−−(27)民間宇宙保管官(後編)−−
(高度200`の低軌道)
ハル:「あーあ、あいつこんな場所でブースター2個も投棄しやがった。まったくもう。私らの苦労も知らないで、金持ち国はこれだからなぁ。ほお、あんな風に3機合体で大型宇宙船になるのね。良くできてるな。ところで、燃料やば目なんだけどササたち早く来てくれないかな」
マツ:「おーい。お待たせ」
ミツ:「ふーん、あいつかぁ。見た目手強そうねぇ」
ササ:「何でもうすらでかく作るのが北米連クオリティでしょ。サイボーグったって、所詮チンピラ民兵なんでしょ。大したこと無いわよ」
ハル:「あいつさっき、すぐそこでブースター2個も投棄したんだ。こんな迷惑な場所でゴミ投げ捨てるんだから、きっとガラの悪い奴だよ。私が、とっちめてやりたいけど燃料やばいんだ、あとお願いね。乱暴そうな奴だから一応気を付けてね」
スージー:「ん、小型船が3機近づいてきたな。盗人小娘どもだろうな。もう邪魔しに来たか。発進地点まで時間が無いし待機軌道は外れたくないな。ここでこんな雑魚相手に戦うわけにはいかないのよね。とりあえず無視無視」
ササ:「んと、外国船だから国際緊急周波のアナログね。滅多に使わないわね。で、自動即時翻訳は英語で良いのかしら。ガラの悪い英語でも大丈夫かな?よし、設定終わり。んー、挑発の文句か。ゴミ投げてたからなあ...よし。あー、そこの大型宇宙船の人!。こんな場所でゴミ捨てちゃダメじゃないの!ちゃんと拾って自分で始末なさい。こら、聞こえているんでしょ!」
スージー:「うるさいなあ。お前らに指図される筋合いなんか無いわよ」
ササ:「(女のようね。サイボーグって話だったから当然か)そんな勝手な事していると次に上がってくるときあんたにぶつかるわよ」
スージー:「私の帰還予定はずーっと先だからそれまでに大気抵抗で落ちるわよ」
ササ:「なんて性格の悪い香具師なの。どうせ顔もブスなんでしょ」
ミツ、マツ:「やーい、ブスブスブス...」
スージー:「(超つまらない挑発ねえ。)外見なんて気にしてないよーだ」
ササ:「アナログ通信中止。だめだわ。全然挑発に乗ってこないよ。仕方ないから、3隻で前方を飛び回って発進を妨害しましょう」
ミツ:「強引に発進されたら危ないわね」
マツ:「加速の兆候があっらら待避するしかないわね」
スージー:「ふん。惑星間に出るのを妨害する気ね。お、あと1分か。チキンレースなら負けないわよ。化学エンジン点火用意3,2,1,GO!どけー!馬鹿者ども」
マツ、ミツ、ササ:「わあああ、待避、待避、待避」
ササ:「危なかったあ、あの図体で凄い加速ね」
ミツ:「悔しいけど追いかけるのは無理ね」
マツ:「あの炎の色は液体酸素−ケロシン系の液体燃料エンジンね。推力はばかでかいけど、燃費が悪いから打ち上げ時以外に使う物じゃ無いのになあ。貴重な石油じゃぶじゃぶ使いやがって、とんでもない贅沢な奴だわ」
ササ:「とりあえず、報告しないと、リエさん...」
工場衛星からリエ:「...そう、挑発しても戦わずに振り切っていったか。意志の固い奴だな。手強いわねえ。誰も怪我はない?。うん無事で良かったわ。その性能でこの進路だと一旦火星軌道側に出て後ろから”みくら”を追えるわね。こちらから殿下に通信入れておくからデブリ拾って引き揚げなさい」
ササ:「えーっ、あいつのゴミなんか拾うのぉ」
リエ:「冷静になりなさい。デブリの放置はこっちも困るんだから。それに、どこのデブリだろうと拾ったら収入になるでしょ」
マツ、ミツ、ササ:「はーい。収入収入...ぶつぶつ」
(”みくら”会議室)
朝子10世:「リエから報告してきた大型船がこちらに向かっているようです。真理亜が入手した情報によると愛国民兵会という民間防衛組織の武装船です。乗員は戦闘型のサイボーグらしく、民間宇宙保安官と自称しているとのことです。接触した者の報告では女性で、凄まじい加速に耐えたことから事実でしょう」
翡翠:「外務省の妨害工作によって北米連ではサイボーグ兵が作れないはずでは?」
朝子10世:「それはあくまでも正規軍の兵士に関してです。民間は別ですよ。あの国は民間人の武器所持を殆ど規制していないし、人体改造への法的規制も緩いのです。無論、サイボーグや惑星間航行船ですから政府が何らかの支援をしているのでしょう。ただ、政府が表に出なければ宗教勢力だって強硬に阻止はできないでしょう。それに、タカ派団体のことですから一部の宗教勢力には賛同させたかも知れないわね」
翡翠:「政府のコントロール下にない戦闘サイボーグですか、厄介ですね」
朝子10世:「その通り。その団体は平素、不法越境者を正当防衛名目で射殺しています。なにか言いがかりをつける理由を用意していて、攻撃してくる可能性は高いでしょう。民事紛争に関わる実力行使という名目なら、宣戦布告は関係ないですからね。重武装好きの北米連の民兵ですから、もしかしたらバズーカ砲とか内蔵している鴨ね。一方この艦は、降下艇のエキシマビーム以外に重火器類を積んでいません。攻撃された場合の対策を考えたいのですが、皆の意見はどうですか?」
リホ:「その戦闘艦が出現したのは初めてですよね?」
朝子10世:「報告された範囲ではその通りよ」
リホ:「ならば、サイボーグらしき乗員も宇宙飛行は初めてでしょう。私もそうでしたが、サイボーグといえども宇宙での行動に慣れるまでに経験が必要です。宇宙に不慣れなら、無重力下で投石が砲撃に匹敵することは身に付いていないでしょう。本艦は軽量化のためくず隕石は積んでいませんが金属製の予備部品なら残っていますね。重機のマニピュレータで金属製品を投げつければ重火器に対抗できませんか?」
エリ:「なるほど。だけど相手の船は外見や加速からみて、かなり頑丈そうなんでしょ。重機で外に出て投石したって速度差が大きくないと痛めつけるのは難しいでしょ」
朝子10世:「うーん。言いがかりを付けに来るなら速度は合わせてくるわよね。でも、我々が重武装に対抗する手段は宇宙経験の豊富さしか無いのよねえ。そうだわ、交渉に応じる素振りで格納庫に招き入れてやっつけましょうか。戦闘用のごついボディーだとしても船体よりは遙かに装甲が薄いでしょう」
雀奴:「争わずに逃げちゃダメですか?。寄ってきたところでいきなり加速すれば?」
瑪瑙:「こっちは推進剤に殆ど余裕がないのよ。あちらは飛行距離が短いから余裕でしょ。報告通りの加速力なら、すぐ追いつかれるわ。推進剤切れで漂流なんて最悪よ」
タラ:「格納庫でやっつけても、残りの仲間に船から攻撃されるんじゃ?」
朝子10世:「あちらは正規軍じゃなくて民兵よ。多数のサイボーグは作れっこ無いわ。それに待機軌道上で目撃された合体の様子では有人部分はせいぜい3人乗りのようね。僅か3人なら、一人を取り押さえればそいつを見捨てて攻撃するのは難しいでしょう。とにかく迎え撃つ準備よ。不要資材を集めて重機で投げやすい砲丸に加工するのよ」
冬子:「そういう加工作業は工場勤務で慣れています。私に指揮を任せて下さい。素材は、使い古したエンジングリッドが重量や強度の点で適するでしょう」
朝子10世:「そうね。冬子に頼むわ。時間はあるからなるべく投げ易くしてね。重機操作は経験の長いリホとエリがやるように、あと降下艇のビームも使うわね。うん、降下艇はマオとミキで操縦して。向こうが来る前に搭乗して隠れているのよ」
冬子、リホ、エリ、マオ、ミキ:「お任せ下さい。新参サイボーグには負けません」
(愛国民兵会戦闘艦@惑星間軌道)
スージー:「五月蠅い小蠅はあっさり振り切ったな。加速時の苦痛は全く無かったね。宇宙酔いもないし、この体は地上のQOLはイマイチだけど、ここでは非常に快適だわ。標的は、まだこの辺りか。しばらく邪魔も入らないだろうから15日ほど寝るかな。寝て血液の消費を抑えておかないとね。体内20日と保管庫に40日、既に1日消費か。身を削って献血してくれる仲間には悪いが、たった60日分では船の性能が生かせない。火星往復にも足りないようでは、武装が良くても小娘帝国の勝手を止めきれないわね。このお粗末な生命維持装置は、いずれ改善しないといけないがどうすれば良いのかな。何年も宇宙に出ていられる小娘帝国の奴らの生命維持装置はどうなっているんだ?帝国だからって、大勢の奴隷から血を絞っているとは思えないし、HLAが合わない。いや、クローン奴隷なら合うな。しかし、人間のクローンだって簡単じゃないわね。それに大量の血を長期間保管するのだって難しそうだわ。保冷庫は重くて嵩張るし。いけない、考え事してないで寝ないと。聴覚に睡眠音波入れてタイマー...zzz」
目覚まし装置:「キーンコーンカーンコーーン...」
スージー:「おお、さわやかな目覚めだこと。これだけ寝ても背中は痛くないし。体内タンクの血液状態はどうかしら。...しめしめ、寝たから2日分浮いたな。余裕があるから、血液補給作業は標的捜索を済ませたあとでも十分間に合うわね。過去のこけし船の性能情報からすると、奴らはひたすら減速を続けているはずよ。高出力のイオンエンジンを噴かし続けているなら電磁ノイズ探知にかかる予定だけど。どれどれ、受信データからデータベースにある恒星電波の成分をマスクして...。ふむふむ、たぶんこれね。指向性アンテナで詳しく追いかけると、うん動いてる。よし、この動きに対して同航できる軌道は...おお、楽勝楽勝。捕まえたね。4日目に仕掛けられるわね。さて、血液補給にかかろうかな。腹のハッチを開放。補給ホース接続。気泡除去確認。50人の仲間に感謝のお祈り...。よし出来た。しばらく暇だから武装の点検でもしておくかな」
(”みくら” 艦首口腔大エアロック)
冬子:「持ってみた感じはどうかしら?」
リホ:「バランスは良さそうですね。本気は出せませんが軽く投げてみましょう」
エリ:「練習用ネット張り終わったわよ。危ないから絶対ネット外さないでね」
リホ:「では慎重に、振りかぶって第一球...いかがでしょう?」
冬子:「待って。視覚記録スローで再生してるから...ふむ真っ直ぐ飛ぶわね。私としては満足な出来だわ。あとは、繰り返し練習して勘を掴んでね」
リホ、エリ:「それしかないですよね。やってみます」
(愛国民兵会戦闘艦”スペースシェリフ・ワン” vs ”みくら”)
スージー:「レーダー映像が鮮明になってきたな。そろそろ望遠で見てみるか。お、いたいた、予想通り地球に尻向けて減速続けているわね。おかしな格好。まさにスペースディルドね。よくあんな恥ずかしい船で宇宙飛行が出来るわね。あいつら一体どういう神経してるのよ。同じサイボーグと思われたく無いなあ。さて、戦闘記録を本部に自動送信するよう設定して...よし。次は...。一応先制攻撃できない決まりだから、無線で拿捕通告か。英語通じるよね。英語も通じない猿だったら即刻皆殺しでも、ってこないだの奴らは通じてたか。あー、こちらは愛国民兵会の民間宇宙保安官である、そこのこけし船返答せよ。おい聞こえているか格好悪いこけし船、エンジンを停止して臨検を受け入れよ。これは警告だ、無視すれば直撃する。それっ、前方500mにミサイル発射」
朝子10世:「いきなり何をするの!。こちらは”みくら”艦長の朝子10世よ。我々は宇宙条約を遵守して活動中よ。いったい何の権利があって妨害するの?」
スージー:「お前たちの船が積んでいると思われる冥王星の氷は盗掘品である。こちらは冥王星の地権者から所有権行使に関する委任状を取得している。返還に応じないならば、窃盗現行犯に対する正当防衛として実力行使する」
朝子10世:「本艦が積載する冥王星の氷は天然物を採取し原始取得したものです。無主物を初めに採集した者が所有権を得るというルールは万国共通ですよね。そちらが所有権を主張するなら証拠を示して貰いましょうか」
スージー:「エアロックを開けて臨検を受け入れなさい。謄本は持参します」
朝子10世:「それ程言い張るならとりあえず交渉に応じましょう。艦首の大エアロックを開けます。理美、口腔エアロック開放よ。(体内通信)口車に乗ってきたわ。リホ、エリ、マオ、ミキ準備は良いわね?交渉は私がするから、いざというときまで居ないふりするのよ。(/体内通信)」
理美:「エアロック減圧します。0.1気圧,0.5、ゼロ、口開けます」
スージー:「(素直に開けたわ。ずいぶん減圧の早いエアロックね。ふう、一人なのが知られなくてよかった。直接対決なら絶対勝てるわ。このオッパイバズーカで威嚇すれば、言うことを聞くに決まっている)操縦席減圧、生命維持装置内圧チェック...異常なし、背面推進器始動」
理美:「あ、何じゃアレは!。モビルスーツ?にしては小さいか。アレがサイボーグの体なの?。でかいなあ。日常生活はどうするのかしら?」
雀奴:「近衛大隊の重装甲ボディーならアレに近い大きさよ。あり得るわ」
理美:「すると、あれも、着脱式なんでしょうか」
雀奴:「さあねえ。捕まえて調べてみれば判るけど、手強そうねえ」
(”みくら” 艦首口腔大エアロック)
スージー:「勝手にハッチを閉めるんじゃないわよ。この胸を見なさい。これは、バズーカ砲だからね。おかしな真似したら船ごと破壊するわよ」
マオ:「(オッパイバズーカ?。でかいから生命維持装置は頭部なのかな。それともリモート体?。とにかく撃ったらエキシマで防がないと。目が離せないわ。他の女の子の胸をじろじろ見る趣味は無いんだけどなあ)」
朝子10世:「体格にものを言わせて脅すつもりですか?正当な権利を言い張るのなら、謄本とか言うのを見せて貰いましょうか」
スージー:「これよ」
朝子10世:「なになに、登記簿謄本、なるほど書式は本物ね。所有者、パーシバルローウェル記念財団、ほお、世界的に有名な財団だわね。で、(社)愛国民兵会を権利者として地役権を設定、目的、地下資源採取。あのねえ、ローウェル財団は100年以上権利保全行為をしていないでしょ。そもそも現地に行ったのは我々が人類で初めてなんだからね。おたくの国の民法なんてよく知らないけど民事時効の国際相場は20年よ。いくら何でも100年放置した権利をいまさら譲渡なんて出来ないわよね」
スージー:「権利は権利よ。けちを付けるなら船体に穴を開けるわよ」
朝子10世:「私らも遊びじゃないのよ。こんな古証文で譲れるかって」
スージー:「そうかい。これでもなの!。オッパイバズーカ発射!」
朝子10世:「防いで!。投石もよ」
マオ、ミキ:「氏ね氏ねビーム、逝け逝けビーム」
リホ、エリ:「くらえっ」
スージー:「なに、搭載艇か。このっ、オッパイ連射...あっ」
朝子10世:「ストライクね。よくやったわ。発射口近くで爆発したわよ。リホ、エリ、倒れている間に重機で取り押さえなさい」
マオ:「殿下、破片は大丈夫ですか」
朝子10世:「いくつか刺さったけど、大した被害はなかったわ」
リホ、エリ:「推進器始動、微速前進」
スージー:「う、手足が動かない。しまった、動力ケーブル破損か。頭部予備電源は...無事ね。この向きなら行けるわ。首ロック解放。首緊急脱出ロケット点火!。おまえら、次は容赦しないわよ」
ミキ:「あっ、首、首、...そんなバカな。あいつ脊髄無しかや」
マオ:「なんなのあいつ?。口の利き方はロボットじゃなかったのに」
朝子10世:「格納庫内は無線が届きにくいからリモートじゃないわね。あの首は間違いなく本体でしょう。とにかく早くここを離れるわよ。首を回収する間は攻撃してこないでしょう。理美、口閉めて、発進よ」
(取り残された”スペースシェリフ・ワン”)
スージー:「やれやれ、やっと帰ってきたわ。首だけで飛ぶのは難しいな。投石にやられるなんて想定外だったわ。理屈は判っていてもまだまだね。胴体に残っていた血液16日分が痛かったなあ。すぐ帰還するしかないか。こんな制限さえなければ、この船なら追いつめて攻撃できるのに。首だけで操縦できるよう改良して貰ったのに帰るしかないなんて残念だわ。ま、あいつら投石で抵抗するくらいに武装が貧弱だと判ったのは収穫かな。ああ、いらいらしても仕方ない。この仕返しはあとでゆっくり考えよう。まず、船内クレーンで首を獄門台に固定しないと飢え死にしちゃうわ。BCIメニュー、先に船内気圧確認、で船内クレーン、前へ2m。よし掴んだわ。後ろに2m、獄門台ソケット開、下に1m、よし入った。首ロックよし。獄門台応急血液交換装置起動。ふう、一安心ね。さて、最短帰還航路計算、地球分離軌道まで自動操縦設定。発進」
(”みくら”会議室)
朝子10世:「みんな、今日は被害も少なく、よくやってくれたわ。だけど、次は今日のような奇襲が通じなくなってしまったわね。そこで、地球帰還後直ちに対策が出来るよう工場衛星に要望を送ります。今日の経験や自称民間宇宙保安官が残した体に関して意見を出してね」
翡翠:「発射直後にエキシマで撃破したバズーカ弾ですがかなり強力です。破片を調べたところ外壁に命中していたら実際穴が開いたと思います。今後はエアロックに引き入れるという作戦はやめた方が良いでしょう」
朝子10世:「船外で防ぐ方法が必要ね」
瑪瑙:「本国に照会したところ、愛国民兵会が委任状集めをやっています。各地の小惑星や矮惑星の発見者に地役権の譲渡を交渉している模様です。天文家のブログなどで何件も似た話が出ていますので間違いないです」
朝子10世:「つまり、他の資源収集艦も襲われる可能性がある訳ね」
雀奴:「ヘッドフィギュアの眼球をエキシマ組み込みにしてはどうですか。降下艇や迎撃艇の100倍の容積がありますので威力は上げられますよ。私は光源の技術に詳しくないけど放熱や電源の容量は余裕ですよね。アイビームと同じ感覚で使えるので訓練が要らないのも利点です」
タラ:「ヘッドフィギュアには死角があります。側面砲も要りませんか」
雀奴:「操舵員の腕の神経は操艦に使うので、別に砲手を配置しないと。操艦と射撃が別人による場合は動きを合わせる訓練も必要になります。眼球なら搭載してすぐ使えて重量増加も少なくて済むと思うのです。旧型の資源収集艦だと砲塔は重量増加の影響が大きくなりますよね」
朝子10世:「なるほど。眼球のアイビーム化は最優先課題ね。これは私から華子に至急開発するよう直接頼んでみるわ。砲塔の設置は増員や重量の問題もあるので本国に考えて貰いましょう。エアロックに残された体については何か判ったかしら?」
冬子:「自爆装置があるといけないので慎重に調べました。だいぶ手間取りましたが、腹の点検口を開けることが出来ました。自爆装置はありませんでした。一応、民間仕様というのは事実ですね。首が飛び去ったことと頭部の大きさから、脊髄が無いのは確かでしょう。脊髄が無くてあれだけ滑らかに動けるのは、私と比べて羨ましいですよ。北米連は医療・福祉用BCI先進国なので我が国より優れているのかも。大柄な胴体を生かしてかなり高性能の計算機が搭載されています。その計算能力でBCIが集めた運動イメージを精密に変換するようです」
朝子10世:「まだ推定ね。ソフトウェアの解析は難しいわよね」
冬子:「データ量が多いので私がこの場でやるのは難しいです。とりあえずデッドコピーを宙軍研究所に送付して調査依頼をしました。あの体の変わったところとしては、大量の血液が搭載されていることです。保冷式の大きなリザーブタンクがあり、暖めて首に送るようなのです。体が大型な理由は武装のためよりこのタンクの容積が支配的と思います」
朝子10世:「大量の血液か。おそらく生命維持装置の問題よねえ。回収して保冷しておいてね。持ち帰って専門家に分析して貰うから」
冬子:「既に保冷しました。私では鉱物が専門ですから難しいので」
朝子10世:「手足の機構はどうかしら」
冬子:「機構自体は外国のロボットによく見られる通常の電動式です。我々のような超電導磁石鋼によるリニア駆動は使っていません。ただ、巨大なので構造全般にゆとりがあり強度や力は侮れません」
朝子10世:「ふむ、およそ全体の構造が見えてきたわね。大きめのロボットボディーを母体に手の込んだBCIで動かしてる訳だ。大きくなった主な原因は生命維持装置に何らかの制約がありそうだと。そこに弱点はあるものの、ごつい体ならではの強さは見た目通りか。近衛大隊の陸戦装備なら対抗できるけど重過ぎるから艦に積むのは無理ね。肉弾戦になったら重機しか対抗手段は無いか。まず、近づけないことかな。他には何か無いかしら?。無いわね。じゃあお疲れさま」
(20日後、地球衛星軌道 高度1000`)
スージー:「間に合った。どうにか飢え死にせずに済みそうだわ。武装・長距離推進ユニット保安装置起動。係留信号状態よし。スペースシェリフ・ワン分離。姿勢制御、大気圏突入準備体勢。次は民間航空局への着陸申請か、縄張りが色々で面倒ねえ。ハロー、砂漠の民間宇宙港管制...早く出ろよ。もう」
砂漠の民間宇宙港管制官:「着陸のご予約ですか」
スージー:「こちらスペースシェリフ・ワン。お願い、急いでるのよ。生命維持の残量ががやば目なの」
砂漠の民間宇宙港管制官:「はいはい、でわ2時間後で良いですか?」
スージー:「高度1000`からだから早すぎるわ。3時間後にして」
砂漠の民間宇宙港管制官:「3時間後、ええ、なんとか空きますよ。急ぎすぎて、大気圏突入角度深くしすぎないようご注意を。でわ」
スージー:「わかってるって。暇なくせに勿体付けちゃって。よし、減速開始。降下進路確認。...減速よし。姿勢変換、突入体勢。機首冷却剤注入開始。高度120`。大気抵抗検知。機首温度400度。主翼変形、制動開始。翼面温度300度。まだ良いわね。翼面350度か、よし翼面冷却剤注入。うん下がってるな。速度もう良いかな。よし、主翼変形、大気圏飛行体勢。舵効き出したわ。一安心か。とりあえず、生還しないことには次の手が打てないからね」
砂漠の民間宇宙港管制官:「スペースシェリフ・ワン、進路良好です。そのまま直進で着陸どうぞ。会長が出迎えに見えてますよ」
スージー:「あ、ありがと。会長怒ってるかな。ボディ作り直しだし。まあ仕方ないわね。滑走路視認。エアブレーキ開きます」
砂漠の民間宇宙港管制官:「砂が舞ってますが、見えるんですか」
スージー:「赤外線でばっちり見えてるわよ。ほい、タッチダウン。逆噴射0.5秒。車輪制動。...よし止まった」
愛国民兵会会長:「とにかく戻れてよかった」
スージー:「済みません。投石で奇襲を受けて首だけしか帰れなくて」
愛国民兵会会長:「気にするな。資金には困っておらんぞ」
スージー:「体の再製造、お願いします。首を降ろしていただけますか」
リンダ:「私にやらせて下さい」
スージー:「あら、リンダも来ていたの。じゃあお願い。獄門台ロック解除。重いから気を付けて。落とさないでね」
リンダ:「よいしょ。大丈夫です」
愛国民兵会会長:「すぐリムジン後席の獄門台にセットしてやってくれ。スージー、体がなんとかなるまで獄門台での暮らしだが辛抱してくれ」
スージー:「自業自得ですから。でも、次は失敗しませんよ」
リンダ:「やっぱり一人じゃ難しいのではないですか?」
スージー:「またその話をしたくてわざわざ出迎えに来たの?この無惨な姿を見ても?。まあ、約束だから後でよく話し合いましょう」
(静止軌道工場衛星 宇宙船ベイ)
雀奴:「ゲートくぐりました。回転運動合わせます。ゲート閉じました。降下開始。コリオリ補正サイド噴射。やっぱり帰りは軽いわあ。ヴァギナルハッチオープン。大股広げて係留ポールちゃんいらっしゃーい。キター、あへあへ、ずっぽし。チョイ制動。ふう、止まったわ。あーあ、カロンから200d補給して以来の快感かあ、長かったわ」
朝子10世:「快感に浸っているところ悪いけど口開けて。雀奴」
雀奴:「あ、済みません。ベイ気圧確認。0.2安定。口開けます。搭乗橋安全確認。でわ、んべ−。リモートボディリンク切ります」
朝子10世:「総員退艦。とりあえずお疲れサマー」
(”みくら”口腔エアロックから伸びた舌の上)
華子:「10世!。探検成功と帰還おめでとう。でも賊が出たんだって?ご注文の艦載アイビームは突貫でかからせたわ。怪我しなかったの?」
朝子10世:「かすり傷はあるけどどうでも良いわ。メンテ時期だし。賊って言うのかな、あっちは自称保安官で私らを賊呼ばわりしたけどね」
華子:「アイビームは次の運行に間に合わせるからもう危い事はしないで」
朝子10世:「地上の情勢も怪しいから当面特別任務は計画出来ないわ。アイビームの搭載はメインベルトに定期運行の資源収集艦を優先して頂戴」
ハル:「お母さんご免。軌道で見つけたのに燃料切れで止められなくて」
冬子:「200`の低軌道だったんでしょ。無理して落ちなくて良かったわ。私は直接戦闘に加わっていないから危ないことも全然なかったしね。それで、お望みのカロンの天然氷も無事よ。私物枠で地上に降ろすわ。貴女は当分任期だから、私がお店の冷凍ケースに入れておくわね」
リホ:「直接戦ったのは私たちだけど、冬子の作った砲丸が効いたのよ」
エリ:「そうそう、アレの出来がよかったから、撃退できたの。丁度あいつがオッパイバズーカ撃った瞬間に発射口へストライク。それで、胴体が自爆のようになって首だけで逃げていったのよ」
ハル:「オッパイバズーカですか。そんな武装は無理って話だったのに」
冬子:「あいつは脊髄無しで生命維持装置も頭部に積んでいたようなのよ。でも、あいつがあれだけ体がよく動くって事は、私ら脊損者には光明よ。宙軍研究所に送った身体制御ソフトの解析結果を聞くのが楽しみだわ」
ハル:「お母さんの体が良くなったら、一緒に遊んでね」
冬子:「はは。子供みたいな事って。そういえば、みどりは?」
ハル:「軌道パトロールに出ているの。2時間で戻るわ」
冬子:「そう。降下前に会えると良いけど。きわどい時間ね」
(北米連 大統領官邸)
コメー:「愛国民兵会、しくじったそうですね。やはり無謀だったのです。一人は出撃前に力を制御できずに殺人を冒した挙げ句自殺しましたね。残る一人も宇宙では通用せず、負けて首だけになって帰った来ました。全滅じゃないですか。人体の機械化改造なんてやってはいけなかったのです。ハゲタカ派教会までが後押ししたので承認しましたが、もうやめましょう」
ヤブー:「完全な失敗ではないよ。卑怯なだまし討ちにあったのだ。たった一人で数人のサイボーグ兵を相手にして一応生還したのだよ。もし、普通の宇宙飛行士だったら捕まるか死んでいたところだ。小娘帝国の宇宙艦がろくに武装を持たないのが判ったのも成果と言える。これで我々の月基地がやられる心配をせずに本国をたたけるぞ」
コメー:「向こうが全く世界秩序に従わないなら、攻撃するのは賛成です。でも、それには我が国の既存軍事力で十分です。サイボーグは要りません。既に改造してしまった者の補修は仕方ないですが、戦闘はやめさせて下さい。もちろん新たな改造手術への支援は却下しましょう」
ヤブー:「国防長官はなんと言うかな。手術自体は成功しているんだよ。失敗は、ろくな訓練もせずに国境警備で腕試しなんかやったことだけだ。宇宙でのことも、一人が欠けたまま作戦を強行したせいと言うことになる。つまり、国防総省や宇宙局は何も失敗をしていないことになるな。愛国民兵会が補充の志願者を連れてきたら、受け入れたがるだろう。自らリスクを冒さずにサイボーグの実戦データが手に入るんだからね」
コメー:「正規軍にサイボーグの導入なんかできっこないのです。そんな実戦データの追加に意味はないですよ。もう充分でしょう」
ヤブー:「君の意向は明確に伝えるが、強制はできないよ」
コメー:「お願いします。では失礼」
(愛国民兵会会長の自宅)
愛国民兵会会長:「儂はリンダの志願については賛成・反対半々だ。お前たちの話し合いを良く聞いて、納得するまでは決断できない。一応、賛成反対それぞれの理由は言っておこう。まず、スペースシェリフ・ワンの定員は本来3人だから、1人では性能が十分活かせない。交代で休息が出来ないせいで、小娘帝国の主な活動範囲であるメインベルトに到達できない。だから、せめてもう1人はサイボーグが居た方が良いに決まっている。そしてHLAが適合する志願者は簡単に見つからない。これが賛成理由だ。但し、だからといって、そのもう一人にリンダが相応しいかどうかは別だ。
リンダはまだ大学2年生だから、知識は工学博士であるスージーに遠く及ばない。国境警備に行ったこともないし、もちろん人を撃った経験なんぞない。まだ若いから、今後ビル以外の男を好きになる可能性も高いだろう。もしそうなったら、サイボーグになったことを後悔するぞ。現在の技術では体を元に戻すことは不可能なんだからな。これが反対理由だ」
リンダ:「私はメカフェチです。ビルに惹かれたのもサイボーグになると聞いたからです。そんな私が、普通の男性に恋をすることは到底考えられないのです。経験不足は仰るとおりです。その代わり若い分だけ新しい体に適応し易いと思います」
スージー:「本当なの?。ビルの件で妄想にとり憑かれていない?」
リンダ:「両親や弟たちに確かめていただいても結構です」
スージー:「仮に貴女がメカフェチでサイボーグの体で暮らすには支障がなくても、手術に耐えられるかしら。貴女は、たかがこれを見ただけで青ざめていたでしょ。全身麻酔は脳に負担がかかるから、手術はなるべく部分麻酔で済ませなければいけないのよ。その時は図面どころか、直に自分の頭皮や手足が切り取られて行くところを見ることになるわ。耐えられずに気が狂ってしまったら、サイボーグになる前に人生が終わってしまうわ」
リンダ:「貴女の手術の録画を繰り返し見て慣れます。既に1回見ましたが、ゲロは吐きませんでした」
スージー:「そう、吐かなかったのは上出来よ。だったらいっぺん一緒に見てみましょうか。機械体への適応力に年齢が関わるのは確かだけど、個人差の方が大きいのよ。手術映像を見たときに受けるショックへの反応は、その面の判断にも参考にできるでしょう」
愛国民兵会会長:「メカフェチだという話が本当か、家族に会って確かめるのは儂がやろう。それから戦闘員に相応しいかどうかは、国境警備に連れていってみればすぐにわかる。この2点をクリアできれば、後はスージーの判断に従うことにする」
スージー:「ではすぐに取りかかりましょうか。ここにビデオプレーヤーを持ってきて下さい」
愛国民兵会会長:「これで良いか?。画面が小さいから迫力が欠けるかな?」
スージー:「今日はそれで良いですが、大きいのを用意していただいた方が確実かしら」
愛国民兵会会長:「うむ。3日以内に持ってこさせよう」
スージー:「じゃあ、早速手術の第一段階から見ましょうか。開頭してBCIを取り付ける場面ね」
リンダ:「...はあ、スキンヘッドやむき出しの脳は、正直苦手です」
スージー:「それが大好きで興奮してしまうって人もいるのにね。いい?、想像しながら見るのよ。写っているのが他人じゃなく、自分が剃髪・開頭されていると脳内変換しなさい」
リンダ:「こうかな。最後に頭が金属で覆われてケーブルが繋がってしまえば、全然気持ち悪くないんです。ただ、どうしてもそこに至るまでの過程には鳥肌が立ってきてしまいます」
スージー:「これが平然と見られないようじゃ、手足や首の切断にはとても耐えられないわよ」
リンダ:「あーあ、初めから機械体で生まれてきていれば苦労しないのに」
スージー:「ふーん。メカフェチってそんな感覚なのか。そお。それなら方法はあるな.。スキンヘッドと脳むき出しのショックを受ける時期を分散すればリスクが下がるでしょう。あらかじめ頭を永久脱毛して金属外皮に見えるような入れ墨をしておいたら良いわね。それなら、切開のときは手術じゃなくメンテナンスと思って受け入れやすくなるわよ。手足と首も金属外皮風に入れ墨しておけば切断じゃなく取り外しに感じられるかもね」
リンダ:「やってみます。手足は例の経済特区に行けば本物のメカに換えられるそうです。今まではお金が無くて出来なかったけど、このさいですから会長に頼んでみます」
スージー:「なるほど。全く同じでないにしても敵の体の様子も判って良いわね。それに、あの帝国製の手足は着脱が容易らしいからBCIの調整でも手戻りが効くわね。やるなら、帝国に気づかれて警戒されないよう、頭よりまず手足を先にしなさい。手足の機械化なら一部では珍しくないから、最終的に貴女が使えない事になっても困らないし。頭の永久脱毛と入れ墨は志願が認められてサイボーグになることが決まってからにしなさい。いくら入れ墨で外見を金属風にしても触感はスキンヘッドだから一生耐えるのはきついわよ」
(宙軍研究所 特殊身体制御ファームウェア研究部)
冬子:「こんにちわ。でかぶつの内容は読めそうですか?」
研究員:「あ、冬子特務大尉。帰還と昇進おめでとうございます。例の身体制御らしきデッドコピーの中身、初めは手こずりましたがだいぶ解ってきました。機種はメジャー品なので逆アセンブラはかかりましたが、使い慣れたCPUじゃないでしょ。普段使っているやつならIOポート配置が大体同じだからソフトだけ見れば良いんですけどね。余所の製品なので現物のハードを見て、配線からポート機能を割り出す必要がありました。結局、はかどり始めたのは、あなたが降ろしてくれた実機をバラしてからでしたよ」
冬子:「ご苦労様。面倒なの頼んじゃって悪かったわね」
研究員:「どういたしまして。いつもお世話になっているお得意さまの依頼は最優先です。なにせ、私共の給料の半分近くがあなたたち特例志願兵の自己負担金から出てるんですから。それに、ポート配置が判ってしまえば、こいつはそれほど難しいソフトじゃなかったですよ。プログラムの部分は意外と少なくて、デッドコピーの大半は運動マッピングデータでした」
冬子:「私らの体の改良に繋がりそうかしら?」
研究員:「健常者のBCI信号と運動パターンを対照した大量のデータは貴重なものです。参考になることは確かです。ただ、脳の出す信号は個人差が大きいので即流用は出来ません。仮に貴女の身体制御CPUを無理矢理大容量化してコピーを入れても同じ動作は出来ません。それにこのデータの主は脳を上から半球状に覆うように大量の電極を付けています。我が国で使っている局所BCI電極と比べて入力チャネル数が桁違いに多くなります。うちの頭蓋骨形状でこれほどのチャネル数を収めるには電極素子をもっと小さくしないと。それにCPUの内部記憶素子数が全く足りないので外部DBサーバーに繋ぐ必要があります」
冬子:「宇宙工場の医用電子部品部門に脊損仲間が居るから電極の改良を頼んでみるかな。外部サーバーを使う構成で、接続が切れたときには従来の動作に切り替えできるかしら?」
研究員:「切り替え時に数秒間体の動きがぎくしゃくしても良ければ一応出来ますよ。但し、他人の体のデータですから、それに合うように脳信号を出す訓練が必要でしょう。難しいかも知れませんが、BCI能力が高い貴女なら克服できる気がします。体を大型化するか、DBサーバーを入れたランドセルを背負えば切り替えは無くせます」
冬子:「それは困るわ。私に一番必要な機能は、性感の復活なんですから。宙軍志願のために偽装離婚したので今は内縁ですが、私にはシビリアンの夫が居ます。家にサーバーを置けば性生活が元に戻せるならいいけど、巨体になったんじゃダメだわ。重いランドセルを背負ってセックスするのも、夫が可哀想すぎるわ。それに、宇宙艦操舵員免許の限定を解除して入港操作が出来るようになりたいんですよ。入港操作では係留時に性器の鋭敏な感覚を利用するからそれにも性感が必要です。艦なら高性能DBサーバーが元々ありますからデータ置くだけで済む方が良いのよ」
研究員:「お気の毒ですが、あのデータの主は性器の動作データを収集していません」
冬子:「ガーン!。そんなバカなぁ。健常者のデータなのに。なんてこと。一生性感無しで暮らすつもりで改造手術を受けるなんて気違い沙汰だわ」
研究員:「外国のことは知りませんが、このデータの主は修道女ってやつですかね」
冬子:「まさかぁ。宗教関係者はたいていサイボーグに否定的って話だわ」
研究員:「慰めになるか判りませんが、手コキならすぐに改善できますよ」
冬子:「とりあえず、それだけでも欲しいわ。自己負担分の見積もりお願いね」
研究員:「かしこまりました。面白いテーマなので精一杯勉強します」
(経済特区 メタロリホスピタル)
例のだるまっ娘好き整形外科医:「どのようになさいますか?」
リンダ:「四肢全部の機械化でお願いします」
整形外科医:「(おお、ラッキー)かしこまりました。付ける手足の機種はどうしますか?。腕機能併合型といって足だけ付ければ腕の役目も果たすという便利な機種もありますが」
リンダ:「(銃が撃てないと困るのよ...)腕に銃を組み込むことは出来ませんか?」
整形外科医:「貴女のお国では銃の所持は自由なのですね。あいにくここでは禁じられています。また、仮にここで組み込めたとしても帰国時に武器輸出禁止法違反で捕まって死刑ですよ」
リンダ:「そうですか。では普通の手足と同じ型にして下さい」
整形外科医:「外装はどれになさいますか?。通常皮膚系と金属系に大別されます。色合いはそれぞれ各種取りそろえてございます。金属系の下腿はさらに2系統に分かれています。通常の足と同じ型の軟質メタリックと靴不要型といって硬質でピンヒールブーツ一体のものがあります。そちらのお国では室内で靴を脱ぐ習慣がないせいか靴不要型を選ばれる方が多いですね。予備機をお求めの方ですと室内用と外用で違う型に付け替える方もいらっしゃいます」
リンダ:「(ピンヒールは砂漠で困るわね。)四肢ともニッケルカラーのメタリックにします。下腿は軟質の通常足型でお願いします」
整形外科医:「離断した手足の処理はいかが致しましょうか?。3通りの方法があります。最も多いのは動態保存といって、人工血流装置に接続し生きたままお預かりする方法です。後で気が変わったと言うときに、一応再接合の余地があり成功率は70%ほどです。このため、定期的に神経刺激を与えて形状と運動能力を維持します。費用は日割り10ドルです。次に多い方法は剥製にして記念品として持ち帰る方法です。費用はサービスです。3番目は、冷凍保存で現在のところ再接合技術はありませんが長期保存が可能です。費用は月額100ドルになります。保存費用はいずれも初年分を前払い願います。なお、保存装置を買い取りされれば、持ち帰って保存されることも可能です。但し、その後の保管状況によっては再接合を引き受けかねる場合もございます」
リンダ:「(会長は牛を売ってお金を工面してくれたんだ。少しでも返さなくちゃ)最も経済的な方法は剥製ですね?」
整形外科医:「それがそうでもないんですよ。動態保存して売却先を探すのがおおむね得なんです。フェチ用や部分モデル用、移植用、食肉用として根強い需要がありまして、特に足は売りやすいんです。貴女は白人だし、若い女性ですから腕の買い手だって最もつきやすい部類だと思います。もし売却をお考えなら、最も用途の自由が利く動態保存がお勧めです。当院で動態保存をご利用の場合はオークションの登録と決済サービスを無料で行います」
リンダ:「(げえぇ。移植はともかく、フェチのおもちゃとか食肉って、なんて不道徳な)うー、少しでもお金を浮かせたいので、四肢とも売却前提で動態にして下さい」
整形外科医:「かしこまりました。では、前払い費用の明細はこのように...」
(北米連 南部国境地帯の砂漠)
愛国民兵会会長:「リンダ、わざわざあの国に乗り込んで手足を切断し機械化してきた覚悟は良い。だが、儂はまだ完全に認めたわけではない。実際にお前の力で犯罪者を捕らえて実力を見せろ。それから、その服装はなんとかならんのか?。人工とはいえ太股丸出しは他の若い者に悪影響がある。不法越境者と格闘になったらパンツまで見えてしまうし、劣情を誘って強姦される恐れもあるぞ」
リンダ:「済みません。この足は太股が燃料電池の換気部になっていて蒸れると出力が低下します。そのために、ズボンやロングスカートを履くと力が弱くなるという問題があるんです。それに、この手足は輸出用の低出力型とかいうのですが、それでもかなり力は強いです。格闘になっても、空きっ腹を抱えたパニック人ごときに強姦されてしまう恐れは無いと思います」
愛国民兵会会長:「そうか。足の構造上やむを得ないのか。ならば服装は直さなくて良い。儂はあの帝国の奴らが我々を愚弄する目的であんな服装ばかりしているのかと思っていた。そんな技術的制限をきちんと守っていたのだとすると、侮ってはいけなかったな。他の若い者には儂から良く言い聞かせておくから、今後もミニスカートで警備について宜しい」
リンダ:「スージーさんは、ここで会長に警備参加継続を認められたら推薦してくれるそうです。そうなったら、頭を永久脱毛して金属外皮風に入れ墨しますので劣情を招く心配も減りますよ」
愛国民兵会会長:「一度で認めてやれるかはパニック人次第だな。よし、ジープに乗れ」
会員の運転手:「金属外皮の手足ってのも結構エロチックなものだなあ、リンダ」
愛国民兵会会長:「こらっ。さっき注意しただろう。余計なこと考えずに、前を見て運転せい。そもそもだな、このリンダはメカフェチだ。お前なんか相手にされんぞ」
会員の運転手:「それはザンネン。リンダみたいな美人とつきあえるなら俺も志願しようかな」
愛国民兵会会長:「バカを言うな。あのビルすら失敗したのだ。お前のような軟弱者ではダメだ」
会員の運転手:「済みません。でもねえ、美人ばかりが2人もサイボーグになるなんてねえ。スージーさんといいリンダといい勿体ないじゃないですか」
リンダ:「そう言われてもピンとこないんですよ。初めから機械の体で生まれた方が良かったので。あっ!。右前の方にぼろを着た人影が見えましたよ。不法越境者じゃないですか?」
愛国民兵会会長:「止まれ。儂には良く見えなかったが、確かめてみよう。リンダ、一緒に来い」
会員の運転手:「俺も行きます」
愛国民兵会会長:「お前は車の番をしろ。衛星携帯電話で指示されるまで絶対に動くな」
不法越境者:「止まった。気づかれたか。逃げなくちゃ。神様、巨大ロボが出ません様に」
愛国民兵会会長:「どうせ奴らは腹ぺこだ。武器がないか安全を確かめながらゆっくり追え」
リンダ:「この足なら、30`で走れます。大きく先回りして物陰から武器を確かめます。危険が無さそうでしたら、そのまま挟み撃ちにしましょう」
愛国民兵会会長:「わかった。だが無理をするな。お前はまだサイボーグじゃないんだぞ」
リンダ:「...砂地で走っても楽勝ね。やっぱりピンヒールはやめておいて良かったわ。よし、先に出た。サボテンの陰から覗いて武器を確かめようか。そーっ、はは、丸腰だ。貧乏人め。そこのあんた!。どこに行くつもり?。ここはあんたの国じゃないでしょう?」
不法越境者:「へへ、例の自警団かとびびってみたら、ミニスカのお嬢ちゃんか。手足を銀色に塗るのが最近のファッションなのかい。エロくいかすじゃないの。でさ、別にあんたに迷惑をかけるようなことはしていないんだ。邪魔しないでくれよ」
リンダ:「お黙り。犯罪者。私らは愛国民兵会よ。おとなしく帰らないなら捕まえるわ」
不法越境者:「はあ?。あんたが俺を捕まえるの?。どうぞどうぞ、やってみてよ」
リンダ:「バカめ、こうしてやる」
不法越境者:「い、痛てててててて。そんなバカな。この嬢ちゃん本当に機械の手足?。あう、痛あい、ゆ、許して、ご免なさい。謝るから見逃して下さい」
リンダ:「見逃せだって。冗談じゃないわ。お前らのせいで街の景気が悪くなってるのよ。すぐ素直に帰らなかった罰よ。不法就労が出来ないように腕の一本も折ってやろうかしら」
愛国民兵会会長:「捕まえたか。リンダ、よくやったぞ。痛めつけるのはそれ位で良い」
不法越境者:「お、お助け、お願い、腕は折らないで」
愛国民兵会会長:「いいか、この国じゃ現行犯は痛めつけるどころか撃ったって良いんだ。お前は最初の警告を素直に聞かなかったな。その時点で正当防衛って訳だ。腕を折るのは勘弁してやるが、お前を警察に突き出す。豚箱でゆっくり反省しろ」
リンダ:「会長、ちゃんと一人捕まえましたよ」
愛国民兵会会長:「うむ。とりあえず明日からも警備に参加してよい。だが序の口だ。武器を持ったやつへの対処ぐらい見てからでないと、あの話は決められんぞ」
リンダ:「はあぃ。次は銃持った奴でも出ないかな」
愛国民兵会会長:「調子に乗るな。サイボーグになる前に、大怪我をしないことだ。用心深さが足りないようではスージーの足手まといになるぞ」
(愛国民兵会会長の自宅)
スージー:「リンダ、どうでしたか?」
愛国民兵会会長:「うむ、勇気や行動力はまあ良いだろう。ただ調子に乗るたちだな。手足を機械化したくらいであの調子では、もっと大きな力を得たときが心配だ。慎重さが足りないとお前が困ることになる。まずければ、やめさせても良いぞ」
スージー:「改造手術を乗り切って宇宙に出るまでには相当な勇気が要ります。私自身も、次は失敗しないように地上で十分な訓練を積むつもりでした。基本的に素直な娘ですから、その間に欠点は直せると思います」
愛国民兵会会長:「うむ。では、リンダが相棒で構わないんだな?」
スージー:「総合的に見て、今得られる志願者の中ではリンダが最適でしょう。但し、会長の仰るような心配もあります。決定を伝えるのはぎりぎりまで待ちましょう。国防総省秘密施設の資材が整うまでには、まだ2ヶ月近くかかりそうな話ですよね。決定を伝えて、頭皮の準備をさせるのは2週間前で十分だと見込んでいます。それまでは、国境警備で会長に厳しく鍛えて貰うのが良いと思います」
愛国民兵会会長:「わかった。儂がなるべく躾けておいてやろう」
(静止軌道第一工場衛星 宇宙船ドック)
華子:「ご注文通り、予備艦”はちじょう”にアイビームを搭載したわよ。それから、もう一隻分のアイビーム眼球も格納庫に積んで置いたわ。だけど、10世といい、部下たちといい熱心ねえ。休暇中断で上がってくるなんて」
朝子10世:「あれから3ヶ月経ったから、そろそろ奴が修理を終えたかも知れないわ。帰還中の”だいとう”が襲われたら艦載兵器無しじゃ大変なことになるからね。今から飛ばしていけば、絶対安全な場所で会合して交換用眼球を渡せるでしょ。手が空いている艦長資格者って、私以外には陛下か東宮様しか居なかったのよ。こんな世界情勢でなければ、お2人の気晴らしに丁度良い短期任務だったんだけどね」
雀奴:「ヘッドフィギュア眼球のアイビーム化は私が強く主張しましたからね。許されるなら、試射はぜひ自分の目でやりたかったのですよ」
冬子:「私は、降下の時に下の娘が出撃中で会っていけなかったので便乗したのです。それに、昔の工場仲間に直接会って詳しく相談したい件もありましたので」
朝子10世:「空荷で全開加速して行きたいから冬子が付き合ってくれて助かったわ。理美は帝大で学ばせたいことがあったし、高加速用操舵員がいないと危険でしょ。心配事をさっさと片づけてからゆっくり休養しましょうね」
華子:「推進剤の積み込みが1000dだけだから飛ばしすぎて切らさないでね。貴女達、しばらく旧型艦に乗っていないでしょ。”みくら”ほど無理は利かないのよ」
朝子10世:「限度は入念に計算して確かめたわ。予定会合点で2割の余裕よ。ということで、すぐ発進するから”はちじょう”をリフトでベイに上げて頂戴」
(北米連大統領官邸)
国防長官:「愛国民兵会の件ですが、破損修復と新たな改造手術の支援を許可願います」
ヤブー:「前回同様、事前に見学させて不安があったら却下するという条件を守らせろ」
コメー:「新たな志願者の改造はやめさせる方向でなんとか彼らを説得して下さい」
国防長官:「国務長官が仰りたいことは解りますが、軍や宇宙局は乗り気なんです。帝国の探検艦拿捕には失敗しましたが、奴らの戦力について貴重な情報が得られたんです。貴女が帝国や友好国に投入した工作員は既に6人も生死不明になって成果がないでしょう。それに比べて、愛国民兵会は自殺者が一人出ただけで情報を持ち帰ったじゃないですか。その犠牲だって彼らの軽率な行動による事故で、国家の出した被害じゃないんですよ」
コメー:「情報を持ち帰った成果は認めます。でも、もう充分でしょう。とにかく体を機械に換えてしまうなんて罰当たりなことは、死ぬより始末が悪いですよ。それに、帝国の戦力が報道の通り貧弱だと解ったのなら、通常戦力で叩けるでしょう。言うことを聞かなければ、機動部隊を送って鉄の雨を降らせてやれば良いんです。そのうえで海兵隊を侵攻させて首都を占領し、帝国を解体すれば良いんです」
国防長官:「貴女の考えの方が余程過激じゃないですか。犠牲もずっと多くなります」
コメー:「背徳的な人体改造の実験をやるよりも戦う方が軍の本来任務でしょう。少々の犠牲だって、神に背く者達に対する見せしめのためなら仕方ありません」
ヤブー:「戦争は最後の手段だ。議会でも帝国との戦争を言い出す者はまだ少数だよ。もし愛国民兵会が小娘帝国宇宙艦の拿捕に成功すれば、小娘皇帝も弱気になるだろう。弱気になったところで脅しをかければ、言うことを聞くようになるかもしれん。そうやって戦争せずに勝つのが理想的なんだ。その方が色々と利点が多いんだよ。やつらの採ってきた宇宙資源を上納させるとか、サイボーグの秘密を開示させるとか。ここは愛国民兵会にもう一度やらせてみるのが得策だ。コメーも承認してくれ」
コメー:「大統領のご判断には従います。でも改造はあと一人だけに制限して下さい」
国防長官:「そんなにご心配なさらずとも、やたらに志願者なんか来ませんよ。愛国民兵会の支援要求は1人だけです。彼らだってそれ以上は用意していません」
(愛国民兵会本部)
愛国民兵会会長:「その頭と手足を見ればいまさらだが、最後にもう一度聞く。リンダ、本当に一生機械の体で暮らすつもりなんだな?。後悔はしないな?」
リンダ:「絶対に後悔なんかしませんよ」
愛国民兵会会長:「よく解った。手術室に獄門台を置いてスージーが立ち会ってくれる。スージーの指導に従って無事改造手術を乗り切るんだぞ」
リンダ:「スージーさん済みません。私のために体の修復を後回しにしていただいて」
スージー:「体を直してしまうと手術室の床が保たないせいだから気にしないで良いわ」
愛国民兵会会長:「よし、行くぞ。スージーの首をリムジンの獄門台に移してくれ」
(国防総省秘密研究施設 手術室)
脳外科医:「スージーさんがスキンヘッドで来たのにも驚きましたが貴女もですか。愛国民兵会の女性は思いきりの良い方ばかりなんですかね」
リンダ:「スキンヘッドではなくて永久脱毛です」
スージー:「この娘はメカフェチなので、体の機械化自体は心配が少ないと思います。ただ、こういうスキンヘッドや脳見せは苦手です。それで、手術のショックを和らげるため頭に金属外皮風の入れ墨をさせたのです」
脳外科医:「そうですか。こちらは手間が省けて助かりますよ。女性の脳手術は準備のときに剃髪で泣き出す方が多いので、たいてい苦労するんです。今回は、あらかじめ手足も外せるようにして来られたので一層楽ですね。しかし、帝国製の手足は良くできていますよ。着脱できて運動もこれほど自然とはね。同じ物を使っている傷痍軍人の協力で調べたんですが、どうしても真似できないんです。特に、断端の神経をつなぎ込む手術がどうしてこんなに精密に出来るのか不思議です」
リンダ:「切断を担当した医師は普通の人間のようでした。神経の接続は見ていません。必ず全身麻酔でやる必要があると言われました。そんなものなんでしょうか?」
脳外科医:「末梢神経の接合なら絶対に部分麻酔で出来ないと言うのはおかしいですね。きっと何か秘密があって、外国人には接続するところを見せたくないのでしょう。それでは、こちらに座って下さい。今日は座位での開頭ですので足は付けたままです」
(半月後、国防総省秘密研究施設 屋外演習場)
スージー:「ここまでの調整は予想したよりも順調だったわね。さすがにメカフェチだわ。二人ともだいぶ体に馴染んできたから今日からバズーカの実射をやるわよ」
リンダ:「首切断はショックでしたが手術さえ済んでしまえばこっちのものですわ。苦労の甲斐あって、今日からオッパイバズーカで標的を撃てるんですね。wktk」
スージー:「生きた標的として戦車を用意して貰ったわ。リモコンだから遠慮は無用よ。但し、ペイント弾だけど向こうも機銃を乱射してくるから避ける練習もすること。この間の失敗はオッパイバズーカ発射の瞬間を狙って投石されたことだからね。2人でカバーし合って、自分が狙われているときは撃たずに避けるのを優先すること。それから、いくらこの体でも戦車に轢かれたらかなり壊れるから接近戦は禁止ね。じゃ、始めようか。技師さん、リモコン動かして頂戴」
技師:「始めます。ターゲット自動追尾開始。機銃発射はじめ」
スージー:「まず避けろ。ぐずぐずするな」
リンダ:「わあ、追尾早くて撃たせてくれないよお」
スージー:「その隙にこっちは、オッパイバズーカ発射!。ち、装甲の厚いところか」
リンダ:「敵が怯んだ隙にこっちも、オッパイバズーカ発射!やりっ!機銃1個沈黙」
技師:「リンダさん、なかなかやるね。よし、全速ジグザグ走行。予備機銃投入」
リンダ:「あっ、あーあ、浴びちゃった。不意打ちはずるーい」
スージー:「小娘帝国の奴らはもっと卑怯な手を使ってくるわよ。油断するな」
(北米連 砂漠の民間宇宙港)
スージー:「今度こそ、奴らの船を拿捕してやりますわ」
愛国民兵会会長:「向こうだって必死に抵抗するだろう。無理はするな。生還が最優先だ。HLAの制限がある以上、お前たちの代わりはなかなか見つからないとことを忘れるな」
リンダ:「抵抗したら、拿捕なんてぬるいこと言わないで破壊しちゃいましょう」
愛国民兵会会長:「儂らは泥棒を取り押さえるための正当防衛を逸脱してはいかんのだ。お前は調子に乗りやすいから気を付けろ。スージーの指示無しに発砲するなよ」
リンダ:「気を付けます」
スージー:「じゃ、行こうか。乗り込むわよ。搭乗したら、すぐ機器の点検にかかりなさい。特に、血液の保管装置は念入りにね。仲間が身を削って供給してるってのを忘れないこと」
愛国民兵会会長:「よし、儂らはレッドナイトの離陸準備だ」
(”はちじょう”艦橋)
瑪瑙:「”だいとう”を長距離レーダーに捉えました」
朝子10世:「向こうは減速体勢で頭が後ろだから進路後方に回り込んで速度を合わせて」
冬子:「旋回します。加速度変化注意」
朝子10世:「音声通信繋いで。”だいとう”聞こえる?。こちら”はちじょう”」
”だいとう”から奈々:「殿下、お久しぶりです。長旅のあとなのにわざわざ済みません」
朝子10世:「お安いご用よ。丸腰で”だいとう”が襲撃されたら高いものにつくからね」
奈々:「こちらの進路と姿勢はどうしますか?」
朝子10世:「こっちが回り込むから、会合までそのまま一定出力で減速を続けていて。位置があったら指示するから、慣性航行に移行して口開けて頂戴。」
奈々:「承知しました」
冬子:「真後ろにつきました。速度差、秒速1`強です」
瑪瑙:「位置関係の監視は引き受けるから、バーニアで少しずつ寄せていって」
朝子10世:「重機でロープ渡す用意をして。一応、加速度変化に注意しながらね」
瑪瑙:「距離100`、速度差0.4キロメートル毎秒ですね」
朝子10世:「距離0.5`で速度差ゼロに持っていって。合ったら受け渡しよ」
(”だいとう”口腔エアロック)
奈々:「どうも。これで一安心といいたいところですが、眼球交換て、どうやるんですか?」
朝子10世:「口腔エアロックの天井を分解して、内側から眼球を外して入れ替えるのよ。当直以外はみんな連れてきたから、まず、手分けして天井を外しましょう」
奈々:「こんなに大勢で、工具が足りますか?」
朝子10世:「そのつもりで、人数以上に持ってきたわ。我々は左半分を引き受けるわね。減速が遅れると進路が地球を外れちゃうし、奴が来るかも知れないわ。急ぎましょう」
奈々:「わかりました。余分の道具、貰います。こっちもみんなかかって!」
(3時間後)
奈々:「どうにか眼球は入りましたが、天井の復元は手間取りそうですね」
朝子10世:「先日、奴がやって来た空域まで1時間しかないわ。そろそろ戻らないと」
奈々:「とりあえず、殿下はお戻りになって迎撃準備をして下さい。後はなんとかします」
朝子10世:「眼球の動作確認だけすぐやって頂戴。済んだら重機の娘だけ残して戻るわ」
奈々:「操舵員、リンク繋いでみて。見えた?。アイビームのプロンプト出るかな?」
”だいとう”操舵員:「目は見えました。プロンプトも出ています。試射はまだですよね?」
奈々:「眼球の真下だけでも天井が塞がらないと漏れ光があったら危ないわね」
朝子10世:「配線は問題無さそうね。じゃあ、なるべく早く撃てるようにして頂戴。会敵したときは、速度を合わせて、死角を無くすために2隻が逆を向くようにするのよ」
奈々:「承知しました。なるべく急ぎます。しかし、厄介なご時世になりましたね」
朝子10世:「あの自称保安官がやっていることは我々から見たら宙賊行為なんだけどね。北米連の法律には触れないらしいし、国連は民事に介入しないからね」
奈々:「北米連の拒否権があるから、国連は何もしてくれないですよね。自衛しかないか」
(スペースシェリフ・ワン)
スージー:「おかしいわね。3時間ほど前からこけし船のエンジンノイズが入らないわ。奴らは、ここらではイオンエンジンで減速を続ける筈なんだけどね。故障かしら。まだこの距離ではレーダーによく映らないし、電波を出して警戒されたくないんだけどな」
リンダ:「電磁ノイズ探知機に恒星電波は映っているから、故障だったら標的の方ですね」
スージー:「故障で漂流中ならチャンスだけど、探知を警戒されているとまずいわね」
リンダ:「3時間じゃ補助エンジンを使ってもそんなに大きく進路を変えれないですよ。とりあえず絶対に会敵出来るつもりで血液を入れ換えておきませんか?」
スージー:「そうしておこうか。補給が済んでも見つからなかったらレーダー使おうかな」
リンダ:「お先にどうぞ、手伝いますのでお腹のハッチ開けて下さい。へへ、もぞもぞ」
スージー:「ん、ちょっとあんた、どこ触っているの?。余計な事しないのよ」
リンダ:「あ、ついでにちょっと補給機構周りの拭き掃除なぞしようかと」
スージー:「あのねえ、新品に換えたばかりの体で水垢なんか憑いているわけないでしょう。私は貴女みたいに半分趣味でサイボーグになったんじゃないのよ。遊ばないで頂戴」
リンダ:「済みません。ちょっとだけ、ね、ね、いいでしょ。私の触っても良いから」
スージー:「しょうがないなあ。ま、精神不安定な相棒よりはメカフェチの方がましか。まさか、この体になってから触りまくられるとはねえ。性感がない体で助かったわ」
(”はちじょう”&”だいとう”)
瑪瑙:「怪電波を受信しました。先日の北米連戦闘艦と同じレーダー波です」
朝子10世:「やっぱり来たわね。奈々侯、そっち工事の進捗はどうかしら?」
奈々:「あと20分ほどで、なんとか眼球下の天井が塞がります」
朝子10世:「なんとか撃ち合いを先に引き延ばすようにしてみるから急いで。細かい動きが必要になるから操舵は雀奴に代わって。全員衝撃に備えるのよ」
雀奴:「リンク引き継ぎました。迎撃方法はどうしますか?」
朝子10世:「向こうも北米連の法律に縛られるから泥棒逮捕名目でしか動けないわ。最初の発砲は大概警告だから船体を狙ってくることはあまりないと思って良いわよ。なるべく言い争いで時間を稼ぐけど決裂は必至だから死角に入れないようにして。”だいとう”がビーム撃てるようになるまでは、細かく旋回して後ろをとられないこと。やつらは体内武器も強力だから接近されると外壁を壊して侵入される恐れもあるわよ」
雀奴:「接近される前にビームで牽制しましょう。撃ってきたら当てて良いですか?」
朝子10世:「船体射撃の判断は任せるから、やりとりに気を付けて、空気読むのよ」
(”はちじょう”&”だいとう” vs スペースシェリフ・ワン)
スージー:「レーダーに映ったわ。あ、2隻居る。想定外だったな」
リンダ:「会合のためにエンジン止めていたんですね。1隻が武器を運んできたのでは?」
スージー:「急造じゃ大した武器は装備できないわよ。先に撃てない規則のようだし」
リンダ:「想定手順では盗掘品を積んだ船に停戦を命じるんですよね。どっちかな?」
スージー:「この状況なら共犯扱いに出来るわね。呼びかけるわよ。あー、そこの2隻。返事しなさい。お前たちは小惑星の私有財産権を侵害し盗掘品を積んでいる疑いがある。こちらは民間宇宙保安官である。拿捕するから、降伏してハッチを開けよ」
朝子10世:「また来たの?。しつこいわねえ。貴女の主張は無効な古証文に依るものです。わがほうは、あなた方の実力行使を宙賊行為と見なしています。発砲には反撃しますよ」
スージー:「あ、お前は朝子10世!。先日はよくもやってくれたわね。2度目はないわ。お前たちの船に、ろくな武装がないことは判っているんだ。投石なんか通用しないわよ。これは最後通牒だ、おとなしく降伏しなさい」
朝子10世:「宙賊行為には屈しません」
スージー:「ならば無理矢理捕まえてやる。盗掘者ども、これでも食らえ。ミサイル発射」
雀奴:「火あぶりビーム!。敵ミサイル溶解確認。残骸回避、右舷バーニア噴射0.5秒」
スージー:「レーザーを積んできたか。これでどうだ。ミサイル連射」
雀奴:「火あぶりビーム!。火あぶりビーム!。敵ミサイル2基溶解確認。残骸回避。左舷バーニア噴射1.5秒」
スージー:「正確な照準ね。サイボーグの脳に直結しているのかな」
リンダ:「ビーム砲はこけしの目玉です。接近して後ろに回れば死角でしょう」
スージー:「加速はこっちが上だ。やってみるか。もう1隻は動かないわね。故障かな。リンダは念のためそっちを見張っていて。エンジン全開、どうだ」
雀奴:「後ろはとらせないわ。対角バーニア、ジャイロ連動」
リンダ:「もう1隻に動きありません。先に動いている方を仕留めましょう」
スージー:「旋回して頭を向ける気か。牽制だ、ミサイル発射」
雀奴:「火あぶりビーム!。ミサイル溶解。船体撃ちます。あ、追いつけない」
スージー:「真後ろに憑いたわ。とどめだ。ミサイル発射」
朝子10世:「メインエンジンよ!。噴流ではじくのよ」
雀奴:「メインエンジン急速加圧、後部バーニア同時噴射。お願い、外れて!」
スージー:「あっ、エンジン噴いたわ。負けるな、当たれ当たれ。くっ、それたか」
リンダ:「ミサイルが残っていませんよ」
スージー:「しまった、手間取りすぎたわ。どうしようか」
リンダ:「側面をかすめて飛んで下さい。私が出て、侵入します」
スージー:「危険ねえ。でもこのまま引き下がれないわ。できるの?」
リンダ:「来る途中で練習したとおりやりますよ」
スージー:「わかったわ。行くわよ」
リンダ:「助手席ハッチオープン。背面ジェット用意、3,2,1行きます」
スージー:「こっちはバルカン砲で注意を引くわ。バルカン砲発射」
朝子10世:「何かがぶつかっている音がするわね」
雀奴:「あ、機関砲を乱射しているようです。効果は無いみたいですね」
朝子10世:「傷が付くし、側面監視カメラやバーニアが壊されるかも。振り払えないかな?」
雀奴:「無理です。ビームの死角にぴったり憑けられています」
リンダ:「よし、ここから、オッパイバズーカ発射」
朝子10世:「わっ、何?、今の衝撃は」
奈々:「こっちから見えます。一人、そちらの外壁にとり憑いて攻撃しています」
朝子10世:「侵入されたら困るわ。”だいとう”から撃てないかな?」
奈々:「工事があと少しです。2分待って下さい」
朝子10世:「雀奴、船体を回転させて振り払ってみて。みんな、何かに掴まって」
雀奴:「ジャイロ全速回転」
瑪瑙:「外壁だけでなく居住生産区画に穴が空いたようです。物資が散乱してます」
リンダ:「うわっ、回転しだした。振り払う気ね。そうは行くか。穴の縁を掴んで」
朝子10世:「奈々侯、まだとり憑いているの?」
奈々:「まだ居ます。穴に手をかけているようです。あ、ビーム撃てます。船体に当たるとまずいので、横に動かさないで下さい。操舵員、攻撃よ。正確にね」
”だいとう”操舵員:「エキシマカッタービーム!」
リンダ:「きゃあ、う、腕、スージーさん助けて」
スージー:「どうしたの?。大丈夫?」
リンダ:「腕をねらい撃たれました。腕が溶けてちぎれてしまい放り出されました」
奈々:「当たりました。遠心力で離れていきます。戦闘艦も撃ってみます」
”だいとう”操舵員:「エキシマカッタービーム!。あ、ダメですね。散乱します」
奈々:「”はちじょう”から流出した物資か破片に当たって撃てません」
スージー:「今のはこっちを狙ったのか。リンダも拾わないと。緊急加速」
奈々:「戦闘艦が急速に離れていきます。本艦は工事のためにまだ急加速できません」
朝子10世:「もういいわ。こっちも穴が空いているから無理したくないし。お互いに死角をカバーする位置について後始末をしましょう」
スージー:「リンダ!生きてる?」
リンダ:「腕以外は無事です。撃たれないように背面ジェットで離れました」
スージー:「それでいいのよ、よくやったわ。拾いに行くからちょっと待ってね」
リンダ:「敵艦の穴から放り出された物がいくつか近くにあります。調べましょう」
(”はちじょう”会議室)
瑪瑙:「被害を調べました。タブレットの製造施設が破壊されていました」
朝子10世:「短期任務だから、今は困らないわ。華子には怒られそうだけど」
瑪瑙:「被害箇所側の側面監視映像を分析したところ気になることがあります。振り払おうとしたとき穴から放り出された物資にタブレットの備蓄がありました。軌道を計算したところ、飛んだ方向が敵サイボーグの逃走方向と一致しています。もしもあれが外国人の手に落ちたら、我が国の生命維持装置の秘密が漏れます」
朝子10世:「豚は無事だったのよね?。分析されても模倣されなければ良いけど」
瑪瑙:「豚のタンクは無傷でした。でも時間をかけて分析されたらまずいのでは?」
朝子10世:「タブレットは殆ど抗原・抗体反応が出ないはずだから分析し辛いのよ。動物由来の物質だとは判っても、動物の種類が判らなければ模倣は難しいわ。もちろん北米連の科学力は侮れないから、すぐ本国の陛下に報告を入れるけどね」
瑪瑙:「あの重武装は脅威ですから生命維持装置の欠陥が無くなったら怖いですね」
朝子10世:「そうならないことを願うしかないわね」
(スペースシェリフ・ワン)
スージー:「初めての任務でここまでやれれば上出来よ。大穴を開けてやったしね」
リンダ:「拿捕できなかったのは残念でしたね」
スージー:「2隻居たのが計算外だわ。動かなかった方は武器が整備中だったのね。それに、バルカン砲が殆ど効かなかったのも問題ね。敵のレーザーが欲しいわ。でも、オッパイバズーカで外壁を破れると判ったのは収穫だったわよ」
リンダ:「収穫といえば、散乱した物資にめぼしい物はあったのでしょうか?あの、小さな煎餅みたいな物って重要な物だと思いますか?」
スージー:「まだよく判らないけど、固まった血のような色なのが気になるわね。もしかしたら、生命維持に関わる物資かも知れないでしょ。帰ったら調べて貰うわ」
リンダ:「もし生命維持装置の改善に繋がる物なら大収穫ですよね。マンガのサイボーグみたいに電気と錠剤だけで生きられるようになりたいですよ」
スージー:「貴女のメカフェチ志向は仕方がないけど、仲間との連帯も大切よ」
リンダ:「仲間かぁ。腕の修理で迷惑かけちゃいますね」
スージー:「腕くらいなら町工場でも作れるから、国防総省に文句言われないわよ」
リンダ:「あ、血液補給の時間ですよ。済みませんが私の操作もお願いします」
スージー:「お安いご用よ。終わったら真っ直ぐ帰るわよ」
(北米連 大統領官邸)
国防長官:「愛国民兵会のサイボーグ民間宇宙保安官が帰還しました。帝国宇宙艦の拿捕には失敗しましたが、外壁に穴を開ける被害を与えたそうです。そこから放出された物資を持ってきたので調査中ですが、面白いことが判りました。回収された中に動物由来と思われるペレット様の物が多数発見されています。奴らの生命維持装置で食料というか血液補給というか、その代わりになる物でしょう。これを分析すれば、HLAの制限に縛られないサイボーグが出来るかも知れません」
ヤブー:「収穫物はいいが、宇宙艦が武装化していて拿捕できなかったのは問題だな」
国防長官:「冥王星で氷の切り出しに使っていたようなレーザーを強化した物です。急造でこけし船の目から発射するようにしたようで、死角も多いし脅威ではありません。我が月面基地を攻撃するような能力ではないですよ」
ヤブー:「今回の報復として月への補給船を攻撃されたら困るだろう」
国防長官:「あくまでも民間の行為です。帝国からの抗議はありません」
ヤブー:「それは我々が国連を牛耳っていると判っているからだ。根に持っているぞ。しばらく奴らを刺激しない方が良い。愛国民兵会には次の行動を控えさせろ。」
コメー:「ところで、動物性のペレットといいましたよね。いったい何の?」
国防長官:「何の動物から原料を採っているのか、なかなか判らないのです。成分比は血漿を乾燥させた物に近いのですが、抗原・抗体反応が全くないのです」
コメー:「抗原・抗体反応が全くないですって?。動物じゃないのでは?」
国防長官:「実験用のネズミとかには、抵抗力が極めて弱い動物も存在します。人間だって、先天異常やエイズで免疫反応が無くなることがあります。しかし、これの原料が血漿ならあらゆる動物に輸血できる血漿でしょう。これほど完全なものは知られていません。自然界には殆どあり得ないそうで。」
コメー:「帝国は遺伝子組み替えで、とんでもない新生物を作ったのでは?これは人体の機械化改造を上回るとんでもない神への冒涜です。放置できません。いずれこのことが議員に広まれば、戦争をしてでも止めろと言う話になります」
国防長官:「これと同じ血漿があればサイボーグだけでなく一般医療にも有効です。研究予算獲得のために議会工作をしたいのですが、まずいですかね?」
ヤブー:「これができれば、サイボーグが献血に頼らずに済むのかね?」
国防長官:「補給がかなり楽になるとは予想されますが、血球の補充は出来ません。本人の骨髄を体外で培養して血球を補給する事が出来れば別ですが、難しいです」
ヤブー:「半分は解決するのか。外惑星での行動には有効だろうな」
コメー:「私はそんな研究に賛成できません。しかし議会に知らせるのは賛成です。奴らの軍備が強化されないうちに攻撃すべしと主張する議員が多くなるでしょう。遺伝子組み替えで危険な生物兵器を生産している疑いありという理由もつきます。これで国連を説得して制裁決議を成立させられるかも知れませんよ」
ヤブー:「議会はそういう方向を向くだろうな。それは別に構わない。ただ、国連はそうもいかんだろう。血漿が証拠なら明らかに細菌兵器ではない。満漢の無神論者は、我々の本音である冒涜論を意に介さないんだよ。それどころか裏で小娘帝国と取引をする可能性だってあるぞ」
(愛国民兵会 サイボーグ格納庫)
愛国民兵会会長:「ここも家と言うにはまだ非人間的だが前よりはましだろう」
リンダ:「私はこの体に合った快適な住処だと思いますよ」
スージー:「別に不便は感じないですね。それより、次の出動は決まりましたか?」
愛国民兵会会長:「困ったことに国防総省と宇宙局が許可してくれないんだ。どうやら議会に根回しをしながら小娘帝国の本国に侵攻する準備をしているらしい。そのために、当分は宇宙での小競り合いで奴らを刺激したくないようなんだ。悔しいがミサイルや燃料の補給で支援が受けられなければお手上げだ。すまんな」
リンダ:「もし戦争になったら、私らも宇宙で戦うことになるんですよね?」
愛国民兵会会長:「本格的な戦争では儂らの出番はないだろう」
スージー:「月面基地が心配です。防衛を手伝えませんか?」
愛国民兵会会長:「月面基地の防衛施設はかなり強力だから心配ないそうだ。むしろ、宇宙局は月との行き来が不可能になることを想定しているらしい。それで、籠城に備えて物資を送るのが最優先なのも非協力的な原因だろう。この様子では、お前たちが月に駐留するための血液輸送は無理だな」
リンダ:「それなら、せめて衛星軌道で帝国の娘らに一泡吹かせたいわ」
愛国民兵会会長:「それも我慢して欲しい。戦争なら州兵も手薄になるだろう。それに便乗してパニック人が大量に不法越境してくるかもしれんのだ。もしも、献血者の誰かが犯罪者に殺されたら、お前たちの命にも関わるんだ。お前たちは献血者を危険から守ることを優先して、国境警備に加わってくれ」
スージー:「予備役になっている献血者が戦争に動員されることはないですか?」
愛国民兵会会長:「そういうことは絶対に無いよう話がついているのだ。なにしろ国防総省と宇宙局にとって、お前たちは虎の子の試作サイボーグだ。今のところ、お前たちの代わりになれる者は一人も居ないんだからな。お前たちの活動データが研究に必要だから、死んで貰っては困るんだよ。先日だってろくに話も聞かずに記録ディスクをかっさらって行ったくらいだ。だから、戦争になったらお前たちも献血者も前線から遠ざけられることになる」
スージー:「わかりました。当分の間、地域の安全確保に専念しましょう。仕方ないですね。2度の宇宙飛行が出来ただけでも良かったわ」
リンダ:「弱っちいパニック人が相手じゃつまらないけど、仲間は大事よね。そんな話じゃ、消費したオッパイバズーカの弾も補充して貰えないかしら」
愛国民兵会会長:「ふむ、弾の補充がリンダの生き甲斐に繋がるなら交渉しよう。しかし、使う機会は無いと思え。小娘帝国が叩きつぶされるまでは我慢だ。宇宙での活動はあとの楽しみにとって置いてくれ。なに、すぐ片づくさ」
(本スレ住人には反戦派も多いので嫌われるかも知れませんが、北米連の暴挙とそれに続く世界の混乱がその先の歴史では必要悪でして。ということで、次回予告は(28)大戦(前編)となります。反戦派の方はスルーして下さいませ。)

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