−−(26)青の公家−−

(青の公家邸 庭園)

マサ:「引っ越しなんか手伝って貰って済みません」

真理亜:「借り上げ官舎に居たんじゃ公家の体面が保てないんだから気にする必要はないわ。殆ど小間使い貸しただけだもの。藻前の性格じゃ専属の小間使いを管理するのも難しいしね。今後も家の雑用には私の小間使いを使って良いわ。それより、何なのよこの新規叙爵者研修の成績は!座学が苦手なのは解っちゃいたけど、合格最低ラインどんぴしゃって槍杉よ」

マサ:「そう仰いましても、いきなり体内CPU使用禁止ですよ。生体脳で暗記物はきついですよ。まあ、内容が内容ですから、バックアップサーバーに痕跡が残るのすらまずいのは解ります。帝国史の暗部なんて、((((;゚Д゚)))ですし。でも、歴史の試験なんて中学卒業以来ですから」

真理亜:「まあいいわ。藻前と一緒じゃこの先一生恥のかき通しになるのは覚悟の上だし。ところで、明日勅許がおりたら、赴任準備にかからないとね」

マサ:「準備ったって、いつもの出動とそう違わないんじゃないですか?」

真理亜:「あ、そうか藻前はまだ公式発令されてないから在外公館勤務心得を持ってないのね。体の再改造やら、衣装の準備やらで結構忙しくなるわよ」

マサ:「宇宙に出るときだって体の整備はやりますよね」

真理亜:「宇宙なら、最低限必要な機器交換が腹から下ばかりだから急げば1時間でしょ。大使館勤務の時は生命維持装置の前に組み込む部品があったりで外皮の貼り替え部分が多くなるの。ほら、この専用カタログ の第3部は必須だから。」
マサ:「はあ、これですか。えっ、じ、自爆装置ぃ!((((;゚Д゚)))」

真理亜:「そんなに青ざめることはないわよ。大使館勤務のサイボーグはみんな搭載するのよ。でも、今まで実際に自爆した娘は一人も居ないし、誤爆事故だって一度もないから安心なさい。そこに書いてある通り、48時間孤立無援か上官の承認がないと起爆は出来ないのよ。もちろん他人が強制的に起爆する事は不可能だから、嫌なら使わなくてもいいの。孤立無援で脳死したときだけは、自動的に起爆するようになっているからね」

マサ:「なんで大使館勤務でそんな物騒な部品憑けなくちゃいけないんですか」

真理亜:「外国の工作員に拉致されて分解調査されそうになったときの用心よ。重要機密である生命維持装置を分解されるようなら脳死も確定だから自動起爆だけでも用は足りるわ。ただ、どうせ殺されるなら少しでも敵に被害を与えるタイミングが選べた方が尊厳が守られるでしょ。貴族の誇りを守るために自分で起爆出来る途も残してあるのよ。初心者は無理しなくて良いわよ。なにより、私からはぐれないようにしていることね。一緒にいる限り起爆条件が成立しないから」

マサ:「N共和国では北米連の工作員が何か企んでいるって言うんでしょ」

真理亜:「念のため、カタログ第2部の武装も全部組み込んだ方が良いわね。藻前は、陛下から良いアイビーム貰ってあるから、ロケットパンチだけ憑ければ済むわね」

マサ:「ロケットパンチですか。これが憑くとかなり戦闘サイボーグらしくなりますね。だけど次発が1回だけで射程が巻き上げワイヤで制限されるってのはいまいちだなあ。生身の相手には有効だけど、余程熟練しておかないと実戦で使いこなすのは難しそうですよ。マンガみたいに飛んで帰ってくるようにするのは無理なのかしら。機銃はないんですか」

真理亜:「部品表上の設定では機銃も有るんだけど、内蔵だと弾倉が大きくできないのよ。実用的な弾倉となると差込式の外付けになっちゃうし排気や放熱も難しい問題でしょ。表皮が継ぎ目だらけになるから、内蔵の主目的である隠し武器としては意味無いもんねえ。それで、受注生産になっていて、余程変わり者の貴族しか使わないのよ。機銃まで必要な状況なら、大使館に備え付けの通常武器を使えばいいってことね」

マサ:「大使館が敵に囲まれたりとかですか。2人じゃどうにもなりませんね。くわばらくわばら」

真理亜:「他の大使館員は地軍武官1人以外は文官なんだから、非常時に盾になる覚悟はしなさい。でも、物騒な話ばかりじゃなくて、楽しみもあるわよ。公式なパーティに出る機会は多いわ。公式パーティとなると藻前の持っているコギャル服やゴスロリじゃ失礼だからドレスを揃えないとね。燃料電池の換気に支障がないパーティドレスはオーダーメイドしか無いから引っ越しを急がせたのよ。宙軍省借り上げ官舎のクローゼットじゃ良い服を沢山おけるようにはなってないからね」

マサ:「仕立てですか。シルクでしょ。デブリ回収や臨時の手術で金はたまってるけど足りるかな」

真理亜:「心配無用よ。衣装代にかかる分として外務省から相当額の支度金が出るのよ。それから、我々は表向き特区大使の息女姉妹になるから、生活費は大使の扶養手当で賄われるわ」

マサ:「へええ、それじゃ事件さえなければ給料丸儲けですね」

真理亜:「但し、現地で売春なんか絶対駄目よ。どうしても我慢できないときは館員相手にね。N共和国の人間で我々が公使級の駐在武官だと知っているのは大統領の親子3代だけなんだから。大使館の外では正体がばれないよう言動に注意するのよ」

マサ:「通常なら宇宙に出る時期ですからね。真理亜様の愛が有れば十分です」

真理亜:「それから、表向き18歳と16歳ということなので学校に行くことになるわ。我々は太股の燃料電池換気が必要だから、日常ミニスカ生足でいられる身分じゃないと困るでしょ。外では飲酒も出来ないことになるから、燃料切れにならないよう在館中はまめに補給するのよ。我々のために外交機密費で高級ブランデーが沢山買ってあって館内では飲み放題だからね」

マサ:「ほ、本物の女子高生になれるんですか。中卒で徴兵されたから一度やりたかったんです」

真理亜:「喜ぶのは早いわ。入学先は北米系の国際学校なのよ。北米連工作員の拠点かもね」

マサ:「ひょっとしたら敵のまっただ中で油断は出来なくても、女子高生はやっぱり嬉しいですね」

真理亜:「もし予想通りなら敵に感づかれると危ないから、体育で本気なんか出さないでよ。数学や理科が出来過ぎるのは我が国の教育水準が高いからで済むけど、体力では目立たないこと」

マサ:「それじゃ、部活は文化部以外ダメですね。舞踊系とか、弓道、射撃の類なら良いかしら」

真理亜:「問題は、入らない方がいいクラブに敵の組織が根を張っていた場合の潜入調査ね」

マサ:「でも、工作員が紛れ込むなら生徒じゃなくて教職員でしょう」

真理亜:「一番ありげなのは、政治色のある文化部で顧問に化けて現地生を反体制派に染める工作ね。難しいパターンは、男子の格闘技系クラブで革命戦士を育てていて潜入できない場合かな」

マサ:「そういうときは、女子高生らしく応援団に入って近づけばいいじゃないですか」

真理亜:「なるほど。そういう手口は藻前に任せるわよ」

マサ:「ところで新規叙爵者研修で教わったのですが、外交は弥生公の黒の公家が得意ですよね。なんで、航宙士が得意分野の我々が行くことになったんですか?」

真理亜:「今回は航宙士としてよりも戦闘サイボーグとしての能力を期待されてね。つまり荒事」

マサ:「要するに危ない仕事ってことですか。自爆第1号にはなりたくないなぁ」

真理亜:「情けないこと言ってんじゃないわよ。人柱2体目の材料捕獲を目指すんだからね。人柱の数が揃えば、カロンに恒久施設を置いて、大量の水を現地調達出来るようになるのよ。水の搭載量が片道分で済むようになれば、高速連絡船計画が本格的に始動できるわ。不経済なブースターに頼らず気楽に冥王星方面に行けるようになれば、航宙士の仕事も幅が拡がるのよ」

マサ:「また敵のスパイを捕まえて人柱にするんですか。非人の確保なら国内の刑法犯でも良いのに」

真理亜:「帝国内は生活水準が高いから強盗殺人とか滅多にないでしょう。猟奇殺人犯は男が多いし。それに刑法犯は直接の物的証拠が乏しくて暫定終身刑にしか出来ない例が多いのよ。そもそも強盗殺人犯なんてのは、能力や生きる意欲が足りなくて人柱に使えない香具師が殆どだしね。スパイは条件に適合しやすいし、捕虜の扱いに関する国際法も適用されないから人柱に最適なのよ。治外法権の大使館に不法侵入したところで現行犯逮捕なら、ただちに帝国法で極刑宣告できるでしょ」

マサ:「でも、皇帝陛下のいる場所じゃないと最高法廷を開けないですよね」

真理亜:「特定友好国のN共和国にある大使館の中なら国内と同等のネット環境があるわよ。つまり、リモートボディリンクで現地に居るサイボーグの体を陛下に貸せば出張法廷も出来る訳ね。検事や国選弁護人は大使館員に有資格者が3人居るからちゃんと間に合うようになってるわ」

マサ:「はは。もう捕まえたような気になって居るんですか?」

真理亜:「うふふ、そのあとのサディスティックな楽しみを想像したら、体が火照ってきたわ」

マサ:「機械化された体が火照るんですか?」

真理亜:「やっぱりそんな感じがするのよ。藻前だって売春の時はそうでしょうが。残忍性や淫乱さこそ私たちが人間である証なんだから、正常な現象なのよ」


(宙軍地上基地内 試射場)

マサ:「右腕ロック解除、ラブラブパーンチ!。ブレーキ70%。よし掴んだ。巻き上げ...」

真理亜:「何をやっているの?」

マサ:「ロケットパンチを使った敵捕獲の練習ですよ。逃げようとするところ首を掴むって想定で」

真理亜:「なるほど。適当に減速して当てないと首が折れて、生け捕りにならないわね。どれ、私もやってみようか。両腕ロック解除、ダブルパーンチ!。減速...ふむ、難しいな」

マサ:「両腕同時に弾道コントロールするのはきついですよ」

真理亜:「その代わり、発射の反動が対称に来るから軸ぶれは少ないのよ」

ハル:「あー、居た居た。へええ、ロケットパンチの実射って始めて見ましたよ」

真理亜:「ハル、今日宇宙に上がるの?」

ハル:「ええ、基地に来たらお二人が再改造後のテストで射場使っているのが判ったので挨拶に。マツ、ミツ、ササにも教えたので来ると思いますよ。ほら、来た」

ササ:「こんにちわ。いいなあ、内蔵武器。やっぱり、サイボーグはこうでなくちゃ」

真理亜:「隠し武器による奇襲効果はともかく、威力は大したこと無いけどね」

ミツ:「目からビームと手が飛ぶのは基本ですよ。シビリアン兵にも許可してくれればいいのに」

マツ:「私はオッパイミサイル搭載したいなあ」

マサ:「あのねえ。生命維持装置は何処に積む訳?。私たちは超合金巨大ロボットじゃないのよ。そんないい加減なこと真顔で言われたら、もと担当素体教官として恥ずかしいわ」

ササ:「そういえば、お二人とも胸が少し大きくなっていませんか?」

マツ:「確かに大きくなってますね。でもミサイルじゃないとすると一体なんなんですか?」

マサ:「自爆装置を搭載するために胸を嵩上げしなくちゃならなかったのよ」

ハル:「じ、自爆装置ぃ!((((;゚Д゚)))。そんなあ。我が軍は特攻なんかやらないんでしょ?」

マサ:「万が一敵の工作員に捕まって分解調査されたとき生命維持装置の機密を守るためだって」

マツ:「さすがに外国に行くとなると厳しいですね。でも胸の嵩上げはいいなあ」

真理亜:「あ、もうじき仕立屋が来る時間だわ。マサ、今日の試射はこれぐらいにしなさい」

ハル:「オートクチュールのパーティドレスですか。そっちも羨ましいですね」

マサ:「軌道警備部隊で首尾良く私らの留守を守り通したら、後で分けてあげるわよ」

ハル:「それでわ。お二人の華麗なご活躍に期待してます」

真理亜:「そっちもね。頭上の守りは鉄壁で頼むわよ。本国もだけど北米連が禿しくブチ切れたらN共和国に核が飛ぶこともあるからあてにしてるのよ」


(北米連 大統領官邸)

ヤブー:「小娘帝国の友好国は調べ終わったのかね」

コメー:「確実に友好国と思われるのはこのリストの国々です。最も親密なのはN共和国でしょう。ここは元々地球温暖化防止の主張をするためだけに国連に加盟したぐらいで政策的に近いのです。残りの友好国も地勢的に似た条件の国ばかりです。産油国や阿弗利加の資源大国は含まれません。ただ、一部の産油国では近年に旧P共和国との貿易量が増加していますので要注意です。阿弗利加の場合は資源とのバーターに武器を求める国が多いためあまり奴らの進出はないようです」

ヤブー:「貿易量だけなら我が国だって友好国になってしまうから見分けは難しいな。とりあえず、一番情報を持っていそうなのはN共和国か。政権転覆の可能性はあるのかね?」

コメー:「この国は歴代大統領のうち3代を現大統領の祖先が占めており、他の代も同じ党派です。したがって、権力の恩恵にあずかれない層が固定化していて反体制派をたきつける余地があります」

ヤブー:「酋長が大統領に衣替えしたようなものか。なんとかなりそうだな。手は打ったのか?」

コメー:「幸いあそこは我が国と国交がありますし、関わりのある企業や学校も進出しています。既に外交官以外にも目立たないかたちで工作員を送り込んで反体制派の支援を始めています。気がかりな点は小娘帝国の大使館が感づいて大統領派を援助することですね。それに、あそこは旧P共和国の軍艦がたびたび寄港しています。いざとなれば介入してくるかも」

ヤブー:「そこまでやるかな?。奴らは武器輸出すら厳しく禁じているんだ。軍事援助は無いだろう」

コメー:「もしも大使館員に戦闘サイボーグが紛れ込んでいたら相当な戦力になるかも知れません。公然と軍事介入しなくても、こちらの工作員を抹殺するぐらいのことは出来るかも知れませんよ」

ヤブー:「そうかな?。例のテレビ映像を分析した結果によると力はせいぜい常人の2倍程度だそうだ。真空の宇宙空間で行動する能力を優先しているために、戦闘能力は低いものと推定されている。厳しい訓練を受けた我が工作員は十分対抗できるよ。捕獲できたら、分解調査して謎を解明できるな」

コメー:「奴らだって一応人間なのでしょう。分解調査などという言い方は寒気がしますね。ところで大統領、愛国民兵会が小娘帝国の活動を規制するためサイボーグ志願者を募っているそうです。こんなこと、到底民間だけで出来るとは思えません。まさか、国防総省が援助していないでしょうね?」

ヤブー:「ああ、私のところに協力しろと言って来たが、国防長官に断念させる方策を考えさせている」

コメー:「方策を検討ってそんな曖昧な態度じゃダメです。断固たる態度で却下して下さい」

ヤブー:「愛国民兵会は歴史のある有力なNGOだよ。理不尽な却下で怒らせるわけにはいかないのだ」

コメー:「人体の機械化改造なんて狂気の沙汰をやめさせることは当然です。どこが理不尽なのですか」

ヤブー:「私だって個人的意見としては君と同じ気持ちだよ。しかし法律と宗教的道徳は別物なんだ。愛国民兵会がやっていることは違法じゃないんだ。我々の道徳観念を一方的に押しつけることは出来ない。確かに今のところ私には国防総省に協力を禁じる権限があるが、私は民主国家の大統領だ。皇帝じゃない。技術的限界についてきちんと納得させたうえで断念させなければ、彼らを次の選挙で敵に回すことになる。彼らは長年にわたり不法移民の自主的取り締まりで国民の支持を集めてきたんだ。敵にはできんのだよ。謎の帝国が我が国をさしおいて宇宙資源を勝手に利用しているというのは十分に非常事態なんだ。非常事態に対処するためサイボーグ民兵が必要だという彼らの主張を受け入れる国民だって多いんだ」

コメー:「しかし、民間団体が宇宙で軍事行動を計画するなんて違法じゃないですか」

ヤブー:「宇宙条約は宇宙における領有権は認めないが、民間の所有権を否定する条文なんて無い。愛国民兵会は冥王星を発見した民間天文台から所有権の行使に関する委任状を貰ってきているんだ。我が国の法は、正当な地権者が民有地から不法侵入者を追い出すために武器を使うことを認めている。国防総省から民間への技術提供も昔から行われている。今回だけ禁ずるには相応の理由が要るんだ。君も私の後がまを目指すなら、強硬一辺倒じゃあ民主国家の指導者を務めるのは辛いぞ。意見の違う国民を辛抱強く説得して味方に付ける手法を学ぶべきだよ」

コメー:「仰るような原則論は頭では理解しています。でも、今の状況は怖いですよ」


(北米連 国防総省秘密研究施設)

案内の士官:「長官命令があるからご案内しますが、あれを見るのはお勧め出来ませんよ」

愛国民兵会会長:「わしらは国境警備ボランティアでさんざん怖い目に遭っているんだ」

ビル:「俺は海兵隊時代にPKOで虐殺現場を見てるんだ。むき出しの脳でも生きてれば上等だ」

スージー:「私たちはサイボーグになるということがどういうことか、ちゃんと解って来ています。今日はあくまでも技術的問題の確認を兼ねて、手術を受ける前の下見のつもりですからご心配なく」

ビル:「まったくだ。別にあんたに志願しろって言う訳じゃないんだぜ。何も畏れることはない」

案内の士官:「ビル元大尉のお噂は聞いて尊敬していますよ。でも、あれの恐ろしさは別ですよ。ましてや、スージーさんのような美しい女性があんな恐ろしい姿に変わるなど想像したくないです」

スージー:「お褒めにあずかり光栄ですけど、人間の価値は外見よりも人生で何を成し遂げたかです。人間はみな一皮剥けば似たような物体です。私は宇宙飛行士の最終選考に僅差で落とされたんです。再び宇宙を目指す機会が得られるのなら、どんな姿になろうとやり遂げるつもりなんです」

案内の士官:「口でいくら言っても解っては貰えないようですね。では、どうぞ、ここです」

生命維持実験体:「珍しく訪問者ですかな」

案内の士官:「謎の帝国が冥王星を探検した事件はネットのニュースで見たでしょ。今日はそれに関係したことで愛国民兵会の人があんたに話を聞きたがっていてね」

生命維持実験体:「私にはネットしか外のことを知る方法がないからもちろん見ましたよ。だけど、ここで死を待つだけの私に何の関係があるんです?」

愛国民兵会会長:「儂ら愛国民兵会が宇宙で勝手なことをしている小娘どもを取り締まるんです。それで、大統領に冥王星まで行けるロケットを用立ててくれと言ったら生身では無理だというんだ。あの小娘どもは脳以外の体を機械化したサイボーグに違いないとね。つまりあんたのようにね」

生命維持実験体:「私に与えられたのは生命維持装置だけで自由に動ける体なんて無いですよ。その生命維持装置だって不完全なもので72時間毎に血液を交換しないと死んでしまうんです。HLAの合う血液のストックがつきたらお終いなんですよ。私は末期ガンだったんです。あと3ヶ月の命だと解っていたから、少しでも延命出来ればとこの実験に志願したんです」

愛国民兵会会長:「あんたはその状態でちゃんとパソコン操作が出来ているのだろう?機械の操作が出来るのなら、ロボットのような体に組み込んで貰えば動けるようになるわけだな」

生命維持実験体:「そりゃあ理屈ではね。というか、シミュレータを繋がれて試したんですよ。でも、私は元々機械操作の得意な人間じゃなかったんでパソコンすらやっとだったんです。実験の結果とても無理だろうと言うことになって、試作された体はお蔵入りになったんですよ」

スージー:「あなたは何歳なの?。学歴や経歴についても教えていただけますか」

生命維持実験体:「59歳ですよ。高校を出て軍に入り軍曹で定年間際って時にガンになってね。ずっと歩兵だったから機械なんて銃と車しか扱ってないのに、いきなりロボット体の操作はねえ」

スージー:「なるほど。私ならきっとうまくできるわ」

生命維持実験体:「まさか、貴女がサイボーグになるつもりじゃ?。やめた方が良い。後悔する。大体ねえ、HLAの合う血液が大量に無かったらすぐに脳障害で死んでしまうそうですよ」

ビル:「俺達にはその心配がないんだ。HLAの同じ50人の仲間が支えてくれるからな」

生命維持実験体:「何だって!。そんなことが出来たのか。お願いだ。私にも血液を!」

愛国民兵会会長:「今後も協力してくれるなら努力はしてみるが望みは薄いだろうな。儂らの団体は地縁血縁の結びつきが濃いから、HLAの合う者を集めやすかったんだ。それでもたった2人のサイボーグ志願者しか用意できなかったというわけでね。気の毒だがあんたを長く支えてやるのは難しいだろう。あまり期待しないでくれ」

生命維持実験体:「1日分でもいいからお願いだ。生きている限り協力する」

スージー:「宇宙で使えるか検討したいので、試作されたという体を見せて貰えますか。それから、この生命維持装置の設計図と素材のデータも頂けませんか。自分の命がかかっているので、真空に耐えられるものか改良が要るか検討したいですから」

案内の士官:「本気でやるんですか。上の指示だから協力はしますけど気が進みません」

愛国民兵会会長:「儂らはいつだって本気だよ。さあ体の方を見せて貰おうか」

案内の士官:「こちらです」

ビル:「ほう、これは頑丈そうだな」

スージー:「かなり重そうね。こんな体でロケットに乗れるのかしら」

案内の士官:「陸戦用を想定していたので装甲が分厚く、600キロを超えています」

スージー:「軽量化しないとロケットの加速力に響きそうね。動力は何を使っているの?」

案内の士官:「ガソリンエンジンで4`Wの発電機を動かし各関節をモーターで駆動します。床の頑丈なところしか入れないし排気ガスが凄いので普通の暮らしは出来なくなりますよ」

スージー:「国境監視の活動で砂漠の野宿は慣れっこだから暮らしの心配は要らないわ。こんな体なら野犬やハゲタカに襲われる心配もしなくて良いから非常に楽になるわね。それよりも電源は何とかならないかしら。ガソリンエンジンじゃ宇宙で使えないわよ」

案内の士官:「装甲を薄くして300`台に軽量化すればプルトニウム電池が使えます。安全上、地上での使用は許されないので、地上で活動するときはガソリンエンジンですが」

スージー:「やればできるのね。改良機の試作はすぐにかかって貰えるのかしら?」

案内の士官:「そこまでご協力できるかは、国防長官に伺ってみないと判りません」

スージー:「この期に及んで全面協力は決まっていないんですか。覚悟決めてきたのに」

ビル;「まったくだ。ぐずぐずしていると小娘帝国が宇宙資源を独占してしまうぞ」

案内の士官:「済みません。私の一存では答えようがないんです」

愛国民兵会会長:「わかったわかった。もういい。大統領と国防長官には儂が直談判する。後は任せなさい。儂らには12万人の仲間と100万人の支持者がついているんだよ。必ず許可させてみせるさ。彼らも次の選挙で引退したくはないだろうからな」


(経済特区 軍民共用港を出航中の大型空母)

マサ:「船旅とは新婚旅行らしい気分が出ますね。外務省が気を利かしてくれたのかな」

真理亜:「そんなわけないでしょ。そもそも我々が旅客機使えるわけが無いじゃない。一発で金属探知機に引っかかるわよ。チャーター機じゃあ空港で目立ちすぎるしね。サイボーグ外交官の送迎はこの艦で近くまで行って艦載連絡機を使う規則なのよ」

マサ:「なあんだ。いつも同じなんですか。しかし回りくどいやり方ですね。私らの能力ならロケット機で弾道飛行して行けばあっという間なのに」

真理亜:「そんな目立つ飛行機の操縦席から女子高生が降り立ったら大騒ぎになるわよ。この艦の連絡機なら遊覧飛行機にしか見えないから一番目立たないのよ」

マサ:「この艦の乗組員はみんな特区の人間でしょ。機密保持は大丈夫なんですか?」

真理亜:「そのために普段から一般の外交官や家族の送迎もやっているのよ。一応口の堅い者が配属されているけど、念のため今からはお姉さまと呼びなさい。大使の話をするときは、お父さん、よ。経歴や他の家族の事はデータ見たわね?」

マサ:「はい、お姉さま」


(N共和国 国際学校高等部 射撃部)

北米連工作員の顧問教諭キャロル:「両手の肘を真っ直ぐ前に伸ばすのよ。片手撃ちなんて当たりっこない格好は、映画の中だけなんだから」

現地生:「うわあ。天井撃っちゃった」

キャロル:「反動考えなさいよ(あーあ、ここの住民は基本的に平和ぼけしてるなあ。こいつらの家は不満分子って事になってるけど、これじゃ革命家にはほど遠いわ。競争も知らず、貧しいと言っても飢えの経験が有るわけじゃなし、難しいなあ。戦闘員どころか学校の備品にでもなったほうがいいような奴ばっかりだわ)」

校内放送:「キャロル先生お電話です。近くの内線に出て下さい」

キャロル:「はい、...え、帝国大使の娘が入国?、それらしい転入生の予定?ああ、そういえば校内の会議で。ええ、マークしておきます。体の確認方法?ドアノブの指紋は?。調べるのが目立つか。腕じゃなく頭か胴を確認できないか?なるほど、なんとか抜け毛を手に入れるんですね。解りました。用心深くやります。(サイボーグの見分け方ねえ。そんなにうまく行くかしら)」


(在N共和国・帝国大使館内 大使公邸)

大使:「真理亜侯、マサ侯、長旅お疲れさまでした。これからよろしくお願いします」

真理亜:「こちらこそ宜しく。お父様」

大使:「そうでしたね。しばらく美人女子高生姉妹の父親を楽しませていただきます。早速ですが、学校へ手続きに行かないと」

マサ:「いよいよ女子高生ですね。ところで、かわいい制服は?」

真理亜:「国際学校にそんなものあるわけないでしょ。人種や宗教がばらばらだし。露出度の高いのはダメな娘もいるでしょ。藻前のコギャル服で十分通用するわ」

マサ:「なあんだ。ちょっと期待してたのにぃ」

大使:「ははは。マサ侯のキャラなら地で行っても怪しくないですね。貴女がたには無駄でしょうけど、見かけ上は誘拐を警戒する素振りが必要です。ここと学校の往復では、現地人運転手に加えて地軍武官を毎日同行させます」

真理亜:「地軍武官との連携上は良いのですが、留守の間はここが心配だわ」

大使:「地下室に重武装のリモートボディが5体格納されています。公用車が居ればネット制御できるので、襲撃があったらそれで対処願います」

真理亜:「盾になるときもそっちでだね。マサ、自爆の心配は一層少ないよ。あと3体余るのか。リモートボディの外見は?」

大使:「外見はダッチアンドロイドです。館員の慰安用を装っていまして」

真理亜:「3体には受付の格好をさせて、工場衛星にいる部下に運用させます。遅延があるから機敏な動きは出来ないけど、とろい受付嬢ならできますね。
(体内公用通信)リエ、手が空いてる者から当番を3人集めて頂戴。ハルたちじゃ勿体ないわ。とろい娘で良いんだけど。(/体内公用通信)」

工場衛星からリエ:「急にどうしました?...ほうほう、なるほど。遅延が難しいからあんまりとろすぎる娘じゃダメですね。受付ですか。言葉遣いの悪すぎる娘だと国の恥になりますね。1時間以内にローテ決めます。つないだら受付の訓練はそちらでやってくれますね。後は大使と?。了解です。新婚のお二人は安心して女子高生の生活をエンジョイして下さい。でわでわ」

マサ:「ところでキャラには自信ありますが、学校の健康診断は大丈夫ですか?」

大使:「大使館の医官が出した診断書で代用できるようになっています。宗教なんかの関係で他にも拒否する生徒が居てくれるので、怪しまれません」


(国際学校 校長室)

校長:「この国は気候温暖なせいか現地人の生徒はみんなお気楽な子が多くてね。すぐにお友達が出来ますよ。ところで、お二人は何故いまごろこちらに?」

真理亜:「バレエの発表会やクラブ活動の全国大会の関係で遅れたのです」

校長:「バレエか、お嬢様らしくて良いねえ。クラブは何をやっていたの?」

マサ:「二人とも射撃部でしたが、うちの国ものどかなところなので下手ですよ。あと、宇宙科学クラブにも入ってました。そっちは盛んなので自信あります」

校長:「ここの射撃部は最近来た監督が良い先生でね。きっと腕が上がりますよ」

真理亜:「せっかくバラエティに富んだ人の居るところに来たのでどうしようかな。こっちで何をやるかは、色々見学して決めたいなあとも思っていますの」

校長:「それもそうだね。実は妹さんの監督が、その顧問なんで言ってみたんだよ。じゃあ、先生を呼びますね。...もしー、キャロル先生をここへ、うん、そう」

キャロル:「(こいつらか。熱帯育ちにしてはずいぶん色白だな。怪しいぞ)
こんにちは。私がマサさんの方の担任になるキャロルです。宜しく」

マサ:「マサです。よろしくお願いします。姉の担任の先生は?」

キャロル:「今日は在留手続きで出かけているの。それで、お姉さんの案内も私が」

真理亜:「そうですか。よろしくお願いします。真理亜です」


(校内廊下を移動しながら)

キャロル:「二人とも色白で良いわねえ」

真理亜:「家系ですの。よく不思議がられますわ」

キャロル:「そちらのお国の皇帝陛下も貴女達のように色白で綺麗な方ね」

マサ:「私たちは一介の公務員の子女ですので、陛下に申し訳ないですわ」

キャロル:「(いまに化けの皮ならぬ人工皮膚を剥がしてやるわよ)
皇帝陛下って子供からも尊敬されているのねえ。怖い独裁者とは違うの?」

真理亜:「皇太子様が決まるときは、大勢の有資格者から最適な方が選ばれます。代々優秀な方しか皇帝にならないから私たちも良い暮らしが出来ていますの」

キャロル:「ふーん。良くできたしくみなのね。ここがマサさんの教室よ。席はこっちね。(椅子に髪が引っかかるように、ささくれを作ってあるのよ。写真通りロングで良かった。あとでどうなるか楽しみだわ。ひっひっひ)」

真理亜:「校長先生から伺いましたが、キャロル先生は射撃部の監督ですってね。私たちも国で少しやっていたんです。下手くそで余所では通用しないですけど」

キャロル:「(ぎくっ。探りを入れてるのか?入るなんて言い出すなよ)
ここも下手な子ばかりよ。興味があったら後で練習を見学してね。真理亜さんの教室はこっちよ」


(数日後)

キャロル:「あのマサって娘の髪の毛、どうだったの?。」

電話の声:「あれは普通の人毛だね。人工物じゃないよ」

キャロル:「そお。あの姉妹の色白さは怪しい気がしたんだけどねえ。違うか」

電話の声:「人毛を仕入れて植毛することもあり得るだろう。断定はできんよ」

キャロル:「あの長さじゃあ、ロングの娘を丸坊主にしないと取れないわよ。そこまでして髪を売る人なんてそうそう居ないと思うけどなあ」

電話の声:「世界には我々の感覚で理解できないような貧しい土地もあるのさ。それに、小乗仏教の地域なら仏門に入るロングの娘から買う機会も多いだろ。あれは、生来の茶髪じゃなくて、脱色して染めた黒髪のようだったぞ」

キャロル:「ふうん。そういう事かしらねえ。一応引き続き警戒するわ」

電話の声:「ところで、革命戦士になれそうな生徒は育っているのか」

キャロル:「ここの土地柄じゃあ時間がかかりそうだわ」

電話の声:「本国で何かあったらしくて当局がかなり苛立っているんだ。早く成果を出さないとやばいことになるかも知れないぞ」

キャロル:「努力はするけど見通しはないわね。じゃまた」


(北米連 国防総省秘密研究施設)

技師:「300`台に収めてもご要望の武装と強度が確保できそうです。交換用血液の搭載量は20日分になります。これ以上は重量が厳しいです。実験体で消費量の限界を精密に割り出したので値は正確です。血液を確保していただいて実験体がまだ生きているのが助かりますね。おたくらが圧力かけてくれたお陰で予算も付いて宇宙用ボディーの試作は順調です。しかし、国防長官や大統領はともかく、よく国務長官が首を縦に振りましたよね」

愛国民兵会会長:「儂には懇意にしている宗教界の重鎮だって多いんだよ。今度のことは非常事態だ。人事を尽くせば神も許すという解釈も引き出せるのさ。コメー国務長官だってその筋から諭されれば素直になるって訳だ」

スージー:「ところで、生命維持装置の耐衝撃化と真空動作試験はどうですか。私はそれが一番の気がかりですの。減圧事故で死にたくはないですからね。体を捨てる覚悟はしましたけど、命まで捨てる気はありませんのよ」

技師:「ご指摘の箇所は全て対策を施し、動物脳で40日間真空に耐えています。個人的には人間に使っても構わない完成度だと思いますよ」

スージー:「それなら安心だわ。本番用の機材はいつ揃うのかしら」

技師:「10日後に予備を含めて部材が整います。組立試験は15日で出来ます。その先の最終的な確認項目は、あなた方に入って頂いた後でしか出来ません。つまり、最短1ヶ月弱で脳摘出手術と言うことになりますが、大丈夫ですか?」

スージー:「この体でやるべき事は全部済ませてありますからご心配なく。 それなら、なるべき早いうちに手術スタッフと会合を持っておきたいですね。今度のことに戸惑っている人もいるでしょうから信頼関係を築きたいのです。迷いが残ったまま手術されて、手元が狂ってはたまりませんからね」

技師:「ごもっともです。正直言って私にもまだ迷いはありますよ。特に貴女のような美人がその体を捨ててしまうというのは、やはり心が痛みます」

スージー:「皆さんにそう仰っていただけるのは、決して悪い気がしませんわ。でも、申し訳ないけど私が欲しいのは美しい体より、楽に宇宙へ行ける体なんです」

愛国民兵会会長:「そういうことだ。なるべく彼女の望みを聞いてやってくれ」

技師:「承知しました。一両日中に会合をセッティングします」


(7日後 愛国民兵会本部)

愛国民兵会会長:「いよいよ検査入院だ。そして問題がなければそのまま脳摘出だ。いまさらだが、あえてもう一度だけ聞く。お前達、後悔は無いな?小娘帝国の大きな活動は報告されていないから無理に急がなくても良いんだぞ」

ビル:「大きな活動でなくても奴らは毎日宇宙資源を勝手に使ってるんでしょ。新しい体に慣れて作戦が出来るまでには時間がかかるんだから急ぐべきだ」

スージー:「この頭を見ていただけば、おわかりでしょう」

ビル:「まったくだな。行く前にスキンヘッドにしてくるとは思い切ったものだ」

スージー:「手術チームにこちらの意志を徹底するのに最適な方法を採ったのよ。それに、念のため最初に開頭して電極を着け、精密測定するよう提案しておいたからね。実験体がうまく体を制御できない原因は脳摘出前に採るべきデータの不足だと思うの。本人の能力だけでなく、運動と脳の部位が出す信号のマッピング情報が足りないのよ」

ビル:「すると意識が有るまま開頭されるわけだな。自分からそれを提案したのか」

スージー:「当然だわ。運動能力に問題が残って宇宙で苦労したくはないでしょ。
あなたも向こうに着いたらすぐに剃髪して開頭する事になるわ。良いわね?」

ビル:「勿論だ。ところで、美人はスキンヘッドでもよく似合うんだな。感心したよ。
その姿も、それはそれで惜しがられるだろうな」

スージー:「新しい体でも同じ事を言わせるつもりなので宜しく。さ、行きましょ」

愛国民兵会会長:「頼んだぞ」


(北米連 国防総省秘密研究施設内手術室)

脳外科医:「通常の覚醒下脳手術は全麻で開頭してから必要な間だけ覚まします。部分麻酔での開頭は経験がありません。異常を感じたらすぐ言って下さい」

スージー:「軽い痛みぐらいは我慢しても良いですか?」

脳外科医:「頭蓋骨を切るときの軽い痛みは異常ではありません。その先で何か感じたときは脳に影響があるかも知れないので気を付けて下さい。よし、始めるぞ」

衛生兵:「wktk ((((;゚Д゚))) wktk ((((;゚Д゚)))...」

スージー:「しっかりして頂戴。こっちは命がけなんだから」

衛生兵:「す、済みません。もう大丈夫です。メスどうぞ」

スージー:「まだ何も痛みは感じませんね」

脳外科医:「表皮や筋膜には十分麻酔が効いています」

衛生兵:「止血クリップどうぞ」

脳外科医:「うむ、ドリルの準備も頼むぞ」

スージー:「衛生兵さん、顔が赤くなってきていませんか」

衛生兵:「も、申し訳有りません。全裸の女性が目の前で開頭されるのを見て...」

スージー:「あなた、スキンヘッドフェチか脳フェチなのね」

衛生兵:「りょ、両方です」

スージー:「正直で良いわよ。射精してすっきりさせた方が安全じゃないの?」

脳外科医:「気を遣わせて済みません。おい、やってこい」

衛生兵:「はっ。すぐ戻ります」

スージー:「先生は大丈夫?」

脳外科医:「駆け出しの頃は多少興奮したものです。今は見飽きてしまいました。女性看護師の起用も考えたのですが、手術内容が特殊すぎますから、ちょっと。あいつは戦場での手術も経験したタフな奴だったんですが、まさかねえ」

スージー:「こちらから無理をお願いしたんです。気にしないで下さい」

衛生兵:「済みません。ご迷惑をおかけしました」

脳外科医:「うむ。ドリル用意。少し痛むと思いますが頑張って下さい」

スージー:「うっ。なにくそ。...大丈夫、強い痛みはありません」

脳外科医:「ノコギリ。もう少しの我慢ですので」

衛生兵:「開きましたね」

脳外科医:「おい大丈夫か?」

衛生兵:「さっき出すものを出したので、平気です。綺麗な脳硬膜ですね」

スージー:「そお?。見てみたいわ」

脳外科医:「構いませんよ。おい、鏡だ」

衛生兵:「はい。これで見えますか?」

スージー:「見えたわ。ふーん。衛生兵さんの気持ちも少し解る希ガス。下の方、濡れてきてしまいましたわ」

脳外科医:「おい、お拭きしろ。カテーテル引っかけるなよ」

衛生兵:「はっ。失礼します。ふきふき。できました」

脳外科医:「もういいですか。硬膜切開にかかりますが」

スージー:「あ、すみません。どうぞ続けて下さい」

脳外科医:「ハサミ。それから技師に連絡して電極セットを搬入させろ」

衛生兵:「はいどうぞ。...硬膜開きました、電極セットお願いします」

技師:「入ります。うっ」

スージー:「あら、顔色が悪いわよ」

技師:「済みません。こういうのは慣れていなくて」

脳外科医:「部品をそこに置いて、吐いてきなさい。無理は禁物だ。取り付けをしておくから、調整までに戻ってくれれば良いよ」

技師:「そうさせていただきます。(ダッシュ)...おえええぇぇぇ」

脳外科医:「資料や実験動物で慣れていても、実物は違いますからな。自分のを鏡で見て顔色一つ変えない貴女は、全くたいしたものですよ」

衛生兵:「先生、疲れは大丈夫ですか?」

脳外科医:「これほどの電極数は初めてだ。正直しんどいかな」

スージー:「途中休憩は出来ませんの?。私は構いませんが」

脳外科医:「部分麻酔とはいえ延長は貴女の負荷が気になります。テロ現場での緊急手術に比べれば、体調万全で臨んでますから大丈夫です」

技師:「戻りました。どうにかすっきりしました。おお、進んでいますね」

脳外科医:「間もなく左半分が終わったらカバー着くから、接続始めてくれ」

技師:「了解です。試験器の立ち上げを始めています」

スージー:「顔色が直ったわね。良かったわ。間に合って」

技師:「半分でも機械に覆われてくれれば平気です。ご心配かけました」

脳外科医:「左半分完成だ。右をやっている間に信号を点検してくれ」

技師:「接続確認。スージーさん、右手を開いたり閉じたりして下さい」

スージー:「こうで良いの?」

技師:「信号は来てますね。一次マップ採るので続けて下さい」

脳外科医:「左の運動系は一応成功したかな。よし、頑張るぞ。視覚は?」

技師:「テストパタン流します。スージーさん、何か見えますか?」

スージー:「見えるわ。でも、何の形かしら、うーん、NUL POかな?」

技師:「一応うまく入ってますね。傾きはどうですか?」

スージー:「30度くらいで右上がりね」

技師:「初回としてはうまく行っている方でしょう。調整は後にします」

脳外科医:「右の取り付けが出来たよ。点検にかかってくれ」

技師:「先ほどと同様にやりますので、スージーさんお願いします」

スージー:「今度は左手ね。どうかしら?」

技師:「結構です。視覚チェックお願いします」

スージー:「あら、ずれて、2重に見えてしまうわ。見づらいわね」

技師:「左右の位置合わせがまだですので。後で合わせられますから」

脳外科医:「うむ。良いようだな。カバーを残った頭蓋骨に固定します。少し痛むと思いますが、ご容赦願います。スクリューをくれ」

衛生兵:「スクリューどうぞ」

スージー:「うっ、うっ、平気平気、うっううう、うっ。ふう」

脳外科医:「固定終わりました。接合部に保護シートを接着します」

スージー:「これで、新しい体を遠隔操作できるようになったわね」

技師:「うまく調整すれば、ですので焦らないで下さい」

衛生兵:「窒素、持ってきました」

脳外科医:「外した頭皮と頭蓋骨は冷凍保存します。ご了承下さい」

スージー:「そんなもの、取って置いてどうするの?」

脳外科医:「現在の技術では難しいですが、一応元に戻せるように」

スージー:「以後の手術でも外した体の部品を全部保存するつもりなの?次は視神経や脊髄を切ってしまうのよ。無駄じゃないかしら?」

脳外科医:「将来の復元可能性を残すように命じられています」

スージー:「そんな気遣いは必要ないのに」

脳外科医:「国務長官を納得させたときの条件だそうです」

スージー:「ははは、じゃあ仕方ないわね。どうぞご自由に」

脳外科医:「もう動いて構いません。但し、入浴はできません。体の清拭には、女性看護師をつけますのでご了承下さい」

スージー:「脳見せた仲だから、その衛生兵さんにお願いしたいわ」

脳外科医:「おい、興奮せずにやれる自信はあるか?」

衛生兵:「頭皮や脳さえ見えなければ。精一杯勤めます」

脳外科医:「結構ですよ。とりあえずお疲れさまでした」

スージー:「こちらこそ。ご苦労様でした。次も宜しく」


(N共和国 大統領府)

秘書官:「帝国大使が令嬢姉妹を伴ってご挨拶にみえました」

ペンタン大統領:「お通ししてくれ。しばらく人を入れるな」

大使:「ようやく単身赴任が解消できましたよ」

ペンタン:「美しい娘さん2人は羨ましいですな。おいくつ?」

大使:「18と16になります。国際学校に通わせます」

ペンタン:「息子のヘキサンも16です。国際学校にするのだったな」

真理亜:「それは危険ですわ。最悪人質にされる恐れもあります」

ペンタン:「あ、もう大丈夫かな」

真理亜:「監視カメラ映像を受信しました。秘書官は指示を守っています」

ペンタン:「さすがに素早いですね、武官殿は。息子のことは冗談です。ところで、国際学校はやはり彼らの拠点に?」

真理亜:「その前に改めてご挨拶を、特命全権公使・武官の真理亜大佐です」

マサ:「特命公使・武官のマサ少佐です」

大使:「建前は私の部下ですが、帝国本体の貴族ですから権限は上になります」

ペンタン:「解っております。お二人は本当のご姉妹ですか?」

真理亜:「同性婚のパートナーです。旧性がヘテロなので子供は出来ますよ」

ペンタン:「なるほど。赤の他人どうしには見えなかったので。どちらが?」

マサ:「済みません。そういう質問には答えたくないのですが」

真理亜:「はは。自分から白状してるじゃないの」

ペンタン:「これは失礼。そういう方しかサイボーグになれないのでしたね」

マサ:「よくご存じなのですね。参りましたわ」

ペンタン:「私の家系は元々この島の酋長でした。大統領を務めた先祖もいます。その中に、そちらの初代皇帝陛下と懇意にしていただいた者も居ります。その関係で、昔から当家の嫡子だけがあなた方の正体を知っているのです。私はいまさら世襲権力に執着する気はないのですが、島民の将来を案じています。北米連の経済政策を放置したら、いずれ海面上昇で住むところが無くなります。それを止めるには、あなた方の力に頼るしか無いのです」

真理亜:「ええ、大統領の家系と皇家との親交は承知しております」

ペンタン:「残念ながら世襲権力への感情的反発が国益より先という者も居ます。どうやら、北米連の工作員につけ込まれて反政府組織が作られたようなのです」

真理亜:「国際学校の女教師が外国の工作員であることは間違いありません。マサの抜け毛を手に入れる細工をして、何処かで分析したようですわ」

マサ:「えっ、まさか。あ、そういえば椅子のささくれで髪が引っかかって」

真理亜:「油断させるために、気づかないふりをしていたのよ」

マサ:「体内通信で教えてくれたって良いのにぃ」

真理亜:「態度に出たら警戒されちゃうでしょ。藻前は駆け引きが苦手だからね。こういう事ではあてにしていないから、荒事になったら頑張りなさい」

ペンタン:「大丈夫なのですか?」

真理亜:「赴任に備えて人毛を植毛してきましたから、がっかりしている頃です」

マサ:「この髪、高かったのになあ。あのセンコー、捕まえたら坊主にしてやる」

真理亜:「登校したとき絶対態度に出しちゃダメよ。まだ仲間が判らないからね。大使館に侵入してきて捕まれば非人になるから、仕返しはそれまで待ちなさい。大統領、敵の攻撃を大使館に仕向けたいのでこちらの警備を厳重にして下さい」

ペンタン:「精一杯やりますが、一族の者を除くと誰を信じて良いやら。我が国の軍は陸戦装備が貧弱だし、士官は北米連留学経験者が多いのです。もしも、抱き込まれている者が居たら警備どころか自滅です」

真理亜:「では、ダッチアンドロイドを改造したリモートボディを配置しましょう。工場衛星にいる部下に制御させれば、動きが鈍いけどサイボーグの力は出せます。政府機関のアルバイト事務員とか、怪しまれないポストは用意できますか?」

ペンタン:「公邸と大統領府の臨時警備員や食堂従業員なら、私の一存で雇えます。事務職ですと越権行為で強引に押し込むようになるので多少問題がありますね」

マサ:「あれを回してしまうと大使館が手薄になりますよねぇ」

真理亜:「大丈夫よ。あと5体取り寄せ中で、明日には届くからね。警備員が増えるのが良いわね。大統領、5人雇い入れることが出来ますか?」

ペンタン:「女性警備員ばかり5人ですか。うーん、多少怪しいかなあ。そうだ、警備のソフト化を推進するとかなんとか理由を付ければ出来ますね」

真理亜:「なんとかお願いします」

ペンタン:「承知しました。しかし、マサ少佐は言葉まで女子高生になってますね。いいなあ。永遠のコギャルか。私もそんな身分になれたらなあ」

マサ:「正式に入学したので、今は正真正銘の女子高生です」

真理亜:「別に努力した訳じゃなくて藻前は元からコギャル趣味でしょう。大統領なら一代貴族として帝国の首脳に招聘される資格は十分ですよ。引退なさった後でどうですか。女子高生になるチャンスもありますよ」

ペンタン:「そこまで評価して頂けるのはたいへん光栄ですね。でも、私は最後までこの島の行く末を見届けなければなりません。さっきの呟きは妄想だと思って聞き流して下さい」

真理亜:「それは残念。今日は、そろそろお暇します。でわまた」

大使:「失礼します」

マサ:「バイビー、またねぇ」


(国際学校 教職員寮 談話室)

キャロル:「大統領府の警備状況はどんな様子?」

工作員仲間1:「最近、警備員が5人増えたぞ。感づいて用心してるかもな」

工作員仲間2:「増えたのは女ばかりだ。単なる警備のソフト化かもしれんね」

キャロル:「それなら良いけど、もしも帝国のサイボーグなら厄介ね」

工作員仲間1:「革命となると我々は表面に出られないからな。この国の反体制派だけで大統領府を占拠して大統領を捕らえるのが基本だ。だが、反体制の連中には対サイボーグ用徹甲弾を撃てる腕前なんかまだ無い。サイボーグが相手じゃひとたまりもないぞ」

キャロル:「早く成果を出せと当局がうるさく言ってきているわ。この際、反体制派はダメ元で革命騒ぎを起こさせて囮にしましょう。帝国のサイボーグがどこに潜んでいても、そちらに引きつけられるでしょう。放置して革命が成功してしまったら困るでしょうからね。その隙に我々が帝国大使館を襲って大使を拉致すれば情報は手にはいるわよね」

工作員仲間2:「大使の娘姉妹は本当に大丈夫かな。毛髪鑑定は不確実だろ。もしも大使の護衛に投入されたサイボーグなら非常時に側をを離れないだろう」

キャロル:「妹の方は私が担任だけど、心底ちゃらちゃらした馬鹿娘だわ。雰囲気は大使令嬢と言うよりも頭も尻も軽い売春婦よ。芝居には見えないわね。仮にあの娘が、サイボーグだとしても強敵とは思えないわよ。テレビで見た皇帝や司令官とは明らかに違うからせいぜい下っ端戦闘員でしょう。我々の徹甲爆裂弾装備が有れば簡単に倒せると思うわよ」

工作員仲間1:「尻の軽いのはあの国の流儀で能力とは関係ないかもな。サイボーグが2人と警備員や武官数人が相手だと6人は欲しいよな」

工作員仲間2:「応援は呼べるかな」

キャロル:「すぐに来れるのは3人ね。どうする?」

工作員仲間1:「ちょうど6人か。当局はかなり強硬なのか?」

キャロル:「ええ。あと2週間で重要情報が何も得られないとチーム解散ね。そうなったら、ただクビ、で済むわけがないわよね」

工作員仲間2:「((((;゚Д゚))) やるしかないか」

工作員仲間1:「しかたがないな。なるべく狙撃でサイボーグを先に倒そう。徹甲爆裂弾で首を撃ち抜けば確実にやれるだろう」

キャロル:「良いけど当日にしてよ。事前に学校でやるのは疑われるからね。ここは治外法権じゃないし、警察は大統領派が多いからしつこく調べられるわ」


(3日後夕方 大統領府周辺)

反政府デモ隊:「世襲反対!。公共事業増やせー!。ガソリン税廃止!...」

アジテーター:「もう我慢できねえ!。力ずくだー」

サクラ:「そうだそうだ。やっちまえ」

アジテーター:「火炎瓶欲しいかー?」

サクラ:「くれくれ」

反政府デモ隊:「俺も俺も。オレオレ、俺だよ...」


(深夜 帝国大使館)

大使:「デモが暴徒化してから5時間になりますが大丈夫ですかね」

マサ:「配備したリモートボディの当直からあっちの様子を聞いています。武器は殆どが火炎瓶や包丁で、まともな武器を持った者は殆ど居ません。リモートの体内武器は使わずに押しとどめられそうです。空き瓶が武器代わりの酔っぱらいなんかも混じっています。なるべく傷つけずに規制しようとしているところです」

真理亜:「変ねえ。北米連の差し金にしては攻撃力がなさ杉よ。騒ぎを長引かせるのが目的で、革命を成功させる気はないみたいよ」

マサ:「ひょっとして、騒ぎに紛れてここを襲うのかな?」

真理亜:「リモートの娘に庭を巡回させた方が良いわね」


(近くの大木から)

工作員仲間1:「むっ、二人組の娘だな。一気に両方は無理か。まあいいや、一人減ればあとはキャロルたちがなんとかするだろう。よーく狙って...成仏」

リモートボディ1:「いてっ。あ、あれっ。く、首、首...」

リモートボディ2:「狙撃!?。どこから?...とにかく報告」

工作員仲間1:「鈍い奴だ。まともに食らったぞ。まだ立ってるな。やや!、首を探してるぞ。生きてるのか。一体どういいう構造なんだ。まあいい。キャロル!、一人撃って首を吹っ飛ばしたが動いている。もう一人は物陰に引っ込んでこっちを窺っているようだ」

キャロル:「首無しで動いているって?。脳はどこに入ってるの。まあいいや、不自由なら何とかなりそうね。もう1人も狙えない?」

工作員仲間1:「場所を変えてやってみる」

キャロル:「私たちは反対側で塀を超えるから動く奴はみんな撃って!」

工作員仲間1:「わかった。なるべく粘って、注意を引きつける」


(大使館内)

マサ:「強力な弾ですね。リモートの娘が錯乱して首を探してます。自分で出なくてよかったぁ。当たったら死んじゃいますよ」

真理亜:「衛星からのリモートは動きが鈍いからやられたのね。油断しなければ簡単に食らうとは思わないけど気をつけなさい。あ、反対側の塀から5人来たわよ。ごつい武器持ってるわね。室内なら破片が跳ね返るから使いにくそうね。中で迎え撃つわよ」

マサ:「怖いから私らもリモートボディを先に出しましょう。リモートは武装が良いですから先手が打てますよね。ここからなら、衛星と違って本体と大差ない反応が出来るし」

真理亜:「そおねえ。この体は金がかかっているから傷つけたくないし。よし、リモートボディリンク起動...」


(庭)

キャロル:「狙撃の威力に恐れをなしたのかしら。誰も出てこないわね。とにかくサイボーグはあっち側に居るから今のうちに侵入するわよ」

工作員仲間3:「他にサイボーグは居ないんだろうな?」

キャロル:「それらしい人物の入国は他にないわね。密入国は判らないが」

工作員仲間4:「もし居たら室内じゃ爆裂弾は使えないんじゃないか?」

キャロル:「ちと難しいけど、物陰から撃てば破片は避けられるわよ。なにより、早く大使を捕まえる事ね。人質がいればこっちのものだわ」

工作員仲間2:「この窓からにしよう。開けやすそうだ」


(廊下)

マサ・リモート:「こっちの部屋で窓を破ったようです」

真理亜・リモート:「部屋の出口は2カ所よ。分かれて押さえましょ。」

工作員仲間5:「あっ、えっ、受付の娘?。何故こんな夜に?、動くな!」

マサ・リモート:「ラブラブ光線、続けてハンドガン発射」

工作員仲間5:「あちっ、ぐえっ。う、こいつもサイボーグ?...合掌」

工作員仲間4:「くらえっ!」

マサ・リモート:「おっと。首チョンパでトラウマはご免よ。ジャンプ!」

工作員仲間4:「くらえっ!。くらえっ!。わああ、ぎゃああ。合掌」

マサ・リモート:「あーあ、逆上して狭いとこでそんなもの撃つから...こっちも破片で傷だらけorz。おまけに返り血まみれorz。血は嫌いだあ。あ、まあいいか、本体じゃないし。真理亜様!二人片づきました。」

真理亜:「こっちも二人殺ったわ。そっちは氏んだの?。男か、要らないわ」

マサ・リモート:「一人は弾片で自爆です。手を下していません」

真理亜・リモート:「罪意識は要らないでしょ。あと一人探すわよ」

キャロル:「ちっ、みんなやられたか。天井裏から進んで正解ね」

マサ・リモート:「微かに音がした希ガス。天井裏かしら」

真理亜・リモート:「赤外線で見るのよ。微かな温度差に注意して。あ、居た居た。部屋の中央に向かっているわ。生け捕りにしたいなあ。よし、中央に来たら四隅をミサイルで撃って天井落とすわよ。場所判った?」

マサ・リモート:「え、そんな乱暴な。まあいいか。自分の財産じゃないし」

真理亜・リモート:「オッパイミサイルロック解除。マサ、同期取って!」

マサ・リモート:「はぁい。オッパイミサイルロック解除。発射」

キャロル:「な、なにぃ!。きゃああ」

マサ・リモート:「痛てててて、こっちも瓦礫の下敷きじゃないですか。動けなくなっちゃいましたよ。どうしますか?」

真理亜・リモート:「なんだ。藻前もか。でも、これなら敵は脳震盪でしょう。本体に戻って逮捕するわよ。リモート解除...」

マサ:「まだ伸びてますかね。こんなにコストかけて逃げられたら大損だな」

真理亜:「気がついても怪我はしてるでしょ。必ず捕まえるのよ」

キャロル:「うう、痛い。腕が折れているわ。とにかく逃げなきゃ。あっ」

マサ:「あら、キャロル先生じゃないですか。こんばんわ。何故ここに?」

キャロル:「(え、さっきのはこいつじゃなかったの?。本当に普通の娘?)助けて、変な男達にさらわれてきて天井裏に放り込まれたと思ったら...」

真理亜:「バーカ。そんな言い訳が通じる訳無いでしょ。工作員さん」

キャロル:「違ったか。それっ、煙幕弾」

マサ:「ラブラブ・パーンチ、ブレーキ撃ち!。首根っこ押さえっと!」

キャロル:「くうう。やっぱりサイボーグか。放せっ!。先生に何するの!」

真理亜:「4時間後に本国の陛下が目覚めたらここで出張裁判にかけるのよ。治外法権の大使館に乱入して捕まったら、こちらの法で裁かれるのは当然ね。あなたにとって唯一つの救いは、我が国に死刑が無い事ね」

キャロル:「わかったわ。降伏するから、せめて折れた腕を診て頂戴」

真理亜:「腕ねえ。もうじき要らなくなるんだけど、どうしようかな」

マサ:「まだ人権削除判決前なんだから、痛み止めくらい打ちましょう。一応私の担任ですし、作戦成功だから良いじゃないですか?」

真理亜:「成功ねえ。天井とリモートボディ4体破損は高いわよ。狙撃手は逃げちゃったし、外で撃たれた娘達の本体はショックで錯乱よ。当分安静で使えなくなったって、リエがカンカンに怒っているわ」

マサ:「娘達?。二人目も撃たれちゃったんですか」

真理亜:「見事に首チョンパ。憎たらしいスナイパーだわ。悔しいけど、あいつは今頃まっしぐらに高飛びしてるんでしょうね」

キャロル:「見捨てて逃げやがったか。ま、私でも同じ事をしたね。 これも非情の掟か。あーあ、こんな仕事に就くんじゃなかったわ」

真理亜:「とりあえず、地下に監禁するよ。さあ来いっ!」


(冥王星降格にもめげず、北米連の攻勢はしつこさを増してきました。諜報戦と民兵サイボーグの開発が重なって忙しくなりすぎましたね。次回予告(27)民間宇宙保安官)

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