−−−−(4)娘達の決断−−−−

 フォボスから撃ち込み核融合パルス推進実験成功の報告があった。宇宙からは少しずつ明るいニュースも聞こえてくるが、私の身辺は憂鬱なことばかりだ。明日は特区の迎賓館で六芒星の首相に会わなくてはならない。決裂すると判っている交渉だ。
 かの国の領土は狭く、にもかかわらず無計画に世界から六芒星教徒の移民を受け入れている。乏しい農地と過剰人口による食糧難。そして隣接各国との数千年来の対立。
 まずいことに、かの国の科学力と財力は世界でも上位にあり核武装が可能であった。さらなる不幸は、我々の氷隕石移動技術を悪用する余計な知恵まであったことだ。隣国との境界にある湖に氷隕石を落とし、沿岸を壊滅させようなどと誰が言い出したのか。我々が金さえ出せばどこにでも隕石を落とすわけではないことなど百も承知の筈だ。それでもあえて直談判ということは、拒めば核ミサイルを撃ち込むと脅す気だろう。本当に核など使ったら、ますます世界から孤立するだろうから脅しだけだと思いたい。貴金属市場への影響力を行使して水銀の調達を妨害されるくらいは我慢する。だが、かつての北米連の例もある。政権中枢に冷酷さと説得力を兼ね備えた者がいれば危険だ。
 軌道警備部隊には既に非常警戒態勢を取らせている。数の上では六芒星が保有する少数のICBMに突破されるほど手薄ではない筈だ。だが、最近はサイボーグ化から5年以上で優秀な娘は殆どが核パルス艦要員を志望してしまう。下士官クラスの名手が大勢居た北米連迎撃戦当時と比べれば質は落ちているだろう。迎撃艇の機能強化が経験不足を補ってくれることを願うしかない。

上級皇族SNS・皇帝朝子10世のブログより


(静止軌道第七工場衛星 軌道警備本部)

あや:「対ICBM厳戒態勢なんて何十年ぶりなんだっけ。今どきそんなもの使うバカ居るのぉ?」

ふみ:「痛いニュース見てないの?。六芒星が死海に氷隕石落とせって要請してきた件よ」

あや:「ちらっと見たけど、粗悪なネタでしょう。それより、いよいよ恒星間航行艦の乗員募集ね」

ふみ:「恒星間航行艦かぁ。でも、私らはあと1年経たないと再改造受けられないからきっと対象外よ。それに、40年も艦内で同じメンバーと顔を突き合わせて暮らすのって、耐えられるかしら」

あや:「170式迎撃艇は極軌道への急速軌道変換時に大Gがかかるから乗員選抜が厳しいじゃん。だから、私らなら核パルス艦要員の選抜検査も簡単に通るはずだわ。可能性はあるわよ。ICBM厳戒態勢が発令されるようじゃ、太陽系から逃げ出した方が長生きできそうだわ」

ふみ:「うーん、確かに地球も危ない状況よね。でも、40年間休み無しはきついわねぇ。ここの勤務もきついけど、オフには本国の繁華街で派手に暮らせるから保っているような希ガス」

あや:「恒星間航行艦って100万d級の巨艦になるそうよ。艦内に繁華街くらい作るかもね」

ふみ:「重量の大半が燃料だから実力は10万d程度なんじゃないかな。男は居ない筈だし」

あや:「そうかぁ。男が居ないと施設があっても出来る遊びが限られちゃうわね」

警備本部長・リエ特務大佐:「いよいよトップ会談だわ。警戒レベルを引き上げるべきね。ローテーションを短縮するから、あやとふみはすぐに出なさい」

あや、ふみ:「はい、直ちに迎撃艇格納庫に向かいます」

皇紀170年式迎撃艇専用格納庫)

あや:「170式11号迎撃艇、あや1等兵搭乗しました。発進準備良し」

ふみ:「12号迎撃艇、ふみ1等兵搭乗しました」

管制官:「11号は3番リニアカタパルト、12号は4番リニアカタパルトより射出する。射出間隔は30秒。発進後は独自判断にて合流し、2時間後に六芒星上空を通過せよ。進入方向は六芒星−本国を結ぶ線に平行とする」

あや、ふみ:「了解」

管制官:「3番リニアカタパルト射出。ハッチ通過確認、閉鎖。4番射出」

あや:「ひゅーっ、相対速度秒速150b、出たわよ」

ふみ:「こっちも加速良好。このまま30秒間隔で降下軌道に入りましょう」

あや:「2時間で裏側からだとまともに行ったら化学燃料がぎりぎりね」

ふみ:「エアターン行く?。極軌道でもないのに普通やらないわよね?」

あや:「半周地点で高度60`を掠めれば燃料が10から13%浮きそうなんだな。90度回す訳じゃないから艇体の負荷も大したことにならないわよ。それに上昇で六芒星上空だからホントにミサイルが上がってきたら追いやすいわ。何ごとも無ければそのまんま裏に回ってもう一度の再突入で軌道戻せばいいし」


(経済特区・帝國迎賓館)

六芒星共和国首相・モエラ:「解ってちょうだいよ!。私ら六芒星人は他に行くところが無いの。アリババの奴らはね、4000年も前から暴力で私らを奴隷化したり追放したり苛めてきたのよ。それで仕方なく散り散りになって逃げていたの。それでやっと帰ってきたら土地を盗られていたの。死海沿岸の住人と称するアリババ人は不法占拠者なんだから死海に水を足すために退くべきなのよ」

朝子10世:「それで、その人たちには具体的に行くあてがあるのですか?」

モエラ:「そんなの自己解決よ。退去勧告を無視して死ぬのは自己責任」

朝子10世:「そう言うやり方を我が国では戦争行為と見なします。憲法上関与できませんわ」

モエラ:「皇帝の貴女なら鶴の一声で憲法解釈ぐらいどうにでもなるのでしょ」

朝子10世:「サイボーグ帝國の皇帝がみんな専制君主だなんていう偏見は棄てて下さい」

モエラ:「いつもそうやってのらりくらりと。私も今日は手ぶらで帰るわけにいかないのよ。我々にはどうしても農地が必要なの。貴女が氷隕石を売ってくれないと餓死者が出るわけ。ちゃんと代金も払うって言うのよ。餓死者が出そうなのを見捨てるのは構わないって言うの?。見殺しだって戦争と大して変わらないんじゃないの?」

朝子10世:「貴国の人口過剰は、なんの出生管理政策も採らず逆に移民を入れたせいでしょう。それこそ自己責任ですよ」

モエラ:「出生管理なんてそんな不道徳なことが出来るわけがないわ。神が許しません」

朝子10世:「そんな無理を押しつける神に従ったのが自己責任でしょ」

モエラ:「我々の神をそんな...。貴女、うちに核ミサイルがないと舐めてるんじゃないの。証拠を見せてあげるわ。我々は文明人だから、直接攻撃なんて野蛮なことはしないわよ。よく見えるように、ここから東に60`の海上で核爆発を起こして見せてあげるわ」

朝子10世:「海を汚すようなことは許しませんよ」

モエラ:「だったら無理矢理停めてみたら?。さもなくば氷隕石を売ってちょうだい」

朝子10世:「そお。なら、停められたら諦めるわね」

モエラ:「今に見てなさい。核ミサイル以外にも意地悪の仕返しをする方法はあるわ。今日はこれで会談を止めましょうか。でもすぐに貴女から会談を申し込むことになるわ。でわまたそのうちに」

朝子10世:「やれやれ。サイボーグに脅迫なんか通じないのにw」


(静止軌道第七工場衛星 軌道警備本部)

当番兵:「六芒星が特区東60`の海上を狙って核のデモンストレーションを宣言しました。リエ司令、指揮スタンドにお戻り下さい」

リエ:「やれやれ、ボディの手入れ中だっちゅうのに。忙しくてダイヤの輝きが鈍っちゃうわ。宣戦布告ではなくてデモンストレーションの宣言かよ。で、陛下からはなんと?」

当番兵:「海洋汚染も絶対に許すな。必ず墜とせと」

リエ:「よっしゃ。ローテーション崩れていないわね?」

当番兵:「向こう6時間に渡り30分間隔で2艇ずつが六芒星上空に達するよう維持しています」

リエ:「ふむ、今までの六芒星の手口なら抜き打ちで来るからおそらく1時間以内だろうね。一番当たりそうな組は...、あやとふみだな。素質はまあまあだが経験がなぁ。歳のせいで私が行けないのが痛いわ。弾頭の自爆に巻き込まれないと良いけど。で、コースは...ありゃ、これはエアターン狙いか。急がないと通信切れるな。あや、ふみ、至急応答しなさい...」


(長楕円軌道降下中の170式11,12号艇)

あや:「艇体予備冷却よし。外殻温度マイナス39度。姿勢最少摩擦角度へ」

ふみ:「艇内マイナス25度。うーやっぱ寒いよぉ。腕が凍ってきたわ。早く突入したいぃ。あら?今さら通信。司令からだわ」

リエから:「六芒星のデモンストレーション宣言は聞いたわね?」

あや:「ええ、でも1時間で来ないのでは?」

リエ:「まだまだ読みが甘いわね。たぶん、貴女達に当たるわよ」

ふみ:「えっ、マジですかぁ」

リエ:「もうじき大気圏でしょ。時間無いからとにかく聞きなさい。追いつけるのは敵地進入10分前以内の発射だから、それ以前だったら前の組に上から撃たせるわ。追い打ちだと相対速度が小さいから狙いやすいけど弾頭の自爆に気を付けること。逆に上空通過後20分までの期間は尻を上に向けておいて上から撃つ体制を取ること。攻撃に気を取られて無理に減速しないように。20分以上は自分が地上に落ちる危険があるわよ。過ぎたら次の組に任せるのよ。訓練通り基本に忠実...ザー、ガリガリ、プツン...」

あや:「大気摩擦始まったわ。レーザーならまだ通じるかな。ふみ、聞こえる?」

ふみ:「なんとか。そっちのケツも見えてるわ。自爆注意ったってどうするのかな」

あや:「さあね。司令みたいに全身を水銀で覆っていればちょっとぐらい大丈夫だろうけど」

ふみ:「今どき貴重な水銀をファッションに使うなんて司令みたいな資産家じゃなきゃ無理よ」

あや:「まったく。ご老体の忠告もいまさらだわね。結局運任せで突っ込むしかないわ」

ふみ:「運悪く放射線障害になったら、直しついでに早期再改造申請でもしますかね」

あや:「大脳の耐Gが悪くなるような怪我だけは勘弁して欲しいわね。あ、衝撃波キター...」

ふみ:「お、あや艇の三角波見えた。こっちもキター。よーし軸ぶれ無しだわ」

あや:「衝撃波突破。前縁追加冷却、液体窒素残量65%よし追加。前縁温度マイナス30度」

ふみ:「楕円軌道ボトムまで30`。可動翼端方向舵モードに変形。舵応答よし」

あや:「転舵開始。ぐうぅ...底面温度40度、前縁60度、窒素追加」

ふみ:「ひねり120度、背面飛行開始。地上監視地点設定、拡大。前縁90度、上昇停まった。六芒星上空まで1000`。地上はどうかな?。あ、あれは、ICBM打ち上げ炎確認。もろに出くわすわ。外殻温度は、...下がってる。これならレーザー通じるか。あや、見た?」

あや:「打ち上げの瞬間は翼の影だったけど今は見えてる。こっちは速いからすぐ追いつくわよ」

ふみ:「会合まで残り3分かな。2分30秒で重エキシマ射撃をかけましょう」

あや:「そろそろこっちも化学エンジン点火かな。エタノールコックオープン、GO」

ふみ:「あ、ICBMのカウルが外れたわ。え?、チャフばらまいてる。嫌らしいミサイルね」

あや:「弾頭分離前に仕留めましょ。いまエンジンを撃てば落ちて燃え尽きるでしょう」

ふみ:「遠いけど行ってみようか。重エキシマビーム安全ロック解除。視覚連動照準」

あや:「お先に。デビルレイビーム!。おお、しぶといな。まだ加速してるわ。」

ふみ:「まだ大気減衰があるのよ。よしもっと近くで。バーニア点火。ここ、マンタビーム!」

あや:「エンジンから部品が飛んだわ。これで落ちるでしょう。離れないと危ないかも」

ふみ:「そうしま、あっ、弾頭、きゃぁぁぁ」

あや:「ひいい、これは爆風、とにかく姿勢立て直し...」

ふみ:「ジャイロ調整、くっ動かない。軸受けが壊れたんだわ。しゃあない、バーニアで...」

あや:「ふう、重力を感じないからどうにか衛星軌道に出たようだわ。ふみ、生きてる?」

ふみ:「なんとか。ジャイロが壊れちゃって自転停めるのにバーニア使いすぎたわ。これではエンジンが無事だったとしても軌道上げるには燃料が厳しいかも」

あや:「イオンエンジンは使えそうかしら?。上昇中だったからもう大気圏外の筈だけど」

ふみ:「チョイ上から爆風に煽られたから下手をすると下がっているかも」

あや:「とにかく位置を確認ね。あちゃー、GPS壊れてるわ。放射線で高周波ICがorz」

ふみ:「げげっ。それじゃ私らも被曝って...今はまず落ちないことか。目視で位置見ないと。地球は翼の影か。向き変えるのに燃料使いたくないな。あやから見えない?。」

あや:「何とか視界の隅に見えるわ。で、太陽があっちか。うん、殆ど水平飛行よ。ふみの艇は見えないけどレーザー通信が聞こえるってことは近くにいるはずね」

ふみ:「水平ってことは長楕円軌道の昇りから見たら随分吹き下ろされたことになるわ。時間からしてまだかなり低軌道にいるわけだから、このままだと大気抵抗で落ちちゃうよ」

あや:「見えてる地球の大きさからしてもそうなるわね。とにかく加速して高度取らないと。大気が濃いとイオンエンジンがショートして正常に機能しないから化学燃料使うしかないわ」

ふみ:「元々足りないのに厳しいなぁ」

あや:「私の艇はまだましだから、いざとなれば艇を棄ててこっちに移ればいいわ。その場合でも航宙足のイオンエンジンが機能する高度に出ないと難しいわよ」

ふみ:「しかたない。とにかく軌道接線方向に出来るだけ加速しようか。行くわよ、方位修正。バーニア始動。よし、この向きなら良いわね。化学エンジン点火。おお何とか2基とも出たわ」

あや:「あ、ふみの艇が見えた。すぐ腹の下に居たのね。こっちも動くわ」

ふみ:「何とか高度が上がってきたようだけど、もう化学燃料がないわ。あと3分で切れちゃう。残りは姿勢制御にとっておいてダメ元でイオンエンジン使ってみるわ。グリッド通電、どうだ。うう、電流計が振れてる割に少ししか加速しない。これは放電でショートしてるのね」

あや:「貴女の艇の噴射口見えてるけど、もろ放電中。推力は殆ど蒸気圧の分だけね」

ふみ:「グリッドの温度警報は出てないからとにかく推進剤があるだけ続けてみるわ」

あや:「了解。断続的に化学エンジン使ってゆっくり憑いていくわ」

ふみ:「殆ど生ガス推進だからすごいペースで推進剤が減っているわ。何とか上がって」

あや:「いくらか放電光が暗くなってきたようよ。大気が無くなってきたんじゃない」

ふみ:「ええ、電流が減ってるから多少イオン推進になってきたのかも。でも、これじゃ電極がぼろぼろになっただろうから、もう推力は上がらないかな」

あや:「行けるところまで行って移乗すればいいわ。もう航宙足も使えるでしょう」

ふみ:「こんな推進効率ではあと30分が限度かな。あとは頼らせて貰うわ」

あや:「こっちのイオンエンジンをテストしてみるわね。どれ、よかった、推力出るわ。適当なところで移乗してきて良いわよ。この大気濃度なら航宙足も使えるわ」

ふみ:「ありがと。もうこの艇はダメだわ。腹のハッチから出てそっちに行くわね。生命維持装置2次に切り替え、循環確認、航宙足電圧確認、艇内減圧開始...。よし、ハッチ開放。あ、見えた、よかった近くて」

あや:「こちらもハッチ開けるわね。はいどうぞ」

ふみ:「航宙足始動。よかった、足は普通に機能するわ。よしラインに乗った。270度開脚、逆噴射、はーいお邪魔しまーす」

あや:「よく頑張ったわね。でもこの艇もGPSは死んでるし、この先も大変よ」

ふみ:「とりあえず機関が生きてれば航法は天測で何とかなるわよ」

あや:「そうね。気長に行きましょうか」


(静止軌道第七工場衛星 軌道警備本部)

リエ:「2人とも良くやったわ。生還できたのが何よりよ」

ふみ:「12号艇を放棄する羽目になり大変申し訳ありません」

リエ:「爆風が効く高度で弾頭を自爆させるなんて陰険な事されたら私が乗っていても同じよ。おそらく2人とも放射線障害が出るだろうから、すぐ本国に降りて全面解体検査を受けなさい」

あや:「あの、そのまま早期再改造申請をしても良いでしょうか?」

リエ:「地球軌道任務はもうこりごりって訳ね。無理もないわ。今までご苦労さまでした。でも再改造申請が通るかどうかは検査結果次第だからね。ふみも希望するの?」

ふみ:「申し訳ありませんがそうさせていただきます」

リエ:「いいのよ。今日みたいな任務を一生に2度もやれなんて、誰にも言えないわ。この体のおかげで放射線障害は負わなかったけど、私も昔の恐怖が忘れられないもの。まして私みたいな特殊な趣味の外装を真似できる娘なんて、そうそう居るわけもないし。でも、今の若い娘は良いわね。太陽系脱出のチャンスだってあるのだから」

あや、ふみ:「今までご指導ありがとうございました。失礼します」


(旧離宮跡 世界文化研修センター)

文部省世界文化調査官・小宅:「はじめまして。世界文化調査官の小宅でございます。恒星間航行艦搭乗員候補の皆様の研修をお手伝いする機会を得、光栄の至りでございます。ご承知と思いますが、皆様の飛行目的は単なる探検でなく、地球の避難所建設にあります。そのため、当センターにおいて世界各地の文化風俗習慣につき一通り研修されるわけです。ここは、私ども文部省の調査官が長年に渡り実地に収集した世界文化の生きた保管庫です。大東亜の2チャン祭りから南米未来検索国のサンバカーニバルまで全て取りそろえました。但し、帝國社会にとって有害な宗教行事等については慎重に選別編集を加えてございます。したがって、皆様は安心して研修に励み箱船任務の糧としていただきますよう切望します。どうか、異星系に渡る機会のない私どもに成り代わって地球の未来を繋いで下さいませ。なお、甚だ僭越ではございますが、皆様の研修成果を記録するよう命じられております。乗組員の最終選考においてデータが参照される可能性があるとのこと、ご承知願います」

さくら:「今さら地上研修なんてと思っていたけど以外と楽しそうなところね。ただ、採点されていて選考に関わるというのが、嫌らしいけど。せっかく募集時期に間に合うよう再改造受けたのに、こんな遊びで落ちたら悲惨だわ」

みさき:「えと、今日の研修メニューは”大東亜のお立ち台ギャル”だったわね。踊りなんて素体訓練のクラシックバレエしか知らないから動きはよくわからなそうだわ。だけど、使う衣装や小道具は結構趣味だなぁ。チューブトップに羽根扇子なんて良いわ。まあ、採点基準なんてよく解らないし、ここは素直に楽しんでおいた方が得な希ガス」

さくら:「初期のはまあ良いけど、末期のLバックとかUバックとかはワケワカランね」

みさき:「でも、ここは熱帯だし末期のの方が涼しげよ。私らに暑さ寒さは無いけどね」

さくら:「とにかく順に着替えてみるか。どお、似合っているかな?」

みさき:「いけてるわよ。まあ、私らはみんな、体型が基本的に優良だしね」

地底アイスワールド

まりな:「どうです、私のスピンは?」

マオ:「私の若い頃のような勢いは無いわね。でも、今は敵わないわ」

ミキ:「これならフィギュアスケート文化を宇宙に広められるわね」

まりな:「そう言っていただけると。けど私が抜けたらここのショウも寂しくなる希ガス」

マオ:「ちょっと褒めるとこれだ。貴女は体が固いのよね。そこはまだまだ」

まりな:「え、それは技量じゃなくてボディ形式の差ですよ」

ミキ:「ホントにそうかな。股関節の自由度はそっちが上だからやり方次第よ。こういう風にしっかり膝を伸ばして足を真後ろに...あっ、いたたた、神経痛が」

マオ:「大丈夫?。ミキの神経痛このごろ酷いわね」

まりな:「あーあ、やっぱり有脊髄型は歳を取ると神経痛が出るのが欠点ですね」

ミキ:「今さらしょうがないがや。昔は、発展途上技術で再改造適用が厳しかったがね。特別に優れた操舵員か、脊髄障害者が優先されて、私らは後回しにされたんよ。で、普及した頃には高齢で耐G性能が出ないから無駄だと、申請却下だがや」

まりな:「資産家のマオさんやミキさんなら、お金の力でどうにか出来たのでは?」

マオ:「当時は人工小脳の生産が少なくて、再改造できる数が限られていたのよ。それで、完全な任務対応配給制で私費改造なんか一切認められていなかったのよ。今の若い娘は恵まれているんだから私らの分まで頑張ってね」

まりな:「ホントに私が居なくなっても大丈夫ですか?」

ミキ:「ここのショウの娘の補充なら何とかなるわよ。まあ地球が滅びなければだが。先日も六芒星がバカな真似してくれたし、次は何が起こるかなんて誰も判らないわ。貴女は早々に候補入りして文化伝達要員としての特殊性も認められてるでしょ。この機会を逃せば、たとえ次の恒星間航行があっても年齢的にダメだと思うわよ」

マオ:「そうよ。チャンスは1度きりなのよ」

まりな:「ありがとうございます。では心おきなく行かせて貰います」


(宙軍地上基地 メンテナンスセンター)

整備兵:「部品センタの報告によるとお二人とも造血ユニットの被曝がかなり酷いです。外したユニットは骨髄細胞の3割ほどに異常があるというので再生に10年かかります。今後の任務に制限を来たしそうなので遺伝子組み替え豚の公費生産が決定されました。2年後には豚から予備骨髄が採れますので恒星間飛行への志願に支障は出ないでしょう。むしろ、ついでに予備消化管が採れますから交換パーツの面では有利になりますね。次に、脳脊髄ユニットの分解検査結果ですが、重大な損傷は見つかりませんでした。ただ、画像の分解能以下の微細損傷はすぐに判らないので経過観察が指示されています。差し当たり、身体制御CPUの動作ログを診るとのことで連続送信が義務づけられます。宛先は、宙軍研究所脳脊髄研究部の桃子侯 momoko@oh-no.lab.spaceforce.go.empです。すぐに、身体制御CPUにログ自動送信の設定を行って下さい」

あや:「これって、何時までやらなくちゃいけないの?。まさか一生?」

整備兵:「期限の明示はないですが、問題が出なければたいてい3ヶ月ほどですよ。機械的衝撃もですが、トラウマによる異常行動が出ないか気にしているのでしょう」

ふみ:「トラウマねえ。まあ、あんな怖い目に遭うのはもうご免だけど。でも、リエ老なんか昔の戦争で似たような目にあったけど問題出ていないのでしょう。同世代がみんな退役したのにまだ司令が務まっているくらいだし杞憂では?」

整備兵:「あの方は特別ですよ。記録によれば当時の部下は放射線障害になっています。ダイヤ膜張りの外皮で皮下の空所を水銀で埋めるなんて特殊な体は他にいないでしょ。おそらく、耐放射性能だけなら厚手の金属外骨格と大差ないと思いますよ。それにその時の核被害は真空下でしたから爆風による衝撃は受けていないはずですよ。外惑星任務に就かなかったため日常はGに晒されていないし恵まれた条件なんです」

あや:「爆風1回くらいでそんなに違うものなのかしらねえ」

ふみ:「核パルス推進艦なんかその爆風そのものに乗って進むわけだし」

整備兵:「爆風受けに乗るわけではないでしょ。ショックアブソーバがありますよ。それに推進用原爆は臨界量ぎりぎりの小型原爆だからICBMとは桁違いです。乗員だって再改造で脆弱な脳を縮小していると耐G性能もかなり違うんですよ。それでも冥王星航路の乗員を長くやった人は、平均寿命が短いと言われているんです。恒星間航行艦の場合は長期間加速を続けるし、寿命をなるべく延ばす必要もあります。そこで、核融合式にして1発の威力を小さくしてパルス数で稼ぐようになるそうです。攻撃用核弾頭の爆風を不用意に受けたダメージはその何億パルスにも匹敵しますよ」

あや:「そお。もし脳が傷物になっていたら、どうにもならないんだ」

ふみ:「再改造がダメかどうかは運次第か」

整備兵:「切れた脳神経は殆ど回復しませんが、血管や硬膜の小損傷は別です。せめて休暇中は頭をぶつけないように気を付けて暮らした方がいいですよ。でわ。お大事に」

あや:「安静だなんて早い人は候補に選ばれて研修とかやっているのに焦るなあ」

ふみ:「経過観察とかで出遅れて機会を逃したらまた軌道警備に戻されるかも。恒星間航行って初回の成否を見極めるから次のチャンスはもう無いだろうね」

あや:「ダメだったら火星大工場か金星のプラットフォーム建設でも志望するかな」

ふみ:「でも、火星は核パルス艦からローテーションの再改造者が多いわよねぇ。金星は一部職種が一般シビリアン労働者に開放されてきたからポストが減っているわ。アルバイトならともかく、再改造がダメだと正規任務で行くのは厳しいわね」


(世界文化研修センター)

さくら:「来週の科目は選択だけど、みさきはどうするの?」

みさき:「そおねえ、恒星間に出たら氷を見る機会も無いだろうしスケートは良いわね」

さくら:「良い思い出にはなりそうだけど、国の重点科目だからレベルは高そうよ。建国200年祭イベント出演者選考を兼ねてアイスワールド出張でプロの指導受ける、か。
下手すると、レベルに憑いていけず大きな失点に繋がるかも知れないわ」

みさき:「なるほど、競争相手が多い選択はリスクも大きいわね。迷うなあ。メジャーな科目で優位に立てれば理想的なんだけど。うーん。でも、やっぱりやってみるわ。どうせ選考基準なんてよく判らないんだから。迷ったときは、損得考えるより興味優先よ」

さくら:「そうねえ。わざわざ全参加者にスケート用の足を用意してくれるのも魅力ね。専用足なんてプロかよほどのマニアでなければ、なかなか持てるものではないものね」

みさき:「そうそう、専用足はノウハウがないと発注すら難しいもの」

さくら:「なら、選択は決まりね」


(地底アイスワールド)

まりな:「アイスワールドへようこそ。私が200年祭デモンストレーターのまりなです。皆様ご承知の通り、フィギュアスケートは帝國文化の要とされる優先伝承科目です。そこで、恒星間航行発進の前夜祭たる建国200年祭で大がかりなイベントが催されます。私どもプロだけでは数が足りないため文化研修参加者に協力を仰ぐことになりました。また異星系探査の結果、寒冷な可住惑星に行き当たった場合は日常生活技術にもなります。念のため申し上げますが、私も恒星間航行要員候補の1人ですが評価は文部省が行います。したがって、選考に関してお手盛り評価で優位に立つことはありません。また、200年祭配役への参加依頼決定と恒星間航行要員選考は独立に行われます。恒星間航行に漏れた方に200年祭では協力願う、あるいはその逆もあると御承知下さい」

さくら:「公正と言いつつ、あの娘もう耐環境ボディを使っているわね」

みさき:「試作機を供与されている時点で特別な立場よね。でも負けられないわ」

まりな:「それでは、10分ほどウォームアップを行って下さい」

さくら:「フィギュアでの競争と言えばウォームアップでの駆け引きも重要だわ。目の上のたんこぶになりそうな娘に目を付けて転ばせるくらいの気で行かなくちゃ」

みさき:「それは、ソロ競技前のウォームアップの話でしょ。祭りのデモは違うんじゃ?。もちつけ、もちつけ。あんまりかっかすると怪我するわよ」

さくら:「そうだったわ。新品の足だからまず具合を掴まなくちゃ。そーれ」

みさき:「ふんふん、最初はあんな感じか。どれ私も。ん?。足首微妙に引っかかるな。急な大量注文でジョイントパーツにバリでも残っているのを掴まされたかな。ちっ。文句言って手直しも時間取られるな。10分で当たりがついてくれればいいけど」

マオ:「ふーん、さすがにやる気満々のが集まったわね。良いじゃない」

ミキ:「ただ、競争を意識しすぎで危なげな娘が多いかも。まりなが睨まれてるわ」

マオ:「芸術監督としてはそれじゃまずいわね。一息入れさせる?」

ミキ:「とりあえずウォームアップ後に全員足を点検させた方が良いわ」

マオ:「わかったわ。体内通信でまりなに指示しましょう。まりな...」

ミキ:「次からは、足だけでなくボディを全員分用意できた方がやり易いかも。変なやっかみが生じないし、足の交換より首のすげ替えの方が早くできるでしょ。不具合があったときは休憩中に胴体ごと整備室へ持って行かせた方が安全だわ」

マオ:「なるほど。そろそろ量産品も出て来る頃だし、理美に頼んでみるか」


(宙軍研究所 脳脊髄医学研究部脳修復研究課)

桃子:「お休みのところよく来てくれました。ここで脳修復技術を担当している桃子です。用件は言うまでもなく核の爆風で受けた急峻なG負荷によるあなた方の脳の問題です。まずは、とんだ災難でしたね。二人とも再改造と恒星間飛行要員を志望しているのですよね。送信していただいている経過観察データは今も分析を続けていまして、まずは中間報告です。今のところトラウマによる一時的行動の麻痺といった異常反応は見つかっていません。ただ、一部の動作において神経パルスに極短時間ですが息つき波形が見られます。これは、当該神経系統の細胞体が部分的に損傷し周囲の神経細胞が補完の負荷を負うためです。直ちに障害が出るわけではないが、長期的耐G性能の観点からは好ましくありません」

あや:「それはつまり、再改造適用除外になるということですか?」

ふみ:「そんなぁ。殺生な」

桃子:「従来の原則からはそうなるのですが、一つ提案があります」

あや:「何とかなるのなら何とかして下さい」

桃子:「リスクを伴う提案ですから、良く聞いてから決断して下さい。私が担当している研究というのは、脳修復によるサイボーグの長寿命化なのです。恒星間航行の到達圏が乗員の寿命で制限されることから利点は明らかでしょう。これに用いる脳修復の方法とは、ES細胞注入による神経細胞再生になります。ただ、注入されたES細胞がどんな神経回路を産むかはコントロールできません。有用な神経回路が生成されなければ寿命延長効果はなく弊害が出るかも知れません。それで、これまでは、法的に死体とされる公家廟の亡霊を対象に実験してきました。その結果、生理的欲求の回復といった一定の効果はあったのですがなにぶん亡霊です。計画的に保存したわけでもないES細胞は超高齢者のものですから活性が低いのです。そのため、強い自己組織化傾向があった基礎的欲求を司る神経回路しか回復しません。真に脳修復の効果を確認するためには脳損傷がある若い娘で実験する必要があります。あなた方の状態は損傷箇所を周囲で補完する神経群に良い誘導作用を期待できます」

ふみ:「それで、人体実験に志願してみないかと言うわけですか」

桃子:「ぶっちゃけそう言うことになります。ただ、リスクが大きいんですよ。修復効率を高めるには、生体部分が少ない人工小脳型の方が有利なはずです。それで、もし実験を受けるならまず人工小脳型に再改造してからとなります。適用認可は、実験に必要と言うことで特別に取得できると思います。問題は、修復作用が小脳除去跡の断面にも働く恐れがあることです。断面に不要な神経回路が形成されて、人工小脳にノイズを与えるかも知れません。ソフトウェアによる調整が追いつかなければ、身体制御障害に陥る可能性があります。修復が成功すれば恒星間飛行も可能でしょう。その代わり、失敗したら障害者です」

あや:「私は治る可能性に賭けてみるわ」

ふみ:「そうよ。核ミサイルが飛んでこないところに逃げたいわ」

桃子:「実験が成功すれば、艦内で寿命延長実験を続けるという私の案も通ります。つまり、私が恒星間航行艦に乗れるかどうかもあなた方と一蓮托生というわけです。とゆうことで、宜しくお願いします」

あや、ふみ:「桃子侯、こちらこそ宜しく」

桃子:「でわ、再改造手術の予約がとれたら連絡を差し上げます」


(最も時間のかかる乗員の予備研修や選考に取りかかりました。艦の建造はブロック工法なので後日開始し、お祭りの間に出来てしまう予定です。まあ、サイボーグ娘スレなので艦より人が主役ですから。次回予告−−(5)皇紀200年祭−−)


風俗 デリヘル SMクラブ