−−(28)大戦(前編)−−
(離宮 謁見室)
外務大臣・弥生:「例の決議案、とうとう北米連の議会を通ってしまいましたね。どうしますか」
皇帝・知子1世:「静止軌道工場衛星が核・生物兵器の生産施設でない事を検証させろ、さもなくば攻撃す、か。ホントに額面通りなら受け入れても良いけどね。実際、核どころか大砲だって無いんだから。艦載アイビームや、迎撃艇のミサイルは対地攻撃能力がないからデブリ防御用で通用するわけだし。奴らの狙いは全身サイボーグの秘密を調べることだから、農産エリアの豚だけは見せられないわ。あれの存在が知られたら、秘密漏洩だけでなく遺伝子組み替えに対する宗教的反感も募るしね。次は教会勢力やら動物愛護団体やらが制裁だ何だって北米連議会で騒ぎ出すに決まっているでしょ。いつものように普通の人間が安全に入れる場所ではないから別の方法でと言うだけだわ。国連安保理事会では北米連を除けば遠隔ロボット測定器による核施設検証に賛同しているのよ。新たに言い出した生物兵器の疑いについて、他の国は何の証拠もないと認めているんだしね」
外務大臣:「宣戦布告してきますかね」
皇帝:「国連抜きで単独でってこと?。五分五分かな。いや、議決もあるし、もっと高確率か。民事紛争の実力行使を名目にした宙賊行為を半ば公然と支援してきたくらいだからなあ。仮に攻撃してくるとしたとき、最も気になるのは攻撃方法が戦略核か、機動部隊かよね。核で来るなら隕石で報復で決まりだし、非難されるのは向こうだけど、機動部隊だと難しいわね」
外務大臣:「そうですね。通常攻撃に対して隕石じゃやりすぎになるんで、友好国の離反が心配です。今までの例ですと、機動部隊でしつこく叩いたあとに上陸してくるのが普通の攻撃パターンです。ただ、今までは上陸戦に際して単独主義へ批判を和らげるため、いくらか同盟国軍を伴っています。西欧連内の諸国にある大使館からの報告では、今のところ出兵に協力しそうな国はありません。北米連が強硬になる動機が宗教的価値観の押しつけにあるというのが見え透いていますからね。西欧連は旧植民地出身者の人口比率が高いから、権力による宗教の押しつけが支持されないんです。それに我が国を占領して手に入る天然資源が殆ど無いですから、協力しても実利が薄いですし」
皇帝:「すると、上陸部隊が海兵隊の単独部隊になる可能性が高いわけね。それなら少しは楽か。核攻撃を防ぐためには迎撃艇を乗りこなせるサイボーグを上にあげなきゃいけないでしょう。地上で動員できるサイボーグが目一杯かき集めても1700人程度ってのが辛いところだったのよ。おまけに重装甲を付けない限りまともに砲弾食らったら死ぬし、宇宙ほど優位性はないでしょ。重装甲ボディは配備も訓練も近衛大隊の200人しかやってないから数で押されるときついわ。上陸兵力が不十分なら見せかけの首都である離宮地区に集中してくるのは確実でしょう。ここなら近衛大隊がいるから上陸後に沿岸封鎖システムで後続を断てば勝てるわ」
外務大臣:「予想に反して本島の方に上陸されるとまずいですよね」
皇帝:「本島の方は沿岸封鎖システムを先に発動させて上陸させないつもりよ。あっちは3重になっているから、第一封鎖線を破壊されてもまだ後があるからね。安全な環礁内に空母を配置すれば本島の制空権は維持できるからこっちに来るしかないのよ。それに彼らの目的が我が国の体制破壊なら私の首を狙わないはずがないわ」
外務大臣:「上陸部隊が孤立して追いつめられたら核を使ってきませんか?」
皇帝:「味方のいる場所では使わないだろうけど、使われたら上からの迎撃が頼りね。もし取りこぼしたらぎりぎりまでエキシマで防いでから地下鉄に逃げ込むわよ」
外務大臣:「無理しないでなるべく早く逃げて下さいよ」
(青の公家邸)
マサ:「あーあ、疲れたなあ。いきなり呼び戻されて毎日スプラッタじゃ鬱になりますよ。スパイ退治憑きで良いから女子高生の生活に戻りたいよぉ。せめて売春する暇ほしぃぃ」
真理亜:「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。核が飛んで来そうなんだから」
マサ:「だからって、季節はずれの改造手術動員なんてあんまりですよ。第一、あの娘たちは素体訓練が半年足りないんですよ。かえって戦力化が遅れます」
真理亜:「戦闘に使えないのは百も承知よ。核が落ちたらシビリアンは地上に出られないわ。そのとき地上の様子を偵察に行くだけなら、放射能に耐えられれば十分役に立つでしょう。それに、あと半年まで仕上がっている素体が運悪く核にやられて氏んだら大損でしょうが。忙しいのはまだまだ続くわよ。この動員が済んだら上にあがって軌道防衛任務よ」
マサ:「どうせ売春できないなら、スプラッタより宇宙で戦闘の方がましですよ」
真理亜:「上がったらすぐに新兵器”大目付”の試射をやるのよ」
マサ:「何ですかそりゃ?」
真理亜:「資源収集艦に搭載した艦載アイビームの成績が良かったので部品を流用した砲台よ。予備のヘッドフィギュアを原子炉と少量の推進剤を積んだ短い胴体の両端に取り付けた物ね。工場衛星の前後に軌道維持させてリモート操作でミサイルとかデブリの防御に使うのよ。出力が迎撃艇の10倍もあるから静止軌道から大気圏上層部の飛行物体を撃つこともできるわ。静止軌道に固定配備だから常時本国の上空をカバーできるんだけど遠いと当然照準が難しいの。それで、最初は射撃好きの藻前にやらせてみようかと思ったわけ」
マサ:「射撃はいいですが、艦の姿勢制御はあんまり巧くないですよ」
真理亜:「基本的に姿勢は固定だから。摂動修正や使用フィギュア交代は工場の管制がやるわ」
マサ:「なるほど。標的はいつものようにデブリを狙うんですか?。大気圏内は試せませんね」
真理亜:「晴れた日に本国の着陸場に描いた的を使うのよ。減衰はするけど当たったかは判るわ」
(国連 安全保障理事会)
ヤブー:「...というわけで、あの危険な独裁国家の宇宙工場は生物兵器生産の疑いがあります。査察要求を受け入れる気配はありません。武力制裁の決議をお願いしたい」
西欧連F国代表:「北米連が入手したという動物血液由来物質は品種改良の証拠に過ぎませんな。仮に遺伝子に手を加える技術を使ったとしても直ちに細菌兵器に結びつく物ではないでしょう。我々もむやみに遺伝子をいじる行為には反対ですが、危険性がないなら禁止の強制はできません。北米連の議会が一方的に行った決議に国連が引きずられるのはいかがなものですかな」
周:「北米連前提意味不明。遺伝子改良何故悪?。我々希望食料消費削減型遺伝子改良人間。現在宇宙娘々帝国輸出優良技術。機械手足実現食料消費削減。宇宙娘々帝国破壊損失甚大。宇宙娘々帝国破壊仮定、北米連我国余剰人口移民受入?余剰人口引受賛成条件也!」
大東亜国首相:「あー、...でありますから、うー...北米連さんの主張ももっともで...」
スレイブ共和国連邦代表:「北米連さんがどうしてもやるというなら単独でどうぞ。その代わり、あとで占領統治が巧く行かないからと言って我々にツケを回さないで頂きたい。もちろん、核の先制使用なぞ言語道断ですぞ。くれぐれもとばっちりは無しにして頂きたい」
カンガルー国首相:「我々としても、核だけは控えていただきたい。我が世論は核に敏感です。ましてや、戦場が我が国の近くになるのでしょう。状況によっては間接的協力も難しくなります」
(北米連 大統領府)
ヤブー:「もう、国連はあてにならんな。どいつもこいつも自国の都合ばかり言う。ただ一国必ず言うことを聞くのが、所詮出兵の出来ない大東亜国ではなあ」
コメー:「初めから判っていたことです。この際、議会の決めたとおり粛々と事を進めましょう。仮に他国が協力したところで、どこもお義理で100人かそこらの兵を出すだけです」
ヤブー:「君の言うことは正しいよ。だがな、やれば犠牲が出る。その責任は私の肩にかかるんだ。コメーも、一国の責任者になってみれば、戦没者追悼式で演説するつらさが判るよ」
コメー:「あなたはどこぞの皇帝と違って国民が選んだのです。責任は全国民にあります。私も投票しました。だから最後まで支えます。国防長官も覚悟は良いですね?」
国防長官:「艦隊は既に出航しました。あとは大統領のご決断を待つだけです」
ヤブー:「国務省の最後通牒準備は良いか?」
コメー:「ご指示通り、経済特区を除く帝国に対する最後通牒としております。私としてはあんな神に背く者達の発表を真に受けて作戦を立てるのは不満ですが」
国防長官:「不信感をもたれるのは判ります。しかし、今までかの皇帝の発表に嘘はありません。本当に統帥権が分かれていて、例の経済特区が参戦しなければ、敵に大型空母が居なくなります。向こうに大型空母が居なければ、機動部隊がやられる危険性が無くなりますから有利なんです。旧P共和国軍はこれまで何度もPKOに加わっていますが、抑制的な行動を旨とするようです。あの地区に被害が及ばない限り、参戦しない可能性は高いと思われるのです。幸い、皇帝の居る首都はあの地区から最も遠い地方にありますので、被害は及びません」
ヤブー:「これは経済界の強い意向でもあるのだ。極力外す工夫をしてくれ給え。もしも参戦しなかったら、あそこに帝国解体後の新政府の地位を認めてやると言っても良いぞ」
(太平洋上 北米連強襲揚陸艦)
海兵隊第一連隊中隊長・サターン大尉:「全く何の因果で俺たち海兵隊が小娘なんぞと戦うのか。さっぱりワカランご時世だが、せいぜい貴様らの大砲でひいひい言わせてやるんだぞ」
小隊長・ジュピター少尉:「噂によると奴らは売春が大好きだそうじゃないですか。銃なんか使わんでも、札束で顔をひっぱたけば簡単に裏切るかも知れませんね」
タイタン軍曹:「俺はあの皇帝のファンなんですよ。捕まえたら強姦したいなあ」
アトラス伍長:「あの皇帝もサイボーグなんでしょ。淫る前に絞め殺されますよ」
レッドストーン技術兵:「鞭でひっぱたいて奴隷にすれば良いでしょう。奴隷にして調教してから、みんなで輪姦すればきっと大丈夫ですよ」
サターン:「そいつはいい。性奴隷にして部隊の慰安用ペットとして飼ってやろう」
部下たち:「げらげらげら。是非そう願いたいですなあ」
(静止軌道工場衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)
マサ:「ヘッドフィギュアの目で地上を見た事なんて無かったけどこんなに良く見えるんだあ。雲で的は見えないけど、これなら地上だって撃てそうじゃないですか」
真理亜:「そりゃあ、4万`先くらい楽に見えなかったら高速航行時に隕石よけられないわ。それに地上は明るいから外惑星方面で隕石見つけるよりずっと易しい筈だし」
マサ:「試射は良いけど、着陸場に被害は出ないんでしょうね?」
真理亜:「紫外光じゃ晴れていてもオゾン層で吸収されるから、パワーで5%届くかどうかね。的の蛍光剤が反応して計測できるのか心配なくらいだわ。晴れ間まだ出ないの?」
マサ:「風で雲が流されてるんで待てば見えると思いますがいつ撃っても良いんですか?」
真理亜:「計測の都合もあるから10分以内に見えなければ延期ね」
マサ:「これじゃあ、仮にパワーが足りても低い標的は殺れませんね」
真理亜:「巡航中のジェット機ならじっくり当てれば落とせる鴨。動いてるから難しいかな」
マサ:「あ、的が見えました。やりますよ。ラブラブ光線!」
真理亜:「辛うじて計測できたようね。中心から5mに着弾だって」
マサ:「ダメですね。5mも外したんじゃ、ミサイルの弾頭は落とせないなぁ」
真理亜:「地上だと空気の揺らぎで曲がるから5mなら大した照準精度だわ。上出来よ。成層圏から上にいる物体ならもっと当てやすい筈だからミサイルには効くわね。それに、実戦だったら体内アイビームと違って電力が十分だから乱射が出来るわよ。弾頭とデコイの見分けは無理だから乱射はどのみち必要よ。よし次、2号機でやってみて」
マサ:「切り替えました。あー、また雲が邪魔してます。あれ、何だあの大艦隊は?」
真理亜:「どうしたの?」
マサ:「東の洋上を大艦隊が進んできます。大型空母が居るから北米連ですよ」
真理亜:「とうとう攻めて来るつもりかな?。報告しておこうか」
マサ:「雲が切れました。試射続けます。ラブラブ光線」
真理亜:「中心から3mに着弾だって。まあまあね。え、最後通牒!。わかったわ。マサ、地上からの話だと北米連が最後通牒を突きつけてきたわよ。2時間後に来るわ」
マサ:「いきなり実戦ですか。大丈夫かな。私も迎撃艇で出た方が良くないですか?」
真理亜:「大目付からなら迎撃艇の動きもよく判るから低軌道の各隊を指揮なさい。藻前の第3小隊も含めて降下ローテーションや各軌道への配分は私がやるからね。藻前は直接ミサイルを追っている隊に標的を割り当てて足りない分を自分で撃つのよ」
マサ:「性に合わないやり方だけど、弾道弾の撃ち漏らしを考えると仕方ないかな。確かにここからなら、迎撃艇が追いつけないやつがあっても撃てますからね」
真理亜:「迎撃艇が至近距離まで追いつけるなら粘着焼夷弾の方が効果は確実だからね。藻前は間に合わない分を狙うのよ。特に高度が上がりきらないSLBMは優先しなさい」
マサ:「あの艦隊をやっちゃえれば良いのになあ」
真理亜:「出た艦載機なら高度があれば撃てるかも。弾道弾が来なければ試して良いわ。とりあえず。2時間だけ猶予があるから、体内タイマーかけて今のうち寝ておきなさい。私は司令席で全体の行動を指示しなきゃいけないから、大目付のことは頼むわよ」
マサ:「大目付は2基ありますが、もう一人操作員は付かないんですか?」
真理亜:「残念ながら藻前くらいの能力がないと迎撃艇を同士討ちする危険があるのよ。今すぐもう一人用意するなんてとても無理だわ。藻前一人で適当に使い分けなさい」
マサ:「リエは?」
真理亜:「本島の海岸や工業施設に配置するリモートボディ隊を動かす娘の指揮よ。藻前と違い大勢の指揮が得意だからね。それと大目付と両方させるのは無理だわ」
(経済特区大統領府)
北米連特使:「...ということで、中立を保っていただきたい。交換条件があります。あなた方が参戦しなければ、帝国解体後はあなた方をここの新政府として承認します」
特区大統領:「我が海軍の統帥権は、私にありますよ。皇帝からの参戦要請もない。ここと沿岸200海里の管轄水域にあなた方が侵入しなければ戦う理由はないですね」
北米連特使:「皇帝の要請があれば優先するんですか?」
特区大統領:「従う義務はない。長年の義理と、ここの利益を秤に掛けることになる。ここの利益で最優先されるのは環境破壊や地雷による2次被害が無いことです。例えば、帝国本体側にあるジャングルや潮力ダムの破壊を避けるかどうかですな。潮力ダムは環礁全体を使っているから、どこかが破壊されたらここにも影響がある。もしあなた方が2次被害を省みない行動をとれば自動的に参戦することになる。我が自治政府は住民に選挙された正当な統治者だ。あなた方の承認は重要でない」
北米連特使:「潮力ダムの正確な位置を示す資料はありますか?」
特区大統領:「それくらい衛星偵察で知っているんじゃないの?。まあいい、これだ。後は行動で誠意を示していただきたい。参戦するかどうかはそれ次第です」
北米連特使:「精々気を付けますのでよしなに。でわ失礼」
秘書官:「陛下からお電話です」
特区大統領:「ええ、たった今帰りました。本当に宜しいのですか?」
知子1世:「北米連は我が体制を理解せず、ただの独裁国家と決めつけています。私の首を取れば帝国が解体できると簡単に考えているから狙いは”首都”だけです。戦後の財政を考えたら経済特区が戦場になるのは損ですからね。もちろん、そちらの管轄区域に侵攻があって反撃されるときは支援します。北米連が本当に手を出してこないのなら、戦闘は控えて下さいな」
特区大統領:「承知しました。潮力ダムを破壊するなと条件を付けておきました。そちらの工業施設への爆撃がし辛くなるし、電力も必要かと思いましたので」
知子1世:「それはどうも。参戦して貰うよりその方が遙かに効果的ですよ。ジャングルの破壊も好ましくないので被害を離宮付近に限定したいですからね」
特区大統領:「それではお気をつけて」
(離宮 地下の重装甲ボディ装着室)
知子1世:「あと40分くらいよ。何人できたかな?」
マミ:「終わったのは80人です。後になるほど手足外すのを手伝える人が減ります。このペースですと200人全部は間に合いません」
知子1世:「侍従たちにも手伝わせましょう。侍従長、なるべく沢山連れてきて!マミ、ユミ、私の換装手伝って頂戴。ロック解除したから手足抜いて。よし、入れて!」
マミ、ユミ:「せーのー。入った。リンク良いですか?」
知子1世:「立ち上がったわ。ガスタービン始動。電圧良し。武装リンク良し。OK」
侍従長:「遅くなりました。え、陛下も出られるのですか?」
知子1世:「目標の首が見あたらないと、他の地域を攻撃されるわ。とにかく手伝って!二人一組で手足外すの手伝って、外した娘を持ち上げて重装甲ボディーに乗せて頂戴。中央の空間に胴がぴったり収まるようになっていて、入ったら後は自力でやるから」
侍従長:「はい、ただいま。おい、お前とお前そっちだ。お前とお前はあっちだ。しかし、万一ということもあります。私どもも銃をとりますから陛下は地下で指揮を」
知子1世:「あなたたちが戦うのは無意味よ。周辺陣地は地軍がちゃんとやってるから。最強の海兵隊相手に機動戦では重装甲ボディー付けられなくちゃ、ひとたまりもないわ。それより、ここの手伝いが終わったらブッチャーを使って祝勝会の用意をしなさい」
侍従長:「お言いつけ通りに祝勝会の準備はやっておきます。その代わりそんな外装はおやめ下さい。一人だけそんなに目立っていたら必ず集中攻撃を受けます」
知子1世:「目標の首がわからなかったら、上陸部隊を集めて孤立させられないわ。内陸部に引き入れて立ち往生させることで核を使わせない作戦なんだからね。それに、このボディーは対戦車砲でもなかなか破れないから99%大丈夫よ。いくら北米連でも上陸作戦で十分な重火器が持ち込めるはずが無いんだからね。歩兵が相手なら、ぼんやり突っ立て居ない限りやられるわけがないでしょ」
(静止軌道第一工場衛星 ベイ)
管制員:「M55ロケット引き込み良し。係留しました」
朝子10世:「管制ご苦労さん。出るわよ」
冬子:「私なんか使い道ないから、他の娘を優先した方が良くなかったですか?」
朝子10世:「ここの方が安全だから東宮様が冬子と理美は必ず連れて行けって。私もその方が良いと思ったわ。高加速の核ミサイルを撃ってくる可能性もあるでしょ。もしここが危なくなったら工場要員を”みくら”に乗せて避難させる必要があるわ。そのときは、無理の利く操舵員が欲しいからね。二人とも艦内で待機していてね」
みどり:「あ、お母さん。心配していたのよ。下では機動部隊が接近してるんでしょ」
冬子:「東宮様と殿下がわざわざ私の使い道を考えて、上げてくれたのよ」
みどり:「お父さんは大丈夫かな?」
冬子:「研究資料が多いから私が手伝って地下鉄に避難させておいたわ。安心なさい」
みどり:「よかった。でも本国にICBMは落とさせないわ。私が必ず捕まえるからね」
冬子:「一人で無理しちゃダメよ。ちゃんとマサ侯の指示を守ってやるのよ。ローテーション守ってみんなで網を張って初めて機能する防衛システムなんだからね」
みどり:「わかってます。でも、お姉ちゃんには負けないわよ」
(北米連 主力空母)
飛行長:「開戦期限まで20分だな。クレイジーキャット隊発進せよ。極超音速で一気に防衛圏を突破すべし。目標は宮殿の周囲にある防空施設である。まず制空権を確保し、地上施設を破壊して皇帝を地下の防空壕に押し込めるんだ」
攻撃隊長:「了解。クレイジーキャット射出体型、発進ロケット点火用意よし」
射出管制員:「1番電磁カタパルト起動。3,2,1GO!。続けて2番...」
攻撃隊長:「上昇加速良好。脱落機なし。ラムジェット動作速度到達。点火成功。燃焼室温度、圧力正常。翼前縁温度200度。冷却剤注入開始。温度安定。よし行くぞ!。マッハ5で飛ぶ俺たちを落とす手段なぞどこにもない」
(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)
マサ:「あ、空母から極超音速機らしいのが飛び出しました。高度50`かな。マッハ5くらい出てますね。地上から迎撃は難しいです。どうしますか?」
真理亜:「やるしかないわ。但し、200海里圏に入るまで待って。間に合うわね?」
マサ:「6機です。3分あればいけるかな。さすがに、いきなり核じゃないでしょう。撃ち漏らしが出たらご免なさいって事でやってみます。ああじれったいなぁ。来るとわかっていてすぐ撃てないのはむかつくなぁ。んーそろそろ入ったか。よし、ラブラブ光線、連射連射また連射...」
(クレイジーキャット隊)
攻撃隊長:「間もなく帝国の200海里圏に突入します。飛行順調。ん?翼面温度計が...あ、折れた!。なんで?。わああぁぁぁ」
2番機:「あ、隊長機から破片!。空中分解して落ちていきます。どうしたんだ?え?翼面が溶けてる!。この機も?うわあ。ガリガリ、ザー...」
母艦飛行長:「どうした?。事故か?」
6番機:「上空が光ったように見えました。あ、3番機、4番機も落ちます」
母艦飛行長:「宇宙からの攻撃かもしれん。高度を下げて避けるんだ」
6番機:「この速度では無理です。あ、5番機も落ちます」
母艦飛行長:「目標まで後少しだ。なんとか振り切れ」
6番機:「減速し降下します、爆撃用意、あ、だめだ。やられた。助けて。うわぁ」
母艦飛行長:「おい。返事をしろ。くそ。初っぱなからなんてこった」
(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)
マサ:「間に合った。6機ともあっさり落ちたけど、あいつら、脱出は出来たかな?」
真理亜:「仮に脱出しても、マッハ5で機外に飛び出したら衝撃波で粉々よ」
マサ:「あーあ、氏んだのか。これで先日の工作員に続いてもう7人も。憂鬱だなあ。この距離で、撃ったのが機体だと、やった実感が薄いのが救いですね。恨むなよぉ。怨念が祟って、最後の奴が離宮の真ん中とかまずいところに落ちてなきゃ良いが」
真理亜:「向こうから危害を加えにきた奴ばっかりなんだから、いちいち気にしないのよ。瞬殺じゃ祟る暇なんか無いわよ。陛下から連絡があったわ。海に落ちるのが見えたって。とにかく、よくやったわ。これで高高度極超音速機の使用は諦めるでしょう。普通の戦闘機なら地軍機でも対抗できるから藻前はミサイルに注意して」
マサ:「あ、今度は巡航ミサイルを撃ってきたようですよ。うわー、数が多いな。おまけにあれは低いからビームが届かないよ。無人だから気楽に撃てるのにぃ」
真理亜:「沿岸封鎖システムで阻止できるから巡航ミサイルは無視なさい」
(北米連機動部隊 旗艦)
司令長官:「クレイジーキャット隊が落とされたようだ。一体どうしたのだ?」
参謀:「宇宙から光線兵器を受けたようです。高高度飛行が徒になったのです。巡航ミサイルとステルス戦闘機なら低空で侵入できるから大丈夫です」
司令長官:「クレイジーキャットの搭乗員はどうなったのだ?」
参謀:「マッハ5で飛行中でしたので脱出しても衝撃波で木っ端微塵でしょう。撃墜手段があることは想定していないので減速しないと脱出はできません。後からやられた機の報告では主翼が溶断されて瞬時に空中分解したようです」
司令長官:「そうか。それではやられた原因が詳しく判らないわけだ。となると、控えのクレイジーキャットを出すことは当面無理だな。搭載機数を減らしてまで専用カタパルトを積んだのに。こうなると、痛いな」
参謀:「国務省からの連絡によると経済特区の参戦は回避できそうです。敵は飛行場もないので、中型空母2隻だけの航空戦力が相手ならまだ優勢です。巡航ミサイルを東海岸のロケット打ち上げ場と南端の宮殿に集中しましょう。数で押せば、宇宙への兵力増強阻止と、宮殿の防空施設破壊は可能と思います。その上で、ステルス戦闘機に支援させて上陸戦を行えば皇帝は倒せます」
司令長官:「敵艦船の動きは捕捉しているのか?」
参謀:「環礁の内側に引っ込んでいるらしく、一隻も見つかりません」
司令長官:「それなら、潜水艦は動きやすくなっているわけだな。潜水艦も動員して目一杯巡航ミサイルを発射するんだ」
参謀:「それが、本国からはSLBMの使用に備えて潜水艦は温存せよと」
司令長官:「なに!。本国は戦略核まで使うつもりなのか。無茶な」
参謀:「あくまでも上陸が不可能な場合に備えてとのことです」
司令長官:「しかたがない。水上艦の巡航ミサイルを全部投入せよ」
(帝都 大本営内 沿岸封鎖システム管制所)
管制員:「工場衛星から通報。巡航ミサイル多数、東海岸と離宮に同時です。東海岸到達まで20分。目標はロケット打ち上げ場のようです」
皇太子:「計画通り、本島は第一阻止線で阻塞網を浮上させて止めなさい。離宮側は阻塞するなとの指示されていますので、阻塞網は出さないこと」
管制員:「100発は向かっているようですが、良いのですか?」
皇太子:「陛下はエキシマで適当に間引いて当てさせるおつもりです。地軍部隊は離宮から十分離れて隠れているし近衛大隊は地下にいます」
管制員:「なるほど。本島第一阻止線阻塞網起動します。気球ガス注入。阻塞網浮揚しました。続けて海岸エキシマビーム砲、地表に出します」
(北米連機動部隊 巡航ミサイル管制艦)
管制員1:「途中に障害となる地形はないので低空のまま侵入させます。機載カメラ映像順調に入って、あ...海上に障害物そんなバカな!」
指揮官:「何を言っているんだ。海上には何にも、えっ、気球で網が!島が囲まれている。高度を上げて回避させろ」
管制員1:「はい、あ、ダメです。第一波引っかかりました。第二波は一部間に合いました。あれ?。映像切れた。撃墜されたようです」
指揮官:「しまった。障害物で高度を上げさせて撃ちやすくするのが狙いか」
管制員2:「こちらは障害無く陸上に達しました。あ、何か紫色に光った。あれが対空砲なんですかね。次々撃たれていますが、一部は突破できました」
指揮官:「よかった。本命は突破できたか。地形的に仕掛けが出来ないのかな」
(離宮地下 近衛大隊待避所)
知子1世:「みんな重エキシマ砲の操作リンク良いかな?。始めるわよ」
マミ:「はい。うわ、多いなぁ。それ、落ちろ、落ちろ、よしやった、次...」
ユミ:「2機目やりっ、あ、1機逃がした。残念」
知子1世:「目標6割だから、欲張らなくて良いのよ。お、1機やりっ」
マミ:「あーっまた抜けられた。結構食らいましたね。ここの建物好きだったのに。重エキシマ砲も10基ほど使用不能になりましたので、次は苦しいですよ」
知子1世:「人間と金目の物は全部地下に降ろしたから気にしないの。でも、離宮のエキシマ3分1がやられたのは、弾道弾を考えるとまずかったかな」
ユミ:「本島は大部分を地軍兵が操作していたのに全部落としたそうですよ。やはり高度を上げさせると随分違いますね。こっちも阻塞していれば良かったのに」
知子1世:「適当に当てさせないと、海兵隊が上陸する気にならないじゃないの。後でハシゴ外すには、こっちに沿岸封鎖システムが無いと思わせないとダメでしょ」
マミ:「それはそうですが、勿体ない希ガス」
知子1世:「あんまり完璧に防ぎすぎたら核が飛んでくるわよ。我慢我慢。マミ、10人連れて、ブロワーで砲塔の埃を払って、被害箇所を調べて来なさい。予備砲5基も持って行ってね。電源が無事な被害箇所には予備砲を設置するのよ」
(北米連機動部隊 旗艦)
参謀:「ロケット打ち上げ場への攻撃は海中に隠されていた妨害施設で阻まれました。首都の宮殿には巡航ミサイルが到達し30発以上が命中したと思われます。標的の詳細が不明なので防空施設が破壊できた確証はありませんがどうしますか?」
司令長官:「30発も当てればどんなに頑丈な建物でも外壁はぐちゃぐちゃだろう。埃にまみれたら光線兵器は使えなくなっているだろうからステルス機を出そう。水上艦の巡航ミサイルは使い果たしたからこれでダメなら補給を頼むしかないな」
参謀:「そうですね。対空砲が再整備されないうちに空襲しながら上陸しましょう。ロケット打ち上げ場の方は、放っておいて良いですか?」
司令長官:「巡航ミサイルに対し宇宙からの迎撃はなかったようだ。低空なら大丈夫だ。作戦の目的は独裁者の排除だからな。皇帝を捕らえるチャンスを逃してはいかん。ステルス5機で上空援護させて揚陸艦部隊を首都に向かわせるんだ」
(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)
マサ:「今度はステルス機らしいのが30機ほど発進してます。二手に分かれました。少ない方は上陸部隊の護衛のようですね。どっちも低いから撃てないなぁ。頃すのは厭だけど、ただ見ているだけで手が出せないってのもむかつくなぁ」
真理亜:「地上じゃステルスは見つけにくいから、見張ってるだけでも役に立つわ。陛下に通報したから、ちゃんと迎え撃つ体制は整うわよ」
マサ:「これでは退屈ですよぉ」
真理亜:「眠そうにしていないで、迎撃艇の飛行スケジュールを確認しなさい。向こうが不利になったら弾道弾を使ってくるかも知れないわよ」
(北米連強襲揚陸艦)
サターン:「上陸決行の命令が来たぞ。武器の点検をもう一度やっておけ」
タイタン:「体内装備の大砲ならいつでもオッケーですぜ。ぐへへへへ」
ジュピター:「ばかやろう。ふざけている場合じゃない。敵はかなり手強いぞ。巡航ミサイルが3割しか届いていない。制空権が不十分なまま上陸するかもしれん」
アトラス:「上陸前に船がやられたらお手上げですね」
レッドストーン:「ステルスが頭上で頑張っているから、それは無いでしょう。陸に上がってしまえばこっちのものですよ。所詮小娘どもが相手なんですぜ。鉄砲よりも、札束と鞭の装備を点検して置いた方が良いんじゃないですかね」
サターン:「札束と鞭を用意するのはかまわんが、用心は怠るな」
(海岸洞窟内の港に潜む地軍中型空母)
飛行隊長:「こちらの20機に対して25機が向かっている。劣勢だから無理するな。相手はステルス機だからいくらか足が遅い。一撃離脱で撃ったらすぐ逃げろ。レーダーや赤外が反射しにくいから、空対空ミサイルは可視光図形認識モードとする。標的が目に見えてから発射するんだ。見つからなかったら撃たずに帰ってかまわんぞ」
搭乗員:「揚陸艦が来ているようですが、どうしますか?」
飛行隊長:「陛下から上陸部隊の第一波は見逃すように厳命されている。上空に別の戦闘機群もいるようだし、見つけても攻撃せずに回避しろ」
搭乗員:「指をくわえているんですか。なんでまた?」
飛行隊長:「核を使われにくくするためだ。我慢しろ」
(北米連機動部隊 旗艦)
参謀:「島影に隠れていた空母から発進した戦闘機が向かってきましたが撃退しました。揚陸艦への攻撃は阻止できたとのことです。上陸予定地点周辺への爆撃も出来ました。まもなく上陸にかかります」
司令長官:「ステルスに損害は出たのか?」
参謀:「やられたのは1機だけです。敵の攻撃は及び腰です。これなら勝てますよ」
司令長官:「空母を叩けないかな。そいつが居なくなれば安心なんだが」
参謀:「戦闘機を収容した後レーダーから消えました。海岸の洞窟に隠れたようです。陸上から攻めて洞窟の基地から追い出さないと無理です。戦術核が使えれば別ですが」
司令長官:「核はダメだ。使ったら経済特区軍が参戦してしまうから許可が下りない。それよりも攻撃型潜水艦をそこの沖合に向かわせて待ち伏せさせるんだ。搭載機の発着のために出てくれば沈めるチャンスがあるだろう」
参謀:「この国の200海里内は海底聴音網が配備されているそうです。気づかれずに待ち伏せするのは無理でしょう」
司令長官:「それでも牽制にはなる。出て来れなければ制空権はこっちのものだ」
(北米連強襲揚陸艦)
サターン:「水陸両用装甲車を先陣にして、一気に海岸を確保する。発進だ」
タイタン:「邪魔してくる気配はないですね」
サターン:「さっきの空中戦は及び腰だったな。びびっていて来襲できんのかな。このままおとなしく降参してくれれば楽なんだがな。まだ油断はするなよ」
ジュピター:「陸につきました。鉄条網ひとつ無いし楽な上陸でしたね」
サターン:「クレイジーキャットを撃墜した奴らなのに地上では随分弱いな。そこらに潜んでいないか、偵察隊を出して探させろ。車両揚陸艦は来てるか?」
ジュピター:「来ています。しかし道が無いから浜沿いに進むしかないですね」
サターン:「宮殿は内陸だろ。道を造りながら戦車や装甲車を入れるのは大変だ。戦車は上陸地点の防衛に使うことにして、オフロードバイクで攻めるんだろな」
ジュピター:「連隊司令部からです。バイクを優先して揚陸するそうです。連隊主力が乗れる数が揃ったら進撃せよと言っています」
(ジャングル下の秘密地下鉄駅)
知子1世:「上からの報告だとバイクを積んだ船を浜に付けたから、それで来るわね。それじゃあ、東宮に連絡して40分後に袋の口を閉じさせなさい。対戦車ロケットぐらいは持ってこれるでしょうから関節に食らわないようにね。各班は待ち伏せ地点に移動開始よ」
マミ:「海岸のエキシマは封鎖に投入しますか?」
知子1世:「戦車が居るから砂に沈めたままにしておくように言って。定置雷撃装置で沖の輸送船を殲滅してしまえば、浜の戦車は日干しに出来るから」
ユミ:「周辺陣地の地軍はどうさせますか?」
知子1世:「要塞砲を使うと布陣がばれてステルスに空襲されるから撃たせないで。エキシマを核ミサイル用に温存したいから空襲を呼ぶようなことは避けさせるの。はぐれた敵兵が行った時だけ捕まえるように言っておいて」
(海兵隊バイク部隊)
連隊長:「ジャングルの薄いところを進んでいち早く宮殿に突入する。進め!」
サターン:「強姦大会の始まりだ。野郎ども、行くぞお!」
タイタン:「バイクなら宮殿まで30分くらいですかね」
ジュピター:「あっ、先頭のバイクが火を噴きました。また!。光線兵器です」
サターン:「バイクを狙われているぞ。降りて隠れろ。武器は全部持っていく」
前方の兵:「ぎゃあああぁぁぁ。う、腕が」
サターン:「どこだ?。全員ジャングルを探せ。誰か衛生兵を呼べ」
ジュピター:「あ、あそこ。木の間にロボットみたいな奴が!」
レッドストーン:「畜生!。これでも食らえ!」
近衛兵:「へへ。ライフルなんか効かないわよ。スペシウム光線!」
レッドストーン:「わあ。あちち、ライフルが溶けた」
タイタン:「おい大丈夫か?。ライフルはダメだ。対戦車ロケットを使え」
衛生兵:「負傷者はどいつだ?。うわ、腕が焼け落ちてる。こりゃ、止血は要らんな」
レッドストーン:「ロボットめ!。ロケット弾でも食らえ!」
近衛兵:「きゃあ。ほっ。関節じゃないわ。まだまだ!。スペシウム光線!やりい、今度は腕一本いただきだわ」
レッドストーン:「ぎゃあぁぁぁ。やられた、熱い、痛え」
連隊長:「あっちからも来たぞ。散り散りになるな。向こうのジャングルに集まれ。固まって対戦車ロケットで応戦しろ」
伝令兵:「大変です。沖の揚陸艦が海中から雷撃されています」
連隊長:「敵に潜水艦は居なかったじゃないか。どういうことだ?」
伝令兵:「海底に仕掛けた発射装置から撃っているようです」
連隊長:「そんなバカな。この島は珊瑚礁を外れたら急に深くなっているんだ。そんな深海底に施設を置く工事なんか出来ないはずだぞ」
サターン:「奴らはサイボーグです。人間に出来ないことをやってのけたんでしょう」
連隊長:「それで物資はどうなった」
伝令兵:「浜の陣地にかなり上がっていますので、2週間は持ちこたえられるそうです」
連隊長:「なるべくこっちに持って来させろ。ジャングルに陣地を築いて援軍を待つ」
(帝都 大本営内 沿岸封鎖システム管制所)
操作員:「揚陸艦6隻と護衛艦2隻の底に大穴を開けました。他の艦は脱出しました。護衛艦がアスロックを撃ってきましたが深すぎて効果が無かったようです。」
皇太子:「これで上陸部隊はいずれ日干しになるわね。空から補給する動きがあったら浜の砂からエキシマ砲を浮上させて妨害するのよ。但し、すぐ戦車にやられるから、出すときは沢山使わないで必要最低限でね」
操作員:「戦車を片づけられると楽になるんですが何かいい手はないですか?」
皇太子:「上空にはステルスが頑張っているから空襲は難しいわねえ。落とすにはエキシマ上げないといけないけど、ここで消耗して核使われるとまずいわ。地軍の秘密陣地から長距離砲撃つのも陣地がばれるし地中のエキシマが壊れるかもね。やっぱり、日干しになるまで待つしかしかたが無いなあ。我慢して頂戴」
(海兵隊 ジャングルの仮設陣地)
タイタン:「敵は小娘の筈だったのになんなんですかね、あのロボットは?」
サターン:「器用にジャングルを走り回ったり口を利いたりしていただろう。あれはロボットじゃなくて中に小娘が入っているんだ。奴らはサイボーグだろ。たぶん、装甲ボディーに組み込み出来るようになっているんだろう」
タイタン:「あれじゃあ、強姦なんか出来ませんよ。話が違うなあ。だいたい、いつまでこんなところに立てこもっていなくちゃならないんですかね」
サターン:「食料や弾薬なら2週間は保つだろう。奴らは積極的に攻めてこない。救援さえ来れば勝てるさ。まだ死者も出ていないんだしな」
タイタン:「死者がいないのには気がかりなことがあります。全然殺気を感じません。ロボットだからかと思っていたのですが、サイボーグなら意図的にそうしていますね」
サターン:「俺もちと気になっていた。負傷者は見事に手足を狙い撃たれている。あれだけ正確に撃てるなら、頭や胸だって狙えるのにな。まるで殺す気がないみたいだ」
ジュピター:「奴らは人口が少ないから兵力の不足で困っていると思います。俺たちを全員捕まえて脳改造で洗脳し、サイボーグの材料にする気なんじゃ?」
レッドストーン:「い、厭だああ。小娘サイボーグなんかに改造されるより殺してくれえ。強姦が出来なくなって、強姦される方になるなんて死んだ方がましだあ。うわあああん」
ジュピター:「おい、大丈夫か?。怪我で動転したな。おーい衛生兵、鎮静剤をくれ」
タイタン:「けっ。腕の一本くらいで泣き叫びやがって。それじゃ、小娘がお似合いだ」
レッドストーン:「今にみんなやられるぞ。逃げなきゃ、小娘にされちまう。ぶつぶつ」
サターン:「おいレッドストーン、出撃前の元気はどうしたんだ。しっかりしろ。いいか。政府はちゃんと最後通牒をしたんだ。たとえ捕虜になっても人権は守られる。そもそもだな、敵兵を捕まえて洗脳する技術なんてあるものか。マンガじゃないんだ」
アトラス:「謎の帝国なんですよ。捕虜の権利なんか無視するかも知れません。もし救援が来なくても絶対に降伏なんかしないで最後まで戦いましょう」
サターン:「ロケット弾が無くなったらどうにもならん。無駄に撃つんじゃないぞ」
連隊長:「このままではじり貧だ。奴らの出没パターンから陣地を割り出せないか?」
副官:「独特のタービン音がするのでやってくる大体の方角は推定できます」
連隊長:「その方向に地下基地でもあるんだろう。もしかしたら宮殿に通じる通路もな。弾が十分ある今のうちに攻めよう。遠くはないなら陣地を広げながら寄せられるだろう」
(北米連機動部隊 旗艦)
参謀:「揚陸艦が壊滅して後続部隊や補給物資が上げられません。困りましたね。なんとか孤立した上陸部隊を支援しないと。対戦車ロケット弾を要求しています。死者は出ていませんが、負傷者が多数出ている模様です」
司令長官:「艦載ヘリで補給物資を送って負傷者を回収するんだ」
参謀:「敵の対空兵器は大丈夫でしょうか?」
司令長官:「上空支援中のステルスには撃ってきていない。もし、隠れていても、撃ってきたら場所が判るから戦車で叩けるだろう」
(ジャングル下の秘密地下鉄駅)
知子1世:「予定通り釘付けには出来たけど結構しぶといわね。被害、どうなった?」
マミ:「対戦車ロケット砲で足の関節を狙われていますね。20人くらいやられました。予備の足部品が僅かです。それに我々の出没方向からここの位置を推定されています。対戦車ロケット砲をうまく使いながら少しずつこちらに向かっているようなのです」
知子1世:「敵が弾切れになるまでの辛抱ね。無理せず程々に足止めするのよ。いざとなったら、ここを引き払ってトンネルを移動コンクリート壁で封鎖するわ」
ユミ:「救援部隊らしいヘリが10機ほど向かってきているそうです。ロケット砲弾を補給されたら厄介だろうと、東宮様がご指示をお求めです」
知子1世:「砂浜のエキシマは半数を温存するように言って。それで足りるでしょう」
(上陸地点の戦車隊陣地)
指揮官:「間もなくジャングルの連隊主力に弾を送るヘリが頭上を通るぞ。敵に妨害の動きがないか、周囲を翼見張れ」
歩哨:「あ、見えましたね」
指揮官:「上を見ていないで周囲に注意しろ」
歩哨:「ん、砂が盛り上がって???。うわあ、で、出たあ。大変です!」
指揮官:「どうした、あっ。戦車!、こっちだ。外じゃない陣地内だ!」
歩哨:「ヘリが、光線に。落ちてきます」
指揮官:「戦車!。早くあれを撃て。何やってるんだ。間に合わん。わあぁ」
戦車兵:「やりましたよ。どうです」
指揮官:「遅い!。ヘリがやられた。一機弾薬集積所に落ちた。誘爆する。伏せろ」
歩哨:「ひいい、お助け」
戦車兵:「へ?。良く見えません。2基破壊したのに。ああ、弾薬が...」
(北米連 機動部隊旗艦)
参謀:「地中から出現した対空兵器で補給物資を積んだヘリが全部落とされました。一機が砂浜の弾薬集積所に墜落し誘爆を起こしました。戦車の弾薬が残り僅かです。重傷者も出ており、上陸地点の指揮官が撤退許可を求めています」
司令長官:「船もヘリも近づけないのだ、撤退だって難しいぞ」
参謀:「水陸両用車の救命ボートをかき集めて使うと言っています。確かにゴムボートなら雷撃されにくいでしょう。どうしますか?」
司令長官:「弾がなければ、居残っても捕まるだけだ。しかたがない。許可する」
参謀:「これでジャングルの連隊主力がますます孤立します。困りましたね」
司令長官:「敵地下陣地の入り口らしい地点が判って攻めているのだろう?首尾よく行けばまだ勝ち目があるのだから、やれるだけやらせてみよう。もし失敗して、弾薬が尽き逃げ場もなくなったときは降伏もやむを得まい」
参謀:「ところが部隊に変な噂が広まって頑固に降伏を厭がる者が多い様子なのです。こんな不利な状況でも攻めに転じているのだって降伏したくない心理からのようです。実は、こんな戦場では考えられないことですが、あの部隊に戦死者が出ていません。どうやら、敵が兵の手足ばかり正確に狙い撃ちしていて頭や胸を撃たれていないのです。攻撃してくるのはロボットのような装甲を付けたサイボーグ兵らしいのです。もっばら光線兵器で撃ってくるので手足を焼き切られても弾片被害は出ません。それで、海兵隊を全員捕虜にしてサイボーグの材料にする気だという噂が蔓延したのです。敵の一体に非常に射撃の正確な奴が居て、派手な色の装甲に王冠風の飾りを付けています。敵は皇帝が自ら率いる部隊で、何か特別な意図を持っていることまでは事実でしょう。このまま追いつめられたら、前代未聞の集団自決事件になりかねません」
司令長官:「困ったな。しかし幾らなんでも捕虜の人権は無視しないだろう。単に、核攻撃をおそれて上陸部隊の足止めを図っているだけではないのかね。部隊を動かし辛くさせる目的なら、なるべく殺さずに負傷者を増やすのは定石だよ。対人地雷以外の手段でそれをやるのは難しいとされていて、実行した例は知らんがね」
参謀:「私もそう思います。あの国だってある程度の外交交渉には応じてきたのです。しかし、わが軍は今までにこれほど殺意がない敵と遭遇した経験がありません。現場が混乱しておかしな噂がはびこるのも無理からぬ事です。どうしましょう?」
司令長官:「もはや私の手には負えないな。大統領に指示を仰ごう」
(北米連 大統領官邸)
国防長官:「困ったことが起きました。孤立した上陸部隊でおかしな噂が広まって...」
ヤブー:「まずいな。人権のために戦ってきたわが軍で集団自決などあってはならん」
コメー:「本当にただの噂で済むのでしょうか?。もし事実だったら大変ですよ。あの国は兵力が不足しているから強制徴兵した者をサイボーグにしているのでしょう。だったら、捕虜を洗脳して材料に使う事だって平気でやるかも知れないですよ。もし、連隊規模で敵のサイボーグが増強されてしまったら、二度と侵攻出来なくなります。手遅れになる前に弾道ミサイルを使った核攻撃を決断して下さい」
ヤブー:「なんて事を言い出すんだね。味方の兵がいる場所に核を打ち込むなどダメだ。捕虜をサイボーグの材料に使ったりしたら、必ず国連で制裁決議が成立する。あの国だってそこまで無茶をやる筈はないんだ。噂で核なんか使えるか」
コメー:「わが国が破れたら誰が決議を実行するんです?。満漢ですか?。ス連ですか?。今回だって制裁決議に尻込みした彼らがもっと不利なときに協力するのでしょうか。ヒロシマの時だって捕虜になった者が巻き添えになっていますが、国民は受け入れました」
国防長官:「コメーさん、あなたは冷酷な人だ。いっそ国防長官を兼務したらどうです?」
コメー:「違います。私なら無理矢理サイボーグの材料にされるより死を選びます。核攻撃は彼らを神に背いて生きるという死より酷い結末から救う、唯一の方法なんですよ」
国防長官:「兵には少数だが異教徒や無神論者も居るんだ。貴女の価値観を強制出来ない」
ヤブー:「うーん。敵のサイボーグが1個連隊も多くなったら、もう攻められなくなる。確かに今が最後の機会かもしれんな。ヒロシマの前例もあるか。解った。勝負をかけよう。上陸部隊には予告して、敵の地下施設が攻め取れるならそこに逃げ込めと伝えるんだ。国防長官、すぐに使えるミサイルは何基だ?」
国防長官:「やるんですか?。しかたない。でも皇帝を捕らえたときは中止させて下さい。数はあの島なら1発で十分ですよ。ICBM、SLBMどちらでやりますか?」
ヤブー:「極超音速機がやられたんだろう?。迎撃出来ない数で一気に片づけないとな。失敗して警戒されたら皇帝が地下深く逃げてしまう。核を使えば経済特区も参戦するぞ。その前に皇帝を討ち取って帝国を確実に崩壊させるなら、40基は必要だよ。届かせるのは難しいだろうが、牽制のため何基かは工場衛星に向けるんだ」
国防長官:「なるほど。ICBMとSLBM各20基で、40基ならなんとかなります。それ以上では満漢やス連に向け配備されたものを切り替えるため調整が間に合いません。工場衛星にはカラのロケットを打ち込んで牽制したらどうでしょう」
ヤブー:「それでもいい。準備にかかる時間はどうだ?」
国防長官:「月基地への緊急輸送用に待機しているロケットを回せばすぐ出来ます」
(とうとうコメーの意見が通ってしまいました。軌道警備部隊の娘たちは、40基もの核ミサイルを止めきれるのでしょうか。次回は引き続き(28)大戦(後編)です)

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