ。
「どんな子が来るか分からない。けど倒さなくちゃならないわ…」
「はい…」
α・βタイプも改造された人間だが、γタイプは明確に一線を画している。
α・βタイプはもはや人間としての面影も無い。だがγタイプは違う。
ヴァルキリーシリーズと同じように、人であったころの顔を模しており、変容しきっているとはいえ自我を持っている。そして、PSI兵器に近い特性を持つ武器を装備し、とても高い戦闘能力を持っている。徐々に高まってきた戦闘能力は、今ではヴァルキリー2体をも上回る。
歩いているうちに司令室にたどり着く。
そこには、01こと久我山 綾、02こと九条 明日香、指令など主だった面々が揃っていた。
「揃ったな。5日後に出現すると思われるγタイプについての会議を始める」
海道 真副指令が全員を見回して発言する。
「先程、オーディーン本部よりγタイプに関する情報があった。
中央コンピューター・ミミールによると71.7%の確立で3体が襲来。24.1%で2体、1体が4.1%、その他が0.1%とのことです。
また、襲来予想地区としては、日本96.4%、アメリカ83.2%、以下続きます」「ほぼ確実にこちらには来るという事ですか…」
「そうなります」
苦々しげな三島技官の言葉に、海道副指令は事務的に答える。
「今から日本支部では警戒レベルをレベル4+にあげる」
指令がそう宣言する。
レベル4+とは、基地要員は待機状態を維持、私たちも最低でも1体は待機状態で基地内に維持、残る2体も学園外への移動を禁止し、即座に出撃体制に移行できるようにしている必要がある。
「解散するが、全人員、兵装いつでも稼動できる状態にしておけ」
会議は指令の言葉で終わった。
「最初は私が待機しているわ」
部屋から出るとそう言い出したのは、綾さんだった。
「私はもう外に出ることも無いし、1回おきに回るわ」
「え?、でも…」
その言葉に私は躊躇する。
「そう、ならお願いするわ。2順目は私が担当するから、03貴女は4順目をお願いするわ」
しかし、明日香さんが私の言葉を遮って決めてしまう。
「それじゃあ、8時間後に…」
そう言うと、綾さんは待機室へと行ってしまった。
「明日香さん! 勝手に決めないでください」
思わず抗議の声を上げるが、明日香さんは聞き入れる様子は無い。
「01が了承しているなら問題ないでしょう。それよりいい加減この姿の時は、その名前で呼ぶのは止めなさい」
逆に、呼称について嗜められてしまう。
「規律を守れないような物と同型機と思われたくないわ」
そう言うと、ロッカーに向けて歩いて行ってしまった。
某所にて…
私、進藤 香織は妹の栞と2人でいる所をアザーズに襲われ連れ去られた。数十人の人々もさらわれており、一緒に様々な機械にかけられた。徐々に人数が減っていき、最終的には残ったのは私と栞の2人だけだった。
私たちが連れて行かれた先はそれほど広くない部屋で、中には同年代の少女が一人いるだけだった。少女は紫と名乗り、自分と同い年で、私たちと同じ様にアザーズにさらわれたと話した。
それから数週間の間、3人で暮らすことになった。
扉は電子ロックがかかっているらしく、ビクともしない。日に2回、朝晩に味気ない食事が放り込まれる以外、全く干渉することは無かった。栞は家に帰りたいと泣いたが、私と紫の2人で慰め、紛らわしながらすごした。徐々に、3人は互いを信頼し、依存するようになっていた。
そして運命の日が訪れた。
その日も目が覚めてからすることも無く、3人でつまらない話をしていた。
部屋の前に人型のアザーズがやって来る。朝食かと思ったが、それは間違いだった。いつもは投入口から放り込まれるだけだが、その日はピッという音と共に扉が開いたのだ。
開いた扉からは人型のアザーズが3体入ってくる。
「お姉ちゃん…」
栞が後ろで怯えている。隣では紫が厳しい表情をしている。
「大丈夫、私たちが守るから」
アザーズたちは入り口に1体を残して、こちらにやって来る。
「1名、コチラニ来テモラウ」
合成音声のような声で呼びかけてきた。
「私が行くわ」
紫が言った。
「何を言ってるの。みんなで逃げましょう。扉は開いてるわ。3人でかかれば」
その言葉を必死に拒否する私の意見を、紫は静かに切って捨てた。
「無理よ。大人の男の人が10人でも相手にならないのよ」
それが確かなら、私たちが敵う筈が無い。
「でも…」
「大丈夫。すぐに殺されると決まったわけじゃないわ。きっとまた変な機械にかけられて検査されるだけよ。それに、あなたがいないと栞ちゃんが泣き出しちゃうわよ」
無理に笑う。
「それじゃあ、行ってくるね」
そう言って、紫はアザーズたちと部屋から出て行った。時計が無い部屋の中では正確な時間は分からない。ただ、それでも2〜3時間は経っているだろう。紫が戻ってくる気配は無かった。
コツ、コツ、と非常に正確なリズムで金属同士がぶつかる足音が聞こえる。
栞は既に泣きつかれ眠っていた。静かな部屋にまで響くその音に私は身を硬くする。紫は裸足だった。足音はペタ、ペタ、という音だったはず。アザーズは音を立てずに歩く。
誰? 疑問が浮かぶが、答えは見えてこない。
もしかしたら、助けが来たのかも…。そんな希望も頭をよぎる。
やがて、足音は部屋の前に止まった。緊張で身体が硬くなる。私の後ろで栞も震えている。
ピッ、という電子音と共に扉が開いた。
そこに立っていたのは、今までのアザーズとは違う、より人間に近いフォルムをした機体だった。何よりも違ったのは、首から上だった。アザーズの頭はのっぺりとした球体だが、これは違った。
そこにあったのは、紫の顔だった。
「紫…」
「お待たせ、2人とも」
確かに紫の顔だが、凄い違和感を感じる。
「紫なの?」
「いえ、私はもう紫じゃないわ。γ25−1。こそが今の私」
「γ25−1…」
服を着ているのか?と思ったが違う。関節の隙間から機械が見える。彼女自身が機械になっているのだ。瞳もレンズになっている。
これが違和感の源?
「そう、私は改造手術を受けて最強の兵器になったの」
「改造… 兵器…」
そして、紫自身がその事を受け入れている…
「次はあなた達の番よ」
そう言って、紫、いやγ25−1と名乗ったアザーズが近寄ってくる。
「嫌! こっちに来ないで」
「大丈夫、貴女も改造手術を受ければ、自分の能力や存在そのものが素晴らしいと感じるわ」
言葉と共に彼女は私に触れる。その瞬間体に電気が走る。
「あ・・・」
声も出ず、口から息が漏れる。
「ごめんなさい、抵抗されると面倒だから・・・」
気を失う直前、彼女の声が聞こえた。
目が覚めると、そこは手術台の上だった。周囲を見回すと、栞が2体のアザーズに捕まってこちらを見ていた。
「んー! (栞−!)」
必死に声を上げようとするが、マスクで声が出ない。だが栞も私が目を覚ましたことに気付いたようだ。
「お姉ちゃん!!」
栞はアザーズたちを振り解こうと、暴れるが全く敵わない。
「さあ、改造を始めるわよ」
栞の後ろから、γ25−1が現れる。その声に呼応するように、何本もの作業用アームが降りてきた。数分のうちに私の身体はバラバラになり、機械仕掛けの骨格が首に繋がっていた。
「さあ、貴女も私たちの目的を理解するのよ」
γ25−1の声がすると、アームは私頭を狙って動き始めた。
いくつかの端子が頭に埋め込まれる。それと同時に、凄まじい量の情報が流れ込んでくる。私たちの存在目的、行動理念…、様々なものが焼き付けられる。その一方で、友人の顔、楽しかった思い出…、いろいろな物が消えていく。
数分の後、私の意識は以前のものとは全く違うものになっていた。
最後には、自分の名前すら置き換えられていた。γ25−2、γシリーズの25期の2機目を表すもの。それが今の私だ。
さらに、脳の不要な部分が削除され、補助用のコンピューターに置き換えられる。コンピューターから伸びたケーブルが、機械の骨格に接続されると、今までに無い不思議な感覚を覚える。
足りない。未だ自分は未完成だ。
(早く完成させて!)
心の中からそんな思いがふつふつと浮かぶ。
そんな思いを察したのか、アームは様々なパーツを骨格に組み込み始める。動力炉が組み込まれるとそのパワーに全身を震わせ、内蔵火器が接続されるたびに早く攻撃してみたいと思う。
改造が開始されて4時間もすると、私は脳の一部を除いた全身が機械に置き換わっていた。
「完成したようね」
γ25−1が声をかけてくる。
いつの間にか拘束を解かれていた手術台から起き上がり、機体の調子を確かめる。
自己診断モードが起動し、全ての箇所を綿密にチェックする。
ALL-OK
問題ない。
全身にみなぎる力と明確な目的、以前には感じられない快感が全身を支配していた。
「ええ、ずべてのシステムが稼動してるわ。いつでも戦場に投入されても大丈夫よ」
敵を打ち倒すことを思い浮かべ、思わず笑みが浮かぶ。
「お姉ちゃん…」
最後に残った素体がこちらを見ている。今期の製造プランでは、彼女を改造して完了となる。
「さあ、貴女で最後よ。栞もしっかり改造してもらいなさい」
この素晴らしい感覚を、貴女にも感じて欲しかった。
「いや…」
震える彼女、何を恐れているのだ。怖がる必要なんて何処にもない。軽く力を入れると、逆らうことも出来ず彼女は引っ張られる。
(改造が終われば、貴女にもこんなことは簡単よ)
そう思いながら、元妹を手術台に拘束するのだった。
<明日香SIDE>
私、九条 明日香は常に最高を目指していた。
九条と言う家、日本でも有数の名家に生まれ、全てにおいて最高を求められた。
そして成績、スポーツ、芸能、全ての分野で素晴らしい成績を修めていた。
そんな私に、運命の転機が訪れた。
「サイボーグ? 何を言ってるの。そんな物が実用化されているはずが無いじゃない」
目の前の男の戯言を聞き流し部屋を出ようとした私は、全身を貫いた衝撃に意識を失った。
[ ヴァルキリー02データ確認… ]
[ OS… OK ]
[ 動力炉… OK ]
[ ボディー制御プログラム… OK ]
[ 音声入力プログラム… OK ]
[ 画像入力プログラム… OK ]
[ 機体起動… OK ]
様々な文字が浮かんでは消える。
次の瞬間、激しいライトが視界を白く埋めるが、
[ 光量修正… OK]
と、文字が流れ視界が開ける。
「ヴァルキリー02、完成だ」
そんな声が投げかけられた。
そこにいたのは、真紅のボディーをした機械だった。
長かった髪もボディーのカラーと同じ真紅に染め上げられていた。
顔だけが、元の姿と変わらないのがおかしかった。
「君の処置については、君の両親からも許可を得ている」
軍服の男がそう言って、一枚のディスクを手渡してきた。
「九条家の人間が素材となっているのだ。最高のスペックを示せ」
「家は妹の鏡花が継ぎます。貴女は戦果を挙げることだけを考えなさい」
モニターに映る人型がしゃべっている。
(この人達は何を言っているの?)
言葉の意味を理解できない…ただ、もう九条の家には、いや、この世界には、九条 明日香という人間の居場所は存在しないと言うことだけおぼろげに分かった。
なら、最高を目指そう。今の私の出来る最高を…兵器としての最高を…最強の兵器に…
(嫌な夢だ…)
3年前、私が今の身体に生まれ変わった頃の、最強の誓いを立てた頃の夢だった…
<さくらSIDE>
予想時間まで6時間を割った。
最後の休息時間を終え、待機室に入ると綾さんと明日香さんの2人とも既に待機中だった。
「遅いわよ03。30秒の遅刻よ」
明日香さんの厳しい叱咤の声が上がる。
部屋の中は緊張感で満ちていた。
前回ジェネラル級が襲撃してきたときも、明日香さんはいつも以上にピリピリしていた。
だが、今回はそれ以上だ。
「02、もっとリラックスしなさい。戦場で必要以上に気負い過ぎると、危険よ」
「うるさい。別に緊張なんてしてないわ」
綾さんの言葉にも取り付く島がない。
ミミールの予測した時間まで30分を割った。待機室のみならず、基地全体が緊張感に包まれていた。外部では完全にシェルターへの避難が完了しているはずだ。
ジェネラル級の戦闘力は通常のアザーズの非ではない。一般の軍ではまったく歯が立たない。私たちヴァルキリーシリーズでも複数で相手をしなければ勝利するのは難しい。
以前に出現した日本、アメリカ、ドイツでは、自国や近隣国の所有するサイボーグたちが全てぶつかることで対処していた。今回も、厳しい戦闘になるだろう。
残り5分を割った頃、レーダーを監視していた観測員が声を上げる。
「成層圏に機影あり、3機です」
その声に、司令室の動きが一瞬止まる。
「日本への落下が予想されるのは1体です。到達予想地区はS県S市付近です」
即座に、状況が待機室に伝えられヴァルキリー達は出撃体制に入った。
「私が先に出るわ」
明日香が綾を押しのけて言った。
「フォワード無しでバックが飛び出してどうするの?」
綾も引かない。
「狙撃ポイントを確保するだけよ。少しでもいい場所が欲しいの」
一応は筋が通っている。まあ、上空で調整すれば問題も無いだろう。
「分かったわ」
綾が道を譲る。
私はその光景をただ眺めているだけだった。
「03出るわ」
ブースターが唸りを上げ明日香を打ち出していった・・・
「02速過ぎるぞ。速度を落せ」
司令室から命令が飛ぶ。
たしかに明日香さんの速度では、私たちが追いつくことは出来ない。
「速過ぎます。速度を落して」
こちらからも呼びかける。フォワード無しで勝てるほどジェネラル級は甘くない。
「あなた達は見ていなさい。私一人でも十分戦えます」
そう言うと、明日香さんは通信を切ってしまう。
「さくらさん、急ぐわよ」
綾さんの言葉にこちらの速度も最大まで上げた。
<明日香SIDE>
予想地域内に到達する。
周囲の避難は完了しているはずだ。もし不完全で被害が出て文句を言われても困る。
動体センサーに感あり、長距離狙撃用システム起動。
望遠カメラに切り替えると、ビルの上からこちらを眺めている白い機体を確認できる。
「ターゲット捕捉」
手持ちの火器の中で最大出力のものを構える。
「消えろ!」
αタイプなら数十体まとめて消し飛ばすエネルギーが、ただ一体の敵に集中する。
(獲った!)
そう思った瞬間だった。
いくつもの光の幕が浮かび射線を遮った。
「そんなもの!」
エネルギーは1つめの幕を貫き2つめを襲う。
「無駄よ」
だが、ジェネラルが笑うように答える。
それに答えるように、エネルギーは4枚5枚と貫くたびに減衰し6枚目の前に霧散する。
「そんな馬鹿な!」
最大の攻撃である。それを無効化されるなんて。
さらに幕がいくつも浮かぶ。先程のデータから考えれば、これだけの数を貫くのは無理だ。
「なら、近づいて零距離で撃ち込んでやる」
背中のブースターをパージし敵に向かって襲い掛かる。
「待って明日香さん!」
<さくらSIDE>
「追いつけない」
綾さんが焦りを隠せず叫ぶ。
ブースターを全開で飛ばしているが、明日香さんの機影を掴むことは出来なかった。
S市上空に入るとオペレーターも焦りをあらわに通信してきた。
「02が戦闘に入った。単独では危険だ。急げ」
それと共にデータが届く。
予想される敵タイプは近・中距離型。
その時だった。激しい光が目的ポイントの方から放たれた。
あれは明日香さんの最大出力の攻撃?
あれが当たれば、敵もただでは済まないだろう。
しかし、送られてきたデータは敵が無傷であることを示し、新たなデータを示す。
幾層ものフィールドで遠距離攻撃を無効化し、中距離以内で敵を殲滅すると予想される。
「まずいわ。明日香が最も苦手なタイプよ」
同じくデータを確認した綾さんが苦々しい口調で言う。
視界に捕らえた明日香さんは、ブースターをパージし敵に踊りかかっていた。
「待って明日香さん!」
おもわず叫ぶが遅かった。
華麗な抜き打ちで放たれたエネルギー弾は、明日香さんの右腕を打ち抜き、吹き飛ばしていた。
「ぎゃーー!!!」
悲鳴が響き渡った。
「遅いわ」
静かな声が響き渡った。続けて鈍い射撃音が響き明日香の片足が吹き飛んだ。
「性能が低い兵器ね」
腕を押さえ倒れ付した明日香を見下ろして敵は言い放った。
「私はγ25−2。これから貴様らを破壊する」
γ25−2と名乗った敵はこちらを見上げて続けた。
続けて降下したさくらと綾に銃口を向け、静かににらみ合った。三人は動くことが出来ず、にらみ合いが続いた。
風で捨てられていた新聞が舞い、γ25−2の視界を遮るように横切った。それがきっかけだった。
動けない明日香を除く3体のサイボーグが一斉に動き始めた。
弾丸と剣の残像がいくつも煌く。
だが、全てが効果を示すこともなく周囲の破壊が広がるのみだった。
「早い!」
2対1という状況なのに全く攻撃が当たらない。
当たる、と思ったものは全て輝く幕に吸収されたり、逸らされたりしてしまう。
「それではこちらの攻撃だ」
その発言の直後、弾の雨が降り注いだ。
「嘘!」
「くっ」
シールドを展開するが受けきれない。
全身を激しい痛みが襲う。
[バランサー異常]
[右脚部出力低下]
[シールド過負荷により停止]
赤文字で異常部分が表示される。
出力を下げて乱射したためか、致命的なダメージは無い。だが、またあの攻撃を受ければ無事ではないだろう。
「さくら!」
綾さんもそう思ったのだろう。即座に攻撃に移った。
「無駄な行為だ」
だが、やはり攻撃は当たらない。
「さあ、次はお前だ」
γ25−2がハンドガン状の武器を綾さんに向けた。
その時だった。
何かに引っ張られ、γ25−2の動きが一瞬遅れる。
「無視をするな!」
怒りの形相の明日香さんが、片手でγ25−2の足を掴んで叫び声を上げた。
「邪魔をするな。壊れぞこないが!」
明日香さんの足を蹴り払った時、完全に私たちを意識の外側に追いやっていた。
(今しかない!)
右足の出力異常の警告を無視して全力で駆け出す。
「ちっ」
標的をこちらに向けるが、その手に綾さんの撃った弾が襲い掛かる。
「五月蝿い!」
再度、片手を綾さんに向けようとする。
至近距離でのその行動はあまりにも不用意だった。
打ち出されたエネルギー弾が私の身体を襲うが、避けること無く左半身で受ける。
大量のダメージ報告が視界を真っ赤に染める。
(邪魔だ!)
全てを無視し即座に視界から消す。今は目の前の相手だけを見なくては。
ほとんど零距離まで詰め、右腕のサーベルを振り抜いた。
普通なら避けれたであろう攻撃は、敵の身体を深々と切り裂いていた。
「馬鹿な…」
蹴り飛ばされた明日香さんが、ハンドガンを抜き撃ちで放っていたのだ。背後からの衝撃に回避が遅れ、致命傷を負うことになったのだ。
「痛い! 痛いよ」
先程までの冷徹な声とはまったく別の声が聞こえた。
「栞。どこなの? お母さん、お父さん、助けて…」
か細い声で助けを求める。
そこにいたのは、冷徹な殺人兵器ではなくどこにでもいる少女だった。
「まさか記憶が戻ったの?」
近寄ろうとした瞬間だった。
DANGER DANGER
警告が視界を埋める。
思わず怯んだ次の瞬間、火柱が彼女を包んだ。
「助けて! いやー 栞ー!」
その声を最期に彼女は動かなくなった。

風俗 デリヘル SMクラブ