−−(14)妨害作戦−−
(会議室)
マサ:「真理亜さまー、みんな集まりましたよぉ...げっ、で、殿下、副長様まで。叱られるような事したっけ?」
朝子10世:「違うわよ。あなた達の腕を見込んで特別な任務をお願いしたいの。奈々侯、説明してあげて」
奈々:「北米連が有人火星探査に踏み切ることは知っているわね?」
真理亜:「私は承知していますが、この者達はなんとも」
マサ:「ついに来るんですか、じゃ、帰り道に重機でミサイル持っていってドカーンと?。やったあ、ついにやるんですね!」
奈々:「そんな事して良いのなら、8人も要らないわ。秘密保持のため私一人でやりますよ」
リエ:「バカねえ。戦争起こすわけにいかないでしょ」
奈々:「くず隕石捨てずにとってあるでしょ。あれをぶつけて事故に見せかけるのよ。出来る限り、生存者を残して事故状況を報告させるように言われていてね。そのためには、衝突コースに乗せてから推進機を撤去して持ち帰る必要があるの」
真理亜:「重機が発見されない距離で推進機を外すと必中という訳にはいかないですね」
奈々:「それで、確率を上げるために8個の隕石を使うのよ。もちろんステルス盾を使ってなるべく近くで放すようにするけど、生存者が出るかどうかは運任せね。標的の全長が1000m近いようなので、外したり乗員が全滅する確率は5%程度だわ」
真理亜:「外したときはどうしますか?」
奈々:「宇宙遊泳で6人が侵入して乗員の口を封じて貰うしかないわね。一応、そのためにアイビーム眼球の貸与許可が出ています」
真理亜:「あれは大して威力がないでしょう?」
奈々:「一つは扉をプラスチック爆弾で壊して侵入するときの点火用ね。あと侵入するとき船内が真空になるから、宇宙服をピンホールさせるのに使えば良いと思うの」
真理亜:「向こうにサイボーグが居たらまずいですね」
奈々:「乗員は全部男性と発表されているから、まず居ないでしょうけど。もし、奴らが男性のサイボーグ化に成功していたら厳しいことになるわね。その時は、あなた達のサイボーグ歴の長さだけが頼りね」
真理亜:「後の2人の役目は?」
奈々:「一人は重機の半数をシンクロ操縦して隕石のエンジンを持ち帰って。もう一人は接近に使う重機4機をランデブーさせて待機するのよ」
真理亜:「それは新米2人にさせるしかないですね。とにかく隕石を当てるしかないか」
マサ:「私がきっと当てますよ。真理亜様を危ない目に遭わせられません」
朝子10世:「しっかりね。それからこの件は他の乗組員たちにはまだ秘密です。10日後にトロヤを離れるので、それまで収集名目で出て訓練しておくのよ。以上」
(艦内武器保管庫)
マサ:「アイビーム眼球って実物初めてだなあ。VRではお馴染みだけど。やっぱ、目からビーム砲撃てるとちゃんとサイボーグになった気がする罠」
マオ:「そおですねぇ。折角サイボーグになったんだから一度は装備したいですよ」
ミキ:「早く撃ってみたいですわぁ」
真理亜:「はしゃいだって所詮貸与なんだからね。作戦済んだら返すのよ。大体、1ワットで1/100秒ったら殆ど破壊力なんて無いんだから。拡散のない真空中でも同じところに3サイクル当てて宇宙服にピンホールがせいぜいなのよ。一応命令だから試射はさせるけど、本番で使おうなんて思っちゃダメよ」
リエ:「マサだって判ってますって。現場に出ると一番現実主義者になるんだから」
タラ:「まあ、興奮するのも無理ないわね。私だって初めてなんだから。でも慎重にね」
真理亜:「マオとミキはVRでやったことあるの?」
マオ:「まさかこんなに早く使えると思っていなくて」
真理亜:「そお。目玉入れ替えるとBCIのコンパネが開いて安全ロック解除キーワードと発射キーワードの設定が促されるからね。うっかり言いそうもなくてすぐ言えるキーワードを入れるのよ。戻り光防止機構があるから目が焼けることはないけど、まぶたに穴開けた例もあるからあんまり安易なキーはダメよ」
ミキ:「まぶたと連動しないんですか?」
真理亜:「捕虜になったときなどに、寝たふりでだまし討ち出来るようわざと非連動にしてあるの。照準は当然視線そのもので、発射中は視野中心が見えないから左右0.1秒の時間差がつくようになってるわ。一斉射の3サイクルが撃ち終わると充電に30秒かかるから連射は不可能というのも忘れちゃダメよ」
(隕石採集空域)
真理亜:「隕石移動エンジンの設置や操作はみんな慣れてるでしょ。ただ、艦に搬入だといつも最後は減速して引っ張って貰ってるから、まずはぶつける練習ね。タラ、標的用の大きな隕石選んで30m幅で白線引いて。それを敵の船体幅に見立てるから。あとの娘は例のくず隕石を固めたやつと似た大きさの隕石拾ってスタート地点に移動して」
マサ:「アイビームの試射はやらないんですか」
真理亜:「ぶつけ終わったときに散らばった破片を標的にするから後でね」
(30分後、200Km離れたスタート地点)
真理亜:「本番では横並びで一斉に放すけど、今日は各自で自分の癖を把握するため5分間隔で行くわよ。タラ、標的から離れてる?。ん、5`ほど手前で着弾観測頼むね。じゃ、みんなは最初の100Kmで加速しながら狙い付けて、すばやくエンジン持ち去るのよ。よし、マオからスタート!」
マオ:「はい、エンジン起動します。...軸合ったと思います。...微調整...エンジン止めました。引き抜きます。離脱しました。あ、少し蹴っちゃったかな」
タラ:「どれ、お、すごい勢いで飛んできた。ん、標的隕石には突っ込んだけど線からは外れたな」
ミキ:「...離れました」
タラ:「ん、ん、...惜しい。線から50mかな」
マサ:「真理亜様に侵入作戦なんて絶対させるか...よし、そこだ。そーっと抜いて忍び足...」
タラ:「直撃!。本番も頼むよ」
(標的隕石付近)
真理亜:「7個中2個直撃か、まあまあかな。恐らく射軸は全員当たりね。距離があるから離脱時のわずかな衝撃で狂うのよ。落ち着いてそっと離れるのがポイントね。じゃ、お待ちかねのアイビーム試射行きましょうか。どおせ、遊び半分なんだから標的にする破片は勝手に選んで。安全ロック解除して、せーの」
タラ:「タラ・フラッシュ!」
リエ:「原子力ビーム!」
マサ:「ラブラブ光線!」
リホ:「マジカル・パワー!」
エリ:「ビーム・ボンバー!」
マオ:「氏ね氏ねビーム!」
ミキ:「逝け逝けビーム!」
真理亜:「デルタ・ゼロビーム!...どいつもこいつも。ま、いっか、不発は無いようね」
(10日目、艦内)
朝子10世:「倉庫や格納庫の加速圧対策は済んだわね?。よし、発進よ」
操舵員:「旋回始めます。...方位よし。メインエンジン始動」
朝子10世:「放送用意して」
運用科員:「どうぞ」
朝子10世:「艦長です。未探検空域の探査ご苦労様でした。これで家路に、と言いたいところですが、本国からの特殊任務命令により火星付近に寄り道します。追加任務の内容はまだ言えませんが、非常に重要なものです。首尾良く済ませれば、相応の報酬があるはずですので、がんばって下さい。以上です」
リエ:「いよいよ向かうわねえ」
リホ:「成功すれば人殺しか...」
エリ:「これでも軍隊だからねえ。滅多にないだけに何で私らがって気はするが」
マオ:「事故ですよ事故。なるべく生存者出せって言うんだし」
リホ:「生存者ってその後漂流して苦しんで死ぬんでしょ。結局殺すことになるのよ」
マサ:「エンジンか燃料タンクに当てて全員生存させりゃいいんじゃない。それなら、空気が無くなる前に奴ら同士で殺し合うから恨みは他に向くって」
ミキ:「必ず殺し合うのでしょうか?」
マサ:「200年くらい昔の沈没潜水艦を引き上げた調査で、欧米人は必ず争った跡があったって」
ミキ:「なるほど。それならすぱっと片づけて早く帰りましょう。純金ボディーが待ってるし」
タラ:「まだ秘密よ。他の人が居るところでうっかり言わないこと!」
(6ヶ月後、艦橋)
朝子10世:「通信士、北米連らしい通信拾ってる?」
通信士:「地球からの方ははっきり。宇宙船らしいのは微弱で内容不明ですね。方位は発表コースと一致してます。レーダー使っちゃダメですから、精度はイマイチですが」
朝子10世:「奈々侯、艦体上部に出て大型望遠鏡設置して。念のため目視で確認したいから」
奈々:「手が要りますけど。もう、おおっぴらにやって良いですか?」
朝子10世:「そろそろ、全員に知らせた方が良いかな。放送用意して」
艦内放送:「艦長です。特別任務について周知します。この任務の目的は、北米連の有人火星探査を妨害することです。火星には、地下秘密基地や隕石落下による水源確保実験であるアイスインパクトという有人宇宙活動の痕跡があるのでこれを発見させる訳にはいきません。飛行中の北米連船を破壊する必要がありますが、我々の仕業であることが知られてはなりません。そこで、トロヤ探査中に集めたクズ隕石を持って忍び寄り、これを衝突させる方法を採ります。作戦実行には採鉱小隊が当たりますが、大型望遠鏡による標的確認など艦上支援作業があります。全員協力して進めて下さい。なお、本件は地球帰還後に一切口外してはなりません」
(格納庫)
真理亜:「隊内無線は一切使わないのよ。移動中は進路をシンクロさせてレーザーでね。今すぐ切り替えて...。よし。母艦との連絡はミキがレーザーリンクを維持して全員に回すこと。切れたときのバックアップはマオね。じゃ、出るよ」
マサ:「隕石移動エンジン始動!。そーっと角に掴まってと。ひひ、なんか今日は好調だぞ」
リホ:「あーあ、出来れば致命傷は他の人の石であって欲しいな。なんだか当てちゃいそうな希ガス」
ミキ:「レーザーリンク自動追尾異常なし。みなさんにデーター回ってますか?」
マオ:「リング網トポロジ繋がってるよ、ミキ。こっちの予備リンクも繋がってます」
(飛行中)
真理亜:「望遠鏡の映像、回されてきたようね。うーん、比べるものが無いが倍率と距離からすると全長950m、幅は広いところで50mかな。エンジンは止めてるようね。加速中だと狙いにくいからしばらくこのままだと良いな」
マサ:「画面で左上端がエンジンですよね。燃料タンクはどの辺りまでだと思いますか?」
真理亜:「少なくとも全長の半分まではタンクじゃないかな。幅に当てられるんならねらえる罠」
リエ:「あんまり余計なこと考えず幅に入れるよう集中した方が確実では?」
真理亜:「なるべく生存させろっちゅうから一応ね。その辺の加減は各自の考えでやって」
タラ:「接触まで2時間位ですね」
真理亜:「監視は母艦でやってくれるから、あんまり張りつめないで行きましょ」
(2時間後)
タラ:「あと210Kmですね。相変わらず加速はしていません」
真理亜:「予定通り、100Kmで放すわよ。ここからは軸合わせしっかり維持して」
マサ:「当たれ当たれ。燃料タンクにぐっさりとな。よし合ってる合ってる」
ミキ:「なんだかびびってきました」
リエ:「大丈夫よ。とにかく離れるときに蹴らないようにね」
真理亜:「みんな、コース良い?。よし、隕石エンジン止めて。そっと引き抜いて。蹴らないようにマニピュレターを少しだけ動かして離れるのよ。離れたらステルス盾構え直して左下に旋回ね。じゃ、離れて。10m空いたら加速!」
マサ:「当たれ当たれ」
タラ:「どこら辺で様子見ますか?」
真理亜:「外した時を考えて標的の後方100Kmに回り込んでおくのよ」
タラ:「そうですね。こっちのエンジンは殆ど光らないから全開で行きますか」
エリ:「そろそろ衝突予定時刻ですね」
ミキ:「母艦の大望遠鏡から映像来てます。あっ、直撃です」
真理亜:「隕石の破片が漂ってて見づらいわね。白いのは燃料漏れかな」
タラ:「無線聞こえますね。パニックに陥ってるけど生きてる奴は居るようですね。あんまり壊れ方が酷くなくて火星まで行かれても困りますが、どうですかね」
リエ:「燃料漏れが止められますか?。我々のように自由自在な船外作業は出来ないのでしょ?」
真理亜:「その分タンクの漏洩対策が強化されてる鴨。それにくず隕石って泥玉みたいなものだからタンク全部は壊れてないでしょ。奴らは外に出るとしても時間かかるから、これで成功かどうか判るのは24時間以上先ね」
ミキ:「母艦からです。あちらで観察を続けるから取りあえず帰れといってます」
真理亜:「了解。みんな引き上げるわよ。一応見つからないようにステルス盾しっかり構えて下がるのよ」
(”みくら”艦橋)
朝子10世:「取りあえず燃料タンクを破ったようね。通信の方はどうかしら?」
通信士:「地上から計器類のチェックを指示しています。乗員に負傷者が居るようですが生死はまだ。外側の被害状況も判ってないようです。原因の話は出てませんね」
朝子10世:「望遠鏡で衝突による向こうの進路変化は判るかな?」
奈々:「まだ正確にはつかめませんが、元の軌道と大差ないようです。減速が全く出来なければ火星からかなり遠いところしか通らないのですが、まだエンジン使えるとまずいですね」
朝子10世:「状況が確認できるまで、距離を保ったまま光学監視と通信傍受を続けます」
通信士:「北米連の地上からの指示が解読できました。燃料は半分以上が流出したらしく、正確な残量を調べろとか言ってます。帰還の心配をしているようなので火星周回とか接近は諦めてくれそうですね」
朝子10世:「逆に火星に降りて救援を待とうとされたらまずいわね。酸素や食料は十分だろうし」
(24時間後)
通信士:「本国から情報です。北米連は、スレイブ共和国連邦に救援機材の打ち上げ協力を要請したそうです。本国は、スレイブが上げられる機材を使うなら惑星間空間での救援だと判断しています。あ、また入りました。配管が壊れてエンジンが使えないので火星接近は諦めると決まったそうです。死者は出ておらず、船外作業で配管修復をやるようですが、準備に時間がかかり予定していた軌道修正に間に合わないとのことです」
朝子10世:「どうやら荒事にならないで済みそうね。事故原因についてあちらの通信は何か言ってない?」
通信士:「原因の話はまだ。それよりも陛下から圧縮パケットが2個来てます、受領願います」
朝子10世:「ん、”任務成功と認む。帰還せよ。2個目は明朝10時に解凍せよ”か。ややこしい指示だけど、帰っていいようね。操舵士!軌道変更よ。全員、加速圧注意!」
操舵士:「帰還進路取ります」
(妨害作戦はとりあえず成功しました)

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