[ ヴァルキリー03データ確認… ]
[ OS… OK ]
[ 動力炉… OK ]
[ 機体反応… Error ]
[ 機体再起動… Error ]
[ 機体限定起動… OK ]

 目が覚めると、そこは見覚えのある作業台の上だった。
 身体が動かない。
(そうか、さっきの戦闘のダメージが…)
 何とか動く首を動かし身体を見ると、そこには大きな穴がいくつも開き酷い有様だった。

 戦闘が終わり敵が火柱に包まれ活動を停止したのを確認すると、SAFEモードに移行し、意識を失ったのだ。多分、回収班がここまで運び込んだのだろう。
 応急処置は終わっているようだったが、首から下のコントロールは切り離されている。
(誰かモニターしているだろうから、待っていよう)
 そんなことを考えていたら、三島技官が部屋に入ってきた。
「目が覚めたようね。調子はどう?」
 疲労が隠し切れない顔で三島技官は語りかけてきた。
「あ、はい。大丈夫です。とりあえず、首から上は問題ありません」
 その答えを聞きながらキーボードを叩き、難しそうな表情でモニターを見る三島技官。
「どうやら、生体部分にはダメージは無いみたいね。でも、ボディーの方はかなりダメージが厳しいわ。
 次の襲撃まではいつも通り一週間の猶予があると、ミミールも言っているわ。
 そこで、貴女のボディーの修復はこちらでやっておくから、貴女には完全休養が許されることになるみたい」
 完全休養。通常許されない距離までの外出が許される、私たちにとって最高のOFFだ。
「詳しくは司令に聞いてちょうだい」
 笑いながら、三島技官は言った。

「明日香さんは、どうなったんですか?」
 自分の扱いについての話に一段落着いたので、一番気になっていたことが自然と口から出た。独断専行とそれによる戦闘不能なほどの被害。私たちにそれが何のお咎め無しで許されるはずが無い。
「ヴァルキリー02は、思考に偏りがありと認められ、実戦での運用を一時凍結。再教育プログラムが組まれることになったわ。
 小林博士が担当することになって、プログラムが終了するまで博士のラボから出てくる事は無いわ」
 再教育プログラム… 改造されたての頃、教育プログラムと称し、半ば拷問まがいのプログラムがあった。あれが再び行われるんだろうか。いや、あれでは済まないだろう。あれ以上の精神的、肉体的苦痛を与えられ、思考操作しようとすることだろう。それを想像するだけで、恐怖で震える様な気になる。
「貴女もそんなことにならないように気をつけてね」
 深刻そうな表情で言う三島技官に思わずうなずく私だった。
「綾さんは、どうです?」
 これ以上この話題を続けるは恐ろしかったので、別の話題を振った。
「彼女はそれほどダメージを受けている訳ではないから、通常通りに整備を受けて休んでいるはずよ」
 その言葉にホッとする。
「この一週間は彼女一人で待機状態を維持してもらうことになるから、頑張ってもらわないと」
 そうだ、現状で私が完全休養に入ると活動状態にヴァルキリーは綾さんだけになってしまう。
「でも、過去のデータからこの一週間は安全なはずだから、そんなに気にする必要は無いわよ」
 そう言って笑う三島技官だったが、私は少しだけ安心できないでいた。これは兵器として、常に戦闘状態にあったことのせいだろうか…

 運ばれてきた擬装用ボディーに接続し換え、服を着て司令室へと向かう。司令室には、醍醐司令と小林博士が話し合い、離れた所に綾さんがいた。
「先程の戦闘は辛くも勝利を得ることが出来た。だが03のダメージも大きい。そこで、ダメージを受けたボディーは改修。03には五日間の完全休養を許可する」
 私たちが入ってくるのを確認すると、司令は小林博士の言葉を遮り通達を始めた。
「だが、02に関しては思考に偏りがありと認められるため、実戦での運用を一時凍結。再教育プログラムを実施することとする」
 その言葉に、綾さんも悲しそうな顔をする。
「これにより、待機状態の機体は01一機になるので注意を怠らないように」
「「はい!」」
 私たちは同時に答えた。司令はそれを確認すると踵を返そうとする。
「司令、話は終わっていません。量産機の開発を!」
 その背中に、小林博士の声が飛ぶ。
 だが、司令は力強く切って捨てた。
「くどいぞ、小林博士。許可できないと言ったはずだ」
 そのまま退室する司令の背中を眺めつつ漏らした小林博士の言葉が、後ほどあのような結果になるとは、このときは誰も思っていなかった。

 自室に戻りシャワーを浴びて、ベットに横になる。完全休養5日間。しかし、何をすればいいのだろう?1年以上も無かった自由な時間。それをどのように使えば良いか全く分からない。自分がどんな生活を送ってきたか思い知らされる。
 悩みながら目を瞑ると、眠気が襲ってきた。とりあえず、眠ろう。明日から考えればいい。

 教室に着くと、久美が駆け寄って来た。
「久しぶり。三島教授の仕事はもういいの?」
「ええ、一段落着いたからちょっと長めの休みがもらえたわ。
 5日間は自由にして良いって」
「じゃあ、今度の日曜日も空いてるの?」
「うん。遠出しても良いって許可ももらってるわ」
「それじゃあ、私にちょっと計画があるの。付き合ってもらえる?」
「日曜なら大丈夫よ。どんな計画なの?」
「ちょっと遊びに行きたいの。良いでしょ?」
「お金もあるし…OK、行きましょう」
「じゃあ、約束よ」
 そう言うと、彼女は部屋を飛び出していった。

 その夜、メールで久美から連絡があった。土曜の朝10時に駅前集合。目的地は新しくできた遊園地。女2人で遊園地というのもどうかと思ったが、特に予定があるわけでも無いし、由美が行きたいなら…、と思ってOKと返事を出した。
 土曜の朝9時50分。予定より早く着くと、そこには予定外の人物が待っていた。
「優太…」
「さくら…」
(なんでここに優太がいるの?)
 気まずい空気が流れる。
(「俺、さくらが好きだ。恋人として付き合って欲しい」)
 以前言われた言葉が頭の中に響き渡る。
(まだ、答えを出したなかったっけ…。でも、OKなんて出来ないよ…)
 優太もチラチラとこちらを気にしているようだが、声をかける機会をうかがっているようだった。

「なに2人で睨み合っているの!」
 次の瞬間、思いっきり背中を叩かれ思わずたたらを踏む。
「久美!」
 振り返ると、そこには男子を連れた久美が笑っていた。
「信二。これはどういうことだ?」
 優太の方は久美の連れと知り合いらしい。
「ダブルデートって奴だよ」
 信二と呼ばれた男子は、久美と同じように笑いながら答えた。
「ダブルデート?」
「さくら達、全然進まないじゃない。だからここでイベントを用意させていただきました」
 その言葉に、私と優太はさらに困った表情になるのだった。

 遊園地に着くなり、久美と信二はすぐにいなくなってしまった。
「ダブルデートだって言ったくせに…」
 二人きりになるとまたしても気まずい空気が流れる。
 言葉もなくしばらくお互いの出方を窺う。
「「あの」」
 二人同時に口に出し、また見つめ合う。
「そっちからお先に」
「いや、そっちから」
 そんなもどかしい会話が続いたが、そんなもどかしい時間は最終的には
「このままじゃしょうがないから、とりあえず回ろうか?」
という、優太の発言に私がうなずくことで終わりを告げた。

 あまり会話が無いまま、一日が終わろうとしていた。
「あれ乗らないか?」
 優太が指差したのは観覧車だった。
「う、うん…」
 戸惑いながらそれに頷くのだった…

 観覧車が回り始め、遠くまで見渡すことが出来る高さまで来た。
「なあ、あの答え。今聞かせてくれないか?」
 来た。いつか来るだろうと思っていた質問だ。だが、その答えを決めてもいなかったのは確かだ。
「俺のこと嫌いか?」
「そんなことない」
 即座に答える。
「じゃあ、なんで?」
「駄目なの。あなたの事は大好きだけど、私は駄目なの…」
 その言葉が重くゴンドラの中に圧し掛かる。そのまま黙ってしまった私を困惑した表情で見つめる優太。
 そんな時間が続き、ゴンドラは残り半分を迎えた頃だった。

『緊急警報 緊急警報 政府よりアザーズの襲来に対する緊急の警報が発令されました
 来園中の皆様は至急シェルターに避難して下さい。繰り返します、政府より…』

 園中のスピーカーが一斉に警報を流し始める。
「そんな!? 今日は奴らが来る予定じゃないはずだぞ」
 優太が驚きの声を上げる。だが、それよりも私の方がもっと驚いていた。
(周期では1週間は猶予があった。ミミールの予想でもこの1週間は安全だったはず。
 それが変化するなんて)
 眼下には園中の人々が逃げていく様子が見える。

「そうだ。久美達は!」
 携帯を取り出し久美にかける。
「久美。今どこにいるの?」
「私達は観覧車でまだ1/3ぐらい残ってるの。どうしよう?」
「私たちも観覧車なの。とりあえず落ち着いて、下で会いましょう」
「うん。わかったわ」

 私たちのゴンドラが着く頃には周囲には人影がほとんどなくなっていた。
「さくら、早く!」
 久美が急かすように声をかけてきたが、そこには一緒のはずの信二の姿はなかった。
「あれ、信二君は?」
「あいつなら一人でとっとと逃げちゃったわよ。酷いったらありゃしない」
 怒り出した久美をなだめるように歩き出した時だった。
 空の一角が光った。そう思った瞬間、後方の建物が爆発する。
「「キャー」」
 逃げ遅れていた人々から悲鳴が上がる。
 そこへシルバーのボディを輝かせたアザーズが3体降りてきた。

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