−−(29)決着−−

(地球L5点周回軌道を発進した待機隕石)

あざみ:「あーあ。何で私が当直の時にメテオ作戦が発動されちゃうのかなぁ。苦手の迎撃艇から外されて隕石の当番に回された時は気楽で良いと思ったのにぃ。これなら動きが遅いからあまり失敗はしないだろうけど、万一外したら大変だわ。皇帝陛下がやられちゃったから、仕返ししたいのはやまやまだけど、心配だなぁ。もし手元が狂って、関係のない国に落ちちゃったらどうしよう。それに、逃げ遅れたら、大気圏に落ちて死ぬだけじゃなくて放射能汚染の犯人だわ。悪名高い自爆テロ実行犯として、永遠に歴史に名前が残るなんて怖いよぉ。あ、通信だわ。中止命令だったら良いなあ。でも北米連が降参するわけないか」

”みくら”から朝子10世:「こちら、”みくら”艦長、隕石当直員応答せよ。護衛のためそちらに向かっている。誘導灯を点灯せよ」

あざみ:「あ、10世殿下。当直員のあざみです。いま点灯します。よかったぁ。護衛部隊が来たから、少々ミスっても、助けてくれるわ」

朝子10世:「誘導灯が見えたわ。距離3万`、速度差25`毎秒、予定通りだわ。北米連はICBMを打ち上げて隕石の軌道を逸らそうとしてくると予想されます。これからICBMが上がってくる筈の想定針路に迎撃艇5機を出します。ICBMへの対処は迎撃艇が行うから隕石移動装置操作員は予定軌道を維持すること。無理な操作で落下地点が狂ったら取り返しがつかなくなるから回避はしないように。”みくら”は離脱支援のためそのまま上昇し、回り込んでそちらの後方につきます」

あざみ:「それって、私が原爆の標的になるってことぉ!。怖いよぉ。びえぇぇぇ」

朝子10世:「大丈夫よ。さっきSLBMを16発も撃墜したチームなんだから。指揮官としてリエも加わっているから、不意打ちの効かないICBMなんか楽勝よ。衛星工場からは大目付も狙っているし、貴女は訓練通り邪魔が無いつもりで良いわ」

あざみ:「そうですか。よろしくお願いします」


(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)

マサ:「あっ、北米連の本土からICBM28基が打ち上げられました。弾道コースをとらずに真っ直ぐ上がっています。とりあえず間引かなくちゃ。ラブラブ光線、連射連射...よし5基撃墜、もう一声、ん、3基か。うーん、射界を出ちゃった。早いなあ、ICBMにあんな余力有ったかな」

真理亜:「おそらく、自然の隕石に備えた計画があって余裕をとったのかな。それに、これだけ時間が有ればデコイを降ろして軽くできるでしょう」

マサ:「なるほど。隕石狙いなら分離せずに加速したまま突っ込ませますよね。でも、デコイがないなら、リエの迎撃艇部隊はやりやすいですね」

真理亜:「たぶんあっちは大丈夫よ。でも北米連ならまだミサイルを持ってるわね。最後に大気圏上層で勝負かけてくるだろうから、しっかり落とすのよ」


(北米連大統領の空中待避機)

国防長官:「ICBMを打ち上げましたが、発射直後に8基が撃墜されました。隕石にも護衛が付いているでしょうから、届かせるのはやはり難しいですね」

ヤブー:「うーむ、ダメそうか。後は最終段階で余所に逸らすしかないな。ICBMの残りはたった2発だが、もっと集められないのかね」

国防長官:「本来の想定なら50発も使ったらとっくに世界が滅んでいるんです。宇宙からの迎撃がこんなに効果的に出来るとは全く予想していませんでした。乗員の生命維持に重量をとられないサイボーグが操縦しているから出来たんだ。ロボット兵器と違ってデコイは見破るし限界を超えて粘り強く撃ってきますからね。皇帝を倒したのだって大量のデコイのお陰で最後の1発が偶然すり抜けただけです。やはり、わが国もサイボーグ宇宙飛行士を本格的に開発していれば良かったんだ」

コメー:「何を馬鹿なことを言ってるんですか。それより別の手を考えたら?そうだ、ICBMは無くてもSLBMはまだ残っているんでしょ。射程が短いといっても一旦宇宙空間に出る力はあるのだから使ったら?」

国防長官:「海軍に指示してみます。...ふむ、少しくらい何とかならんのか?なに、改修開けのが1隻居るのか、そいつだけでも良い、発射準備を急げ...。満漢やス連、印度向けに配置されていた艦は、今居る場所が悪くて無理でした。帝国周辺海域にいた艦は先の戦闘で10隻が沈められ、生き残った1隻も弾切れです。SLBMは常時仮想敵国の周辺海域に配置されますから本国周辺には殆ど居ません。改修を終えたばかりの艦が1隻だけ、6発なら発射できるので手配しました」

ヤブー:「合わせて8発か。厳しいなあ」

コメー:「我々が神に背く者に負けるはずがないです。届くと信じましょう」


(リエ隊)

リエ:「マサが8基間引いてくれたから残りは20よ、一人5基ずつ割り当てるわ。私が20`前に出て取りこぼしを撃つけど、基本的に全部やる気で撃ってね。まず、粘着焼夷弾でエンジンを殺して、念のためビームで弾頭も焼くのよ。敵がミサイルを自爆させるリスクもあるから針路は1`以上離すこと。以上」

ハル、ミツ、マツ、ササ:「了解」

ハル:「ミサイル群後方600`、速度差秒速4`、加速設定0.04`/秒/秒」

ミツ:「横位置修正、割り当て中心に対し左1.2`に調整、会合まで2分10秒」

マツ:「速度差0.2`毎秒。ミサイル発射管制同期良し。軸線、射撃方向に調整」

ササ:「ミサイル有線制御リンク確立。発射始めます」

ハル:「先頭のミサイルに初弾接触、焼却開始、2発目修正左0.1`、接触」

ミツ:「3基目、エンジン損傷確認、左にそれます。4基目着弾」

マツ:「4基目エンジン破壊。弾頭処分、マンコービーム!」

ササ:「5基目接触、焼きます。あれ?。穴空いてるのに真っ直ぐ飛ぶなあ。弾頭潰さなくちゃ。ワレメービーム!。出力最大、10連射。壊れろっ!」

ハル:「あっ、1基自爆、わあっ眩しい、緊急回避、化学エンジン全開、1基逃げた。こら待てぇ、あっ。左化学エンジン不調、破片を受けたようです。追撃中止します」

ミツ:「こちら爆風の影響有りません。攻撃続行します。5基目エンジン損傷。弾頭壊します。オナニービーム!10連射...穴だらけです。割り当て完了」

マツ:「こちら4基完了。5基目は自爆の爆風で針路それました。念のため追います。軸線修正、化学エンジン20%で噴射、目標2`、粘着焼夷弾頭ミサイル発射!」

ササ:「5基目、軌道変わりませんが弾頭は穴だらけになりました。とどめ刺します。ワレメービーム!。出力最大、10連射。ロケットからもげました。割り当て完了」

リエ:「撃ち漏らしは1基ね。ホイ来た。距離2`。粘着焼夷弾頭ミサイル発射!念のためもう一発発射。よし接触。溶けろ溶けろ...死んだな。弾頭処理だ。原子力ビーム!10連射。よーし、スカスカになったね。はいお終い。ハル!。怪我はない?。メインエンジンは大丈夫なの?。自航で帰れるかしら?」

ハル:「操縦席には被弾有りません。左化学エンジンは酸化剤が入りません。メインエンジンは機能しますが推進剤タンクに漏れがあるようで減っています。ジャイロと右化学エンジンは正常なので、組み合わせれば一応動けます。このまま推進剤が無くなると長距離移動が出来ないので、外に出て穴を調べます」

リエ:「今もし追加のICBMが飛んできたらここは通り道よ。危険だわ。船外作業はやめなさい。他の3人に曳航させて”みくら”に向かいなさい。みんなミサイルを使い切ってしまったから、どうせ補給が必要よ。ミツ、マツ、ササ、デブリ捕獲網でハル艇を曳いて”みくら”に向かって頂戴。私はまだミサイルが残っているから、この針路に留まって見張りを続けます」


(隕石&”みくら”)

あざみ:「あ、あの光は核爆発ですよ。怖いよぉ。迎撃隊やられちゃったんじゃ?。次は私の番だわぁ。びえぇぇぇ。お助けぇ」

理美:「視認しました。全ての迎撃艇健在です。最後のミサイルを追撃中です」

朝子10世:「真空中じゃ爆風の2次被害がないから、1`以上離れれば効かないわ。あざみ、落ち着いて針路を維持しなさい。ICBMは全滅したそうよ」

あざみ:「でもぉ。ハルさんの艇が損傷したって。他の娘も引き上げて来ますよぉ。次が来たら、やられちゃいますよぉ。うわあああん」

朝子10世:「まだリエが残って護衛中よ。それにいくら北米連でも弾切れでしょう。もうちょっとで、大気圏突入姿勢に変換よ。後は貴女の責任じゃないわ」

あざみ:「はい、頑張ります。隕石移動装置推力方向変換。固体ロケット軸線合わせ。回転運動加速始め。自転速度上昇。固体ロケット点火8分前。タイマーセットよし」

朝子10世:「そうそう、その調子。巧いじゃないの。貴女、本当は才能有るのよ。さあ、離脱準備よ。連結器のロック解除は良い?」

あざみ:「はい。連結器補助ロック解放。回転運動同期良し。突き放します。固体ロケット自動点火装置作動信号確認。離れました。隕石移動装置自航開始」

朝子10世:「隕石が自力降下に移ったわ。大気圏が近いからリエも戻りなさい」

リエ:「あと8分は、安全に留まれます。引き揚げはそのタイミングでやります」

朝子10世:「貴女の技量ならその通りね。任せるけど無理しないでよ。理美、ハルたちと隕石移動装置を拾うから、ランデブー軌道に乗せて頂戴。艦が大気圏に落ちないように、一旦降下して回り込んで上昇気味で収容するのよ」

理美:「メインエンジン噴射、対地高度、収容対象を下回りました。姿勢変換。上昇。メインエンジン推力全開。迎撃艇、軸線に捕らえました。口開けます。チョイ減速」


(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部 大目付制御室)

マサ:「隕石の固体ロケットが点火しました。予定通り突っ込みます。あ、北米連本土からICBM2基発射。あ、あーっ、あんなところからも。東海岸付近からSLBM6基も撃ってきました。させるか、ラブラブ光線連射連射。くーっ、下層だと効かないなあ、お願い落ちて頂戴ラブラブ...」

迎撃艇からリエ:「お困りのようね。ダメ元で残りの粘着弾発射してみるわね。大気圏内じゃ有線使えないから投げっぱなしだけど運がよけりゃ硝酸ひかっかるし。んじゃ、私はこれで限界だから上昇するわね。あと頑張ってよ」

マサ:「サンキュー、リエ、粘着弾見えたわ、1個はミサイルに交錯するわね。他を狙ってラブラブ光線連射連射、3基、4基、5基、6基、あと1基、やった。リエの弾はどうかな、当たったように見えたが...あ、隕石にぶつかる。頼むよ、壊れていて頂戴!。ん?...不発かな。何も起きないぞ。よしそのまま真っ直ぐ行ってくれ。やったー、陛下の敵をとったぞ」

真理亜:「終わったね。これで当分の間北米連は責任追及とか国内問題で手一杯よ。我々は体制再建と友好国を含めた一層の安全確保に集中できるようになるわよ」


(北米連大統領の空中待避機)

国防長官:「ダメです。全弾迎撃されました。最後のは届いたのに不発でした」

コメー:「ああ、あれ、窓の外!」

ヤブー:「衝撃波が来るかもしれん、シートベルトを締めろ。うわあ」

国防長官:「ふう、ここまでは大した爆風が来なくて助かりましたね」

ヤブー:「自分のことより、下の市民の心配をせんか!」

コメー:「埃が舞い上がっていて様子が分かりませんね。被害が少ないと良いけど」

ヤブー:「望みは薄い。首都はクレーターになったろう。我々は首を洗った方が良いな。残念だな。国防長官、どうして最後の1基もダメだったんだ」

国防長官:「よく判りません。光線は受けなかったようなのですが、衝突前に壊れました。敵船が何か小型ミサイルのような物も発射していたようなのでそれに当たったのかも。あ、首都から500`離れた基地から報告です。大きな揺れのあとに弱い核爆発...ふむ、...どうやら、不発で隕石に刺さった核弾頭が地上で臨界になったようです」

ヤブー:「起爆出来ずにいたのが押しつぶされて点火したのか。ツいてないな。地中深くめり込んで爆発したのなら良いが、クレーターに加えて核汚染では大変だぞ。とにかく、被害対策をせねばならん。無事な基地を探して機を降ろすんだ」


(”みくら”艦橋)

理美:「隕石移動装置、収容しました。間もなくリエ艇も入ります。来ました。口閉じます」

朝子10世:「収容したら静止軌道に向けて加速するから、各艇の固定を確認なさい。リエ!。ご苦労様。理美の目撃したところだと最後の不発は貴女の弾が効いたようよ。ぎりぎりまで粘った甲斐があったわね」

リエ:「へっへっへぇ。最後はリエちゃんにお任せって、いつも言ってるじゃないですか」

朝子10世:「ところで、迎撃隊は自爆したミサイルの放射線浴びたでしょう?。大丈夫?」

リエ:「私は、こういうことも有ろうかと皮下に水銀を充填してきたからまず大丈夫です。表皮も主要部分はダイヤモンド膜でコーティングしてますから素粒子の反射率は抜群でしてね。やっぱり、サイボーグは余分な財産があったら、体にお金をかけておくのが一番ですよ。ハルたちは、工場衛星に着いたらすぐに検査を受けさせた方が良いでしょう」

朝子10世:「地上の安全が確認できたらなるべく早く降ろして全面整備を受けさせましょう。首都に隕石が落ちたら北米連も戦争どころではなくなるから、時間はかからないわ。そうだ、もう攻撃は十分だから後続の隕石を待機軌道に帰す命令を出さないと」


(北米連 某軍事基地)

指揮官:「大統領機がここに着陸する。基地警備兵は全員配置につけ」

ジュピターの弟・ジュノー軍曹:「大統領が来るって!。あいつら兄さんを核で...。兄さんは俺達一家の誇りだったんだ。それを使い捨ての駒のように。許せねえ。今度だって、首都市民を見捨てて逃げてきたんだ。人でなしの冷血指導者どもめ」

指揮官:「大統領。この基地はあまり被害を受けておりません。ご安心を」

ヤブー:「ご苦労。首都周辺の状況を確認したい。...ん?」

コメー:「あっ!、何をするの!」

ジュノー:「ヤブー、コメー、兄の敵だ。氏ねっ!」

ヤブー、コメー:「ばた、ばた」

国防長官:「あわわわ、わ、わしは命令されただけ...お助け、ひっ、じょろろー」

SP1:「あの警備兵だ、撃て撃て」

ジュノー:「ぐえっ。ぐえっ。兄さん、やったぜ...がくっ」

SP2:「大変だ、大統領と国務長官が撃たれたぞ」

SP3:「頭を撃たれている。即死だ。2人とも暗殺された」

SP1:「犯人の身元を調べろ。制服を着ているが本物の軍人か?。認識票は?」

指揮官:「そいつは、ここの警備班のジュノー軍曹に間違い有りません」

SP2:「本当だな?。まさかお前も共犯者じゃないだろうな?」

指揮官:「滅相もありません。確か、こいつの兄は今回の上陸作戦で戦死しています」

SP3:「すると、個人的な恨みか。とにかく副大統領に連絡を取るんだ」

国防長官:「私は核使用に反対したんだ...ぶつぶつ」

指揮官:「ち、長官。何をなさって居るんです。副大統領に連絡が付くまで指揮を!」

国防長官:「わしはもういやだ。クビにしてくれ。ぶつぶつ...」


(国連 安全保障理事会)

北米連・副大統領:「...このような自体に鑑み、我々は一方的な停戦に踏み切ります。なお、舞い上がった埃によって北部各州の農産物は壊滅し食料の生産力は激減しました。国民保護のため、我が国は全ての国境を封鎖し、食料の輸出を全面禁止とします」

スレイブ共和国連邦代表:「そんな勝手な話があるか。巻き添えの寒冷化で困ってるんだ。あんたらが、くだらない宗教的価値観を振りかざして核なんか使ったせいだ。責任取れよ」

周:「我国、餓死者発生必至!。断固余剰人口移民受入要求!」

大東亜国首相:「あー、そんな殺生な。うー、今まで買え買えと言ってきたのにぃ...」

北米連・副大統領:「うるさい負け犬!。休耕田とか高級米とか止めて目一杯耕せよ。そもそも狭い国で道路や橋ばかり造っていて農地の整備をさぼったのは自業自得だろうが。大体だよ、寒冷化ったって、たかが50年前の気候に戻るだけだよ、自己解決しろや。え、移民受け入れろだと。うちにそんな余裕はないよ。なんなら力ずくで来るが良い。先日の戦いを見ただろう。核を使ったら共倒れになるだけだ。米が無いなら竹でも食えや」

周:「不許!。我国決断、対宇宙娘々帝国提携。為食料節約食肉捻出、手足切断機械化推進。為其費用捻出、北米連系進出企業全面接収!。唯一撤回条件余剰人口移民受入也!」

スレイブ共和国連邦代表:「なるほど。我が国もいよいよ困ったらそうするかな。北米連さんよりは、苦戦しても核を使わなかった小娘帝国の方が話が分かりそうだ」

西欧連G国代表:「国境封鎖に食糧貿易停止ですか。要するに鎖国って事ね。それで、今まで大きな顔して仕切ってきた中東の軍事バランス維持は放棄ですか?石油の確保はどうするんです?。我々としても移民規制の強化で対抗するしかないですね」


(静止軌道工場第一衛星 軌道警備部隊本部)

真理亜:「北米連の敵対行動が全て停止したことを確認したから、地上との行き来が出来るわ。これから北半球の寒冷化に備えて備蓄物資を降ろす便が大量に出るから、忙しくなるわよ。一部の便は特定友好国に直接降りるので休養入りする貴族が行きがけに警備で乗るようになるの。藻前は10日後にN共和国行きの便に乗ることになるからそのつもりで居てね。それから、生産を目一杯に増やすので水の需要が増えるから隕石資源の収集も強化されるわ。休養開けには長期飛行をやることになると思っていてね。次に上がったら暫く売春は無しよ」

マサ:「この足のまま外国に降りるんですか?。放射線漏れがやばいんじゃ?」

真理亜:「無事カプセルが向こうの警備兵に渡れば、すぐに迎えのヘリで空母に収容されるわ。物資を狙う盗賊に遭遇したら構わず戦うしかないけどね。藻前ならその足で地上戦も楽勝よね。何しろ、100年祭で無理してまで出たがったぐらいにバレエ大好きなんだから」

マサ:「かわいい事するのは好きですが、ポワントで戦闘は出来れば避けたいですけどね。盗賊が出る心配ってかなり高確率なんですか?」

真理亜:「北米連が食料輸出を全面禁止したために、世界各地で食品の略奪が発生しているわ。N共和国自体は帝国の援助が受けられるから治安も大丈夫だけど、余所から海賊が来るのよ。降下カプセルをどんぴしゃで空港に降ろせれば安全だけど、風で流される心配があるでしょ。パラシュート開いてるときに突風にあおられたら、いくら藻前の操縦でも流されるわ。もしも島から外れたり、海岸に降りるようになったら海賊に襲われる心配があるのよ。藻前なら、腕がロケットパンチのままだしアイビームも良いやつだから銃は要らないわね」

マサ:「そういえば、このアイビームは陛下の形見になっちゃいましたね」

真理亜:「そうね、それから1ヶ月後に新陛下の即位式と新皇太子の就任式があるわよ。地上に降りている貴族は全員参列するのよ。帰ったら新しい服も作らなくちゃね」

マサ:「大喪の礼はないんですか?」

真理亜:「陛下は核の熱風で蒸発してしまったでしょう。遺体がないから死亡未確認なの。新陛下の即位は、皇室典範の前任者が1ヶ月以上消息不明の時という条項に依るのよ。失踪宣告が確定するまでには10年かかるから、権力の空白を避ける仕組みなのね。でも、大喪の礼は死亡確認がないと出来ないから、10年後に扱いを決める事になるわ」

マサ:「そうなんですか。陛下、宙ぶらりんの地縛霊みたいになっちゃったんだ」

真理亜:「私らだって宇宙で乗艦が遭難すれば、たちまちそういうことになるわ。サイボーグの死亡事故は滅多にないけど、航宙士なら一応覚悟しておいた方が良いわよ」

マサ:「そうですね。でも真理亜様と泣き別れは厭だなあ」

真理亜:「次の任務はおそらく資源収集艦だから、一緒に乗れるように希望上げとくね。10世殿下が遠出の出来ない身分になってしまうから、おそらく艦長を命じられるわ。どうせ、藻前を引き取ってくれる部隊なんか無いから、自分の艦で使うしかないしね」


(北米連 愛国民兵会会長の牧場)

パニック人の盗賊:「おお、噂通り沢山居る居る。今夜は久々のすき焼きだ。野郎ども、大きな音を立てないようにして柵を壊すんだ」

リンダ:「むむ、針金を切る音だわ。話し声も聞こえるな。あれで聞こえないつもりか。私には、ばればれなのになあ。どこだ?。居たわ。あそこか。5人ね。この体じゃあそっと近寄るのは無理だから一気に突っ込むしかないのよねえ。こらー!。泥棒!。覚悟しなさい」

パニック人の盗賊:「うわあ、ロボットが出た。撃て撃て」

リンダ:「そんなもの通じるか。今は、非常事態法が有効だからね。盗賊は死んで貰うわよ」

パニック人の盗賊:「ひゃあ、お助け、プチッ、グシャ、...」

リンダ:「ほい、5人圧死と。こいつらも次々よく来るよな。一人も生きて帰れないのに」

愛国民兵会会長:「おお、またやったのか。ご苦労さん」

リンダ:「苦労と言うほどの手応えもないんですが、連日だから死体が随分たまりましたね。始末どうしますか?。警察は街の治安維持に手一杯で引き取ってくれないですよね。経済の混乱で火葬場もやっていないし、あってもこいつらに使うお金なんか無いですよね」

愛国民兵会会長:「古農具屋で肉骨粉製造機を手に入れたんだ。牛の餌に加工してしまおう。寒冷化のせいで餌の穀物が高騰して困っているから、この際有効利用だ」

リンダ:「肉骨粉て、昔の狂牛病事件で使用禁止になったんでしたよね。大丈夫かな?」

愛国民兵会会長:「あれは、牛のくず肉を使ったせいで結果的に共食いになったからだ。絶対とは言えないが、人間の肉骨粉なら共食いではないからかなり安全だろう。貧乏なパニック人なら、あんまり牛肉を食ってないだろうから尚更だよ。いまどき、飢え死にしたくなかったら、小さなリスクには目をつぶるしかないな」


(静止軌道第3工場衛星 貨物梱包室)

マサ:「わざわざここまで見送りに来ていただいて嬉しいですけど、仕事大丈夫ですか?」

真理亜:「北米連の潜水艦が全部本土沿岸に引き揚げてしまったから暇だわ。まだ隕石が落ちるんじゃないかと畏れて、残ったSLBMで迎撃に備えているのよ。機動部隊や攻撃型潜水艦もみんなSLBMの護衛と沿岸封鎖に回されているわ。核使用を決めた大統領と国務長官が暗殺されて、前副大統領が昇格したでしょ。帝国はこれを国民による処断と見なしてこれ以上の隕石攻撃はしないと通告したんだけどね。疑心暗鬼は当分消えそうにないわ。お陰で私も明後日の便で休養に降りることになったのよ」

マサ:「なあんだ、休養入りするなら一人じゃ寂しいから一緒に降ろしてくれればいいのに」

真理亜:「そうも行かないわ。貨物を目一杯積むから、警備は1人しか付けられないのよ」

マサ:「そういえば、通常は乗員が乗るスペースにアルコール製造装置が積まれてますね」

真理亜:「経済の混乱でN共和国は燃料に困っているの。それで食料を転換できるようにね。これを奪われると、N共和国の警察や軍が動けなくなるから、絶対に盗られちゃダメよ」

マサ:「梱包品名が女子高生ダッチに当たってセーラー服なんでばっちり正義の味方ですよ。もしも海賊なんか出たら、月に代わってこのセーラー・マサがお仕置きしてやります。今日は気分がいいので、まず失敗しない気がします。お任せ下さい。でわ、一足お先に!」


(カプセル降下中)

マサ:「高度30`。外壁温度正常。落下予定地点はN国際空港中央にまっしぐらと。慣れないコースだったけど、ここまで来ればひと安心だわ。予備パラシュート作動。あら、流されてるな、風強くなったか。修正北へ2`、ありゃあ、足りないか。寒冷化で突風が吹きやすくなったかな。5`追加修正、メインパラシュート開...。おいおい、この重いカプセルがまだ南に流れるかね。こりゃ海岸に降ろすしか無いなあ。下の様子は、...げ、マジかよ、武器持った奴が5人。制服じゃないから海賊だわ。とりあえずパラシュート放出、逆噴射。着地は成功か。海賊はどうするかな。5人倒すのは簡単だけど、外装に傷つけたく無いなあ。ダッチのふりして様子見るか。とりあえず、ここってN共和国だから無線LANから音声で電話に通じるよな。大統領出るかしら。もしもし、...あ、大統領府、帝国のマサ少佐ですけど大統領に。ええ、そうです、警備で乗ってきたんですが風でカプセルが海岸に着いちゃって、...海賊らしいのが近くにいましてね。片づけるのは簡単ですが後始末の要員をよろしく。それから寄越す部隊には私のそば10m以内に近づかないように言っておいて下さい。私ら、宇宙帰りの時は足から放射線まき散らしているので危ないですから」

海賊の頭:「着地したぞ。噂に聞いていたがあんなにでかいのか。まるで2階家だな。あれに食料やら医薬品やらの援助物資が詰まってるんだから、奪い甲斐があるぜ。今夜は久しぶりに白いおまんまが食えるぜ。小娘帝国さんごちそうさまってな。上にもハッチがあるな。ハシゴとバールを持ってこい。回収部隊が着く前に開けるんだ」

海賊子分:「へい、持ってきやした。でも宇宙船の扉でしょう。バールで開くかな」

海賊の頭:「宇宙船ったって、使い捨て式のカプセルだろう。根性が有れば開くぞ」

海賊子分:「結局、力仕事するのは俺たちなんですけどね」

海賊の頭:「つべこべ言わずにとにかく開けるんだよ。急げ!」

海賊子分:「へいへい、うんむむむ、よいしょよいしょ。あ、少し動いた、もう一息」

マサ:「呆れたわ。バールでこじ開けちゃったよ。入ってきた」

海賊子分:「2階の荷物は機械類のようですよ。品名はアルコール製造装置ですね」

海賊の頭:「そいつはラッキーだ。今一番足りない物だぜ。みんな来い」

海賊子分:「真ん中に別の荷物も乗ってますね。ん、女子高生ダッチぃ?。何だぁ?」

海賊の頭:「ダッチアンドロイドか!。えらく高価な物らしいぞ。中身を確かめろ」

マサ:「おっと。寝たふり寝たふり」

海賊子分:「おお、本当に女子高生だ。だけど足が変だな。ルーズソックス履いてないや。バレエヒールのブーツみたいだけど、金属製で妙にごついのは萎えだな」

海賊の頭:「所詮ロボットだから重くて普通の靴は無理なのかな。ふむ太股は良いよな。やっぱ、女子高生は太股だな。パンツはどうかな?。おい、手鏡貸せ!」

海賊子分:「わざわざ手鏡使わなくたって、スカートめくって直に見ればいいのに」

海賊の頭:「うるせえ!。気分だよ気分。ん、おお、これは!。伝説の...」
(注.パンツに関しては、6から7章でしつこく書いたのでそちらを参照下さい)

マサ:「(全員射程圏だな。)ラブラブ光線、連射、ムーンスパイラル・キーック!」

海賊子分s:「あちい。銃が」「ぐえっ」「え、動いた?。ぎゃあああ」「げぼっ」

海賊の頭:「くそ、撃て、あちちちち、ダメだ、逃げろ!」

マサ:「ラブラブ・パーンチ!、減速、首根っこ押さえっと。おいこら。ドロボーめ。好き勝手言ってくれたわね。萎えとは何よ。失礼しちゃうわ。お仕置きしてやる。え、私の体重が重いって?。どう?。これで重いって言うわけ?。ぐりぐり」

海賊の頭:「あわわわ。喋った。俺は萎えなんて言ってないよお。お助け」

マサ:「ふん。もう手遅れよ。この足はプルトニウム電池入ってるから放射線浴びたわ」

海賊の頭:「えっ。そんな危険な足で踏みつけないでくれ。癌になっちゃうじゃないか」

マサ:「おまいら、いまさら放射線の心配したって意味無いんじゃないかしら。この非常時に緊急物資を強奪しようとしたら、いくらぬるいN共和国でも死刑確実ね」

海賊の頭:「死刑...がくっ。畜生。ついてねえ」

マサ:「このセーラー・マサ様に失礼なこと言ったんだから、氏んでも仕方ないわね。あ、キタキタ、回収部隊だ。こっちよぉ。まず、賊を放り出すから引き取ってぇ。指示聞いてるわね?。危ないから私が離れるまでカプセルに入って来ちゃダメよ」

回収部隊長:「承知しております。マサ少佐、帝国の援助物資、感謝します。手を焼いていた海賊の始末までして頂き、有り難うございました。沖の空母から連絡を受けております。間もなくお迎えのヘリが来るそうです」


(帝国の娘達の活躍で、とりあえず、戦いは収まりました。次回からは、地球外素体生産地の建設に向けて地道な取り組みを始めたいところですが、石油も食料も足りないので、まだ多少の邪魔は入るでしょう。次回予告(30)再建計画)

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