−−(33)金星冷却作戦−−

(帝国首都 宮殿)

真理亜:「無事戻りました」

朝子10世:「寄り道までさせて悪かったわね。何しろ最近財部大臣がうるさいでしょ。金星の件は財政への影響が軽微な範囲でやって欲しいと。貴女達のお陰で助かったわ。1基目のプラットフォームが浮かんでしまえば財部省が文句を言いにくくなるからね」

真理亜:「御意。こいつの軽い頭もたまには役に立ちました」

朝子10世:「大気圏突入にスリップストリームを使う案はマサが考えたの?」

マサ:「航行中に22チャンネルで見たF1ネタがヒントになりまして」

真理亜:「なんだ、22チャンネルのネタだったのか。藻前は相変わらずね。もうちょっと貴族らしい高尚なものを見ろといつも言ってるのにしょうがないな」

朝子10世:「まあ良いじゃないの。作戦さえ成功すればボーナスも出るんだし。私なんか、宇宙の任務に就けなくなったせいで年収が減っちゃって惨めなのよ」

マサ:「えっ。東宮様ともあろう方がそんな」

真理亜:「皇室予算って結構渋いのよ」

朝子10世:「そうそう。名目額は大きいようでも悲田院の運営費やら行事費やら大変でね。ところで、貴女達は今度のことで実入りも良いようだしそろそろ生殖バンクを使ったら?」

マサ:「え、あのその...」

真理亜:「陛下のご意向も?」

朝子10世:「そういうこと。最近は宇宙艦に乗り組む幹部が不足して困っているでしょ。金星の事業は何十世代にわたり続くから次代の貴族育成を怠っていると将来もっと困るわ。特に貴女達は航宙士の適性が高いからしっかり子孫を残して貰わないとね」

真理亜:「仰せの通りです。すぐにバンク使用願いを出します。マサもよいな?」

マサ:「ええそりゃ嬉しいですけど、人の親になるなんて想像がつきません」

朝子10世:「一般のシビリアンと違って、やることといっても電子申請書出すだけよ。育児だって、青の公家なら執事や小間使いが皇室より充実しているくらいだから楽よね」

マサ:「楽も良いけど、どうせなら自分のオッパイ吸わせたいですね」

真理亜:「そうか。それは任務の時期との関係で難しい鴨ね。冥王星航路はフル運行だし」

朝子10世:「運行スケジュールもきついけど、ちょっと考えておいて上げても良いわよ」

真理亜:「申し訳ありません。あまりこいつの勝手な希望なんか気にしないで下さい」

朝子10世:「地上でやって欲しい厄介な仕事もあってね。いずれまた話します」

マサ:「(ぎくっ。厄介な任務を招いてしまったか?)御意」

真理亜:「(馬鹿者。藻前は一言多いんだよ。)失礼します」


(ハルの店、”カロンの天然氷” 新装開店)

みどり:「いらっしゃいませ。あ!、真理亜侯、マサ侯...えーんもう見られちゃったぁ」

ハル:「うちはきちんと風俗営業税を納めている優良店なのよ。いつまで恥ずかしがってるの!宙軍の上官だってここに来たらお客様なんだから、恥ずかしがらず普通に接客しなさい」

マサ:「みどりが降りてきたのは知っていたけどここを手伝っていたのね」

ハル:「ええ、前の任務はカロン基地建設だけでも成功だったのに金星の件でボーナス追加でしょ。財産もだいぶ殖えたので、店の内装を実際に見てきたカロンの風景を取り入れて改装したんですよ。それが高級感があって良いと評判になって繁盛していまして、私一人では酒造能力が足りません。ちょうど、みどりが金星の後作業を終えて降りてきたので早速手伝わせているんです」

真理亜:「なるほど、暗闇に浮かぶ冥王星をバックにした氷のステージってシックで良いわね。みどり、風俗は宇宙事業と並んで帝国の屋台骨を支える重要産業なんだから胸を張ってやりなさい」

みどり:「建前は仰るとおりですが、尿道からグラスに注ぐのって実際やってみるときついですよ。お姉ちゃんたら、よくこんなあきれた水商売考えついたわね」

マサ:「呆れたとか言う割には巧くやっているじゃないの」

みどり:「金星の件ではお姉ちゃんに敵わなかったでしょう。追いつくには基本からと言う事です。休養期間も含めて平素から行動のしかたを見習っておけば得るものもあるかと思ったんです」

真理亜:「スリップストリームの案を考えたのはマサよ。日常の行動は真似して欲しくないけどね」

マサ:「そんなあ。子供が出来てもそう仰るんですか」

ハル:「えっ!?。いよいよ生殖バンクを?」

真理亜:「今日東宮様のところへ帰還報告に行ったら、そろそろどうかって言われちゃってね」

みどり:「おめでとうございます。お二人の子供なら必ず良い素体になれるから楽しみですね」

マサ:「コギャルを辞める気はないけど、自分でオッパイ吸わせてみたいし良い機会だわ」

真理亜:「藻前がそんな勝手を言うから厄介な任務が来そうよ。相変わらず一言多いよ」

マサ:「たかが地上任務でしょ。たいして難しくはならないでしょう」

ハル:「ところで、艦長や副長の予定がそんなんじゃ私ら一般乗組員はどうなるんです?」

真理亜:「さあねえ。戦争で消耗した沿岸封鎖システム整備とかで海底の仕事が入るのかな。あとは、あの時期に休暇が未消化の娘も多いから休み延ばして辻褄合わせるかね。特に、当時”みくら”に乗っていた娘は冥王星から帰ってすぐ戦争だったから消化率悪いし。我が艦なんか代わりの居ない操舵員がともに該当者だからどう考えても次の出航が遅れるわ」


(経済特区 アリババ連盟合同総領事館)

総領事:「当方の希望する規模の氷隕石が、あと3年で投下できるそうですね」

弥生:「ええ、移動作業の方は順調でして既に行程の6割をこなしています。それで、人工的なオアシスの形成が可能か、予定地の地質を調べておきたいのです」

総領事:「私どもの地質学者が言うには砂の下には保水層もあるそうですが」

弥生:「それは推測ですから、実際に現地をボーリングして確認すべきかと思います」

総領事:「お考えは解りますが、アリババ大砂漠の真ん中で実行するのは大変です」

弥生:「それについてですが、宙軍が新型重機の耐環境試験を兼ねてやっても良いそうです」

総領事:「おお、そういうことでしたら大歓迎です。砂漠でなら風紀問題も起きませんし」

弥生:「大砂漠なら現場周辺を完全に無人化出来るから我々としても都合がいいのです。機密保護だけなら宇宙空間の方が楽ですが、今回は惑星上での使い勝手が改善項目でしてね。それには人手が多くかかるので、サイボーグでない地上の研究員も動員することになります。しかし、この島の限られた環境だけで試験したのでは十分な調整が出来ません」

総領事:「戒厳令を敷いて一般人が近づかないようにしますのでお任せ下さい」


(経済特区 酉山科学研究所)

理美:「帝国のサイボーグ体整備技術を簡単に身につけてしまうなんて、パパって凄いのね。いくら秘密マニュアルを供与されたって体内CPUの助け無しでは難しいんだけどなぁ。確かに真理亜様の仰るとおりだわ。もし外国にスカウトされていたら危険人物ね」

酉山:「ここに移転してまだ2年だというのに技術供与特別許可が下りたのが嬉しくてね。サイボーグ娘との親子の触れ合いといえば、メンテナンスは絶対はずせないからね」

理美:「昔に比べれば規制緩和が進んだとはいえ、よく許可が下りたわね」

酉山:「理美が任務に出ている間に東宮様がこっそりご視察に見えたのだよ。以前私が手がけた鳥のサイボーグ化に関するデータを見て強い関心をお持ちになったんだ。帝国が開発したい重点項目である人の小脳や脊髄の機械化にも応用できそうだというのでね。独力であそこまでやったなら、帝国の機密技術とのレベル差も小さいと認められたんだ。その代わり、外務省から護衛を兼ねた秘書の派遣を受け入れることになったがね」

理美:「お陰様で気楽に整備が頼めるようになったから助かるわ。カロンで少しスケートをやったら筋が良いアイスショウを手伝えと宙軍の先輩に誘われたんです。でもサイボーグ用に固く氷を張ったリンクを使うので着地の衝撃でよく足が壊れるらしいのよ」

酉山:「うむ。理美の器量ならそういう華やかな副業に相応しいじゃないか。それは良かった。足のことは任せなさい。アイスショウのとき専用に改良した足を付けられるように検討しよう」

理美:「先輩達はブレードが付けやすいように足を改造しているんだけどそこが壊れやすいのよ。技をやりやりやすくするためブレード角度を制御できるように足首関節を変えているのにね」

酉山:「運動データの集積が不十分なままで、目先の問題を解決しようとしたからじゃないかな。身体制御CPUに送信機を取り付けて、外部サーバーに入出力の時系列データを採ってみよう。それをじっくり解析し、体全体のバランスをとって最適な機構を設計すれば、壊れにくくなるよ。そういうデータを積み上げれば小脳や脊髄の機械化という目標にも少しずつ接近出来るな」


(北米連 愛国民兵会会長の牧場)

愛国民兵会会長:「スージー、リンダ仕事の依頼だぞ」

スージー:「宇宙局からですか?。月で満漢ともめ事でも有ったのかしら?」

愛国民兵会会長:「宇宙局からだが、紛争がらみではないな。金星周辺における監視任務だ。小娘帝国が金星に氷隕石を落とすだろ。既に金星上層大気中に観測施設が置かれた模様だ。実際に何が起こるか監視して欲しいのと、万一地球に酷い影響があるようなら阻止もだな」

スージー:「なるほど。地球上に火星由来の隕石があるというくらいですからね。衝突速度が大きすぎれば飛びだした破片がとんでもないところに到達する余地はあります。でも、金星上に湖沼を形成するつもりなら飛び散らないよう減速して落とすでしょうね」

愛国民兵会会長:「発表されているとおりなら今回も平穏な監視任務で済むはずだ。しかし当局は金星開発を隠れ蓑にした我が国への攻撃を懸念しているようだな」

リンダ:「内惑星への飛行は初めてですね。熱や放射線は大丈夫でしょうか?」

スージー:「スペースシェリフ・ワンは装甲がしっかりしているからまず大丈夫よ。私らの体のほうは、機構に関しては艦と同様に装甲があるから心配ないわね。但し、体内の血液保冷庫は周囲温度が上がりすぎると弱点になり得るかな。船外作業はなるべく避けたいわね。癪だけど小娘帝国の奴らは平気なのかな」

リンダ:「またしても生命維持装置がネックですか。何とかしたいですね」

愛国民兵会会長:「済まんな。宇宙局の研究が相変わらずさっぱり進んでおらん。月で満漢の基地がどんどん拡張されているせいで月基地に金を使わざるを得ないからな。そのために研究予算が減らされてしまっている。国の予算はエネルギー偏重だからな。国防総省の方はヤブーの失政のお陰でぼろぼろだから全くあてにならんし困った事だ」


(北米連 G島基地 情報部)

担当官:「ほお、するとあんたは満漢の工作員養成所で部長をしていたのか。幹部ともあろう者が、なんでそんな姿になったんだ」

孫:「立案した作戦が失敗して責任をとらされたんだ。代わりにお前が潜入しろとな。その無理な命令は当然失敗して消されそうになったんで、ここに逃げてきたって訳だ」

担当官:「ふーん。さすがに神も人権も認めない国はやることがえぐいな」

孫:「工作員の世界はあんたらの国だって似たようなものだろう」

担当官:「まあ、この業界は仕方がないな。しくじったら処刑か逃げてのたれ死にだ。うちも先の戦争以後は台所事情がきつくてね。あんたをただ保護してやるのは難しいな。新しい顔と名前を与える代わりに、こっちの仕事をやるって事でどうかね?」

孫:「仕事の中身次第だな。あんまりきついなら一人で逃げ回る方がましだ」

担当官:「面が割れているB王国に行けとは言わんよ。アリババでの監視任務だ。最近アリババに小娘帝国の連中が多数入国したんで何をするか気長に観察するんだ。身分は石油産業の関係者宅で働くメイドって事になる。荒事はしなくていいぞ」

孫:「この足ならやって出来無くはないが、腕無しじゃメイドはおかしいだろ?」

担当官:「ちょっと見劣りがするが北米製の能動義手で良ければ付けてやっても良いぞ。但し、小娘帝国製の神経断端インタフェースは解析不能だから直接制御は出来ない。その足に生えている手指でリモコンを操作してマジックハンドみたいに使うんだ。クラスター爆弾か地雷の被害者を装えば怪しまれることはないだろう」

孫:「わかったよ。この際、贅沢は言えないからな」


(金星付近の惑星間軌道)

リエ:「これより、大氷隕石の軌道・速度調整と隕石移動装置の回収にとりかかる。金星可住化の成否はこの作業の出来に大きく依存するから、全員慎重に作業せよ。特に原子炉は絶対に落下させてはならない。軌道調整完了後速やかに撤去すること。高温地獄を放射能地獄に変えたのでは手間暇かける意味がないからね」

あざみ:「やっぱり5万dもの氷となると、さすがに巨大ですね。理屈で出来ると解っても、ボタ山のように微妙なコントロールが効くか不安です。特に今回は今までと逆で減速しながらですから、大気圏突入直後が不安定でしょ。しっかりスピンをかけておかないと大気抵抗で軸が傾くかも知れません。減速ができても軸ぶれで落下地点が窪地を外れてしまうと沼が出来ないし」

リエ:「その代わり迎撃ミサイルが飛んでこない分は確実に楽になるわよ。遙か手前から隕石移動装置を逆噴射させるしそこでスピンもかけられるわ。移動装置撤去後のために個別に点火できる固体ブースター20基を建ててあるし。それじゃあ、早速スピンの増速を始めるからコントロール頼んだわよ。移動装置の底の氷が溶けて傾く心配もあってゆっくりしかできないからね」

あざみ:「はい。とにかくやってみます。リモートリンク起動。原子炉操作権取得。出力巡航10%から14%にアップ。軸線再確認。想定金星位置に対し西0.3度。南0.1度。修正して宜しいですか」

リエ:「待って。母艦の光学観測班にクロスチェックさせるわ。...誤差有りか。西には0.33度のようね。校正かけて頂戴」

あざみ:「数値校正しました。隕石移動装置ノズルスラスタ指向。蒸気圧上昇。旋回速度秒速0.001度。スラスタ中立に復元。スピンノズル蒸気路開放。スピン増速率秒当たり0.0015度。このまま8日ほどかけます」

リエ:「良いわよ。やはり貴女はこういう動きの遅い物を操作するのに向いているわ。じれて注意を逸らさない操作姿勢がしっかりしているのね」

あざみ:「その代わり、機敏な動きが必要な迎撃艇では散々だったんですけど。脳のクロックが生まれつき遅くできているんじゃないですか」

リエ:「遅くても素体採用基準は満たしていたんだから良いじゃないの。役に立ってるし」


(アリババ大砂漠 帝国地質調査部隊宿営地)

アリババ連盟群担当官:「あなた方の宿営地から50`以内は聖戦士隊が封鎖しました。一般人が立ち入ることはありません。ただ一つ困ったことがありまして」

真理亜:「困ったこと?。何ですの?」

アリババ連盟軍担当官:「燃料の輸送です。我が軍には十分な輸送車がありません。それで民間業者のタンクローリーを使いたいのですがご承知いただけますか?」

真理亜:「民間業者ですか。外資でなければよいのですが」

アリババ連盟群担当官:「あいにくこの国の石油業者は全て外資が入っています。地場の業者だけで大規模な輸送は出来ません」

真理亜:「そうですか。工作員が紛れ込まないように気を付けるしかないですね」


(アリババ大砂漠 北米系石油業者現地事務所)

聖戦士隊憲兵:「ここの駐在員の身元調査だ。全員身分証明書を出せ。ん?、そこの女は北米人となっているが本当か?。亜細亜系のようだが?」

所長:「この者は私が本国から連れてきたメイドです。先祖は亜細亜人ですが」

聖戦士隊憲兵:「うむ。お前は手足を機械化しているな。北米人には珍しい。お前達の宗教ではそういうことは忌み嫌うはずではないのか?」

孫:「私は南瓜国の生まれです。子供の時に放置された古い地雷で手足を失いました。それにキリステ教徒ではありませんので、機械化はあまり気にしません」

聖戦士隊憲兵:「そうか。儂らもキリステ教徒とシオン教徒は陰険だから大嫌いだ。対人地雷なんて最初に考えたのもあいつらだ。北米人でもそうでない者は好ましい。ふむ、お前の身分証明書は本物だな。よかろう。でわまた」

所長:「ふう。ものものしい警戒だ。一体何が行われるのやら」

孫:「所長、何も心配は要りませんよ。どうせ消極的な監視だけですから」

所長:「もめ事は絶対無しにしていただきたい。私らは商売が出来ないと困ります」


(アリババ大砂漠 人工オアシス予定地)

マサ:「うわあ。右前足が砂にめり込んだ。えーと。こういうときは...」

真理亜:「何やってんのよ。後ろ足踏ん張るからそっと抜きなさい」

マサ:「いやはや、地上で2人4脚の制御って想像してたより随分難しいんですね。冥王星付近では90式重機のパワー不足で悩んだけど、足を増やして解決するのもなぁ」

真理亜:「まあねえ。人間は昆虫みたいに六肢の生物じゃないから一人で制御できないし。二人がかりで足を2本ずつ操作するってのも不整地じゃ思い通りに行かないわね」

重機担当研究員:「真理亜侯、マサ侯、大丈夫ですか?。足の不調は出ていませんか?」

真理亜:「ああ、済まないわね。機械の調子の問題じゃなくて私らの同調の問題よ」

重機担当研究員:「さすがにこんな足元の悪い場所では貴女方でも無理でしたか」

真理亜:「宇宙空間なら足元を気にしないから大丈夫だと思うわ」

重機担当研究員:「予算の関係で火星からカロンまで広く使えるようにと言われています。この場所でダメだと火星では苦しいですね。砂漠用にはガンタンク型しか無理かな」

マサ:「外国のパワースーツみたいな予測追従を使って後ろ足を動かせないの?」

重機担当研究員:「それも考えていますが手本になる運動データが必要でして。2式降下艇の一人四脚運動も鈍い動きしか出来ないので参考になりませんし。データを採取した上で時間と予算も必要です。当面のカロン地上作業には間に合いません」

真理亜:「つまり、私らが手本になるような良い動きをやって見せないといけないのね」

マサ:「しかし、いくら私らでもケンタウロスやシャム双生児のようには行きませんよ。精々電車ごっこかムカデ競争のレベルでしょう」

真理亜:「シャムか!。うん、それよ。非人を使ってシャムのサイボーグを作れば良いわ。あいつらなら、ヒマに任せて24時間365日データが取れるから慣れるんじゃないかな。とりあえずここでのテストは歩き方よりも地質調査を優先しましょうか」

重機担当研究員:「なるほど。では非人貸与申請を出してみます」

真理亜:「よし、ボーリング地点に向かうよ。号令かけるからマサはその通り歩きなさい。はい右脚から歩幅2mで、1,2,1,2...」

マサ:「こんなの学校の体育以来ですね。宙軍ではパレードといえばバレエだったし」

真理亜:「そおねえ。宙軍は少人数の行動しかしないから行進なんて意味ないからね。バレエで脚を揃えるときは真っ平らな舞台の上だから砂の上じゃ勝手が違うわね。ああようやく砂丘の谷間に着いたわ。やれやれ。地質調査員、ここらで良いのかな?」

地質担当研究員:「ええ。荷台からボーリング装置を降ろして掘削を始めて下さい。パイプの継ぎ足しの際はエキシマビームで溶接をお願いします」

マサ:「ここの暑さじゃプルトニウム電池がパワー出ないでしょ。溶接できるかな?」

重機担当研究員:「弱かったら荷台の燃料電池を繋いで使います」

真理亜:「手持ちの燃料はろくにないから、ずっと使うなら取り寄せるしかないわ。輸送は外注業者しかできないようだから、なるべく避けたかったんだけどね」


(アリババ大砂漠 北米系石油業者現地事務所)

アリババ連盟担当官:「指示する地点までエタノール30dを搬入せよ。秘密厳守だぞ」

所長:「契約の通りいたしますので、ご安心を。作業員は身元の確かな者だけです」

孫:「紅茶ドゾー」

アリババ連盟担当官:「おう、気が利くな」

所長:「日帰り出来ない場所なら作業員の給食も要るのでこの者を同伴したいのですが」

アリババ連盟担当官:「ああ、構わんよ。ここの者は憲兵もチェックしたしな」

孫:「(蟻婆防諜体勢杜撰也。機会到来。)にこっ」


(ボーリング現場付近)

タンクローリー運転手:「指示された地点ってGPSの表示だとここらですよね」

所長:「何か見えないかな?」

孫:「砂丘の陰じゃないの?。あ、何じゃあれは!」

運転手:「腕が2本に脚が4本...ロボットに見えなくもないな。積み荷はあれの燃料?」

所長:「ここで見たものは全て忘れる契約だ。とにかく積み荷を引き渡すんだ」

孫:「あ、首らしい場所の下でハッチが開いて誰か出てきたわ。女子高生みたいな奴ね」

運転手:「え、あ、本当だ。こんな砂漠の真ん中で場違いな。アリババ人の筈がないですね」

所長:「余計な詮索はするな。商売に差し支える」

マサ:「エタノールを運んできた燃料業者よね。あっちに仮設タンクがあるからそこに移して。代金は契約条件通り、黒菱銀行発行の小切手で用意したから確かめて頂戴。はい、これね。それから、解ってるだろうけど、ここで見たものを口外したらアリババ憲兵隊に消されるわよ」

所長:「勿論です。私らはお代さえ頂ければ言うこと無しです。ところで、もう日が暮れます。アリババ当局から現地でキャンプする許可を貰ってあるので荷の移し替えは明朝で良いですか?」

マサ:「許可証を見せて頂戴。ふんふん、砂漠で夜の移動も危険だから仕方ないわね。わかったわ。それなら500m程さがったところにタンクローリーを並べて止めなさい。停めたらタンクローリーのキーは全て預けて頂戴。小切手持ち逃げされると私の責任になるからね」

所長:「わかりました。おい、後ろの車にトランシーバーで指示を伝えろ」

運転手:「はい」


(ボーリング現場)

真理亜:「燃料業者に怪しいところはなかったの?」

マサ:「見た目では。帝国製の脚を付けた亜細亜系の娘が居ましたがキャンプの料理番だそうです。トランスポンダ番号をクリップしておいたので一応本国に照会しましょう。えーと、衛星回線...」

真理亜:「どう?」

マサ:「あ、こいつはちと問題ですね。この番号は満漢工作員の疑いで手配されています。まだ事件は起こしていないけど、膣に例のB王国事件で使われたのと同じ仕掛けをしているそうです」

真理亜:「あの燃料業者は北米系よね。満漢人なんか雇うかしら。見た目も南亜風なんでしょ」

マサ:「外国でトランスポンダを移植するのは難しいから別人ではないのでしょ?北米連当局が関わっているかどうかはわかりませんがどこかの工作員には違いないですね」

真理亜:「うーん。何もしないうちはアリババの憲兵に言ってみても逮捕は出来ないわね。試作重機の外見が漏れたって大した影響はないから、ただの監視なら目を離さずに放置かな」

マサ:「夜のうちに何かするかも知れないので業者のテントを見回るようにします」

真理亜:「そうして。藻前が居ると起きそうもない筈の厄介ごとがよく起きるからね」


(深夜、燃料業者のテント)

所長:「ぐうすぴぃ...へへ、油田を掘り当てたぞ...これでオレも大富豪だ...」

孫:「(睡眠薬紅茶効果発揮。所長、運転手爆睡中。探索遂行。帝国宇宙工事機械情報有価)抜き足差し足忍び足...。外の様子は...」

マサ:「ん、テントから誰か出てきたな。暗視画像物体抽出処理...あ、やっぱりあいつだ。下手に捕まえるとまた処刑とか厭な仕事が出来ちゃうから、捕まえたくないなあ。そうだ、何もしないうちにちょっと脅してやろう。お、サソリが居た。こいつを拾って...」

孫:「(気配!?。警備兵?。芝居必要。放尿自然也)ああ、誰も見ていないわね。
ここで良いかしら。うう、漏れそう。じょろろーー」

マサ:「おい、そこで何をやっている!」

孫:「え、あ、おしっこですぅ」

マサ:「そんなに腰を落とすと危ないわよ。ほら、ここいらにはこいつがうようよ居るんだから」

孫:「ひい、さ、サソリ!」

マサ:「そんな体勢じゃなくて、M字開脚体勢でやらないとお尻を刺されて氏ぬわよ」

孫:「こ、こうですか?。うう、恥ずかしいですぅ。じょろろーー」

マサ:「そうそう。その調子よ。終わったらすぐキャンプに戻ってテント内にも居ないか点検して」

孫:「ひいい、サソリ怖いよぉ...(苦、是脅迫也。探索断念)」


(翌日、ボーリング現場)

マサ:「掘削停止。パイプ溶接するよ。ラブラブ光線...やっぱこの環境じゃ弱いな。よし出来たわ。これでパイプ100本目だから1`掘ったのか。地質調査員、結果どうなの?」

地質担当研究員:「粘土層の厚みはそこそこ有りますね。保水力自体は十分だと思いますよ。ただ砂が深いので保水は出来てもオアシス化はどうかな。よほど水を入れないと泉は湧きません」

真理亜:「同じところに繰り返し氷隕石を落とさないと難しそうね。アリババの予算次第だわ」

マサ:「落下速度を大きくして砂を吹っ飛ばしたらどうでしょう?」

真理亜:「世界の気候に影響が出るからあんまり大きくは出来ないでしょ。あ...メールだわ」

マサ:「私にも...あ、生殖バンク所長からだ。女の子が産まれたので3日以内に命名せよか。3日とはえらく短いですね。考えるヒマがあるかな」

真理亜:「皇族や貴族は公家ごとに命名規則があって決めやすいから短いのよ。うちの場合は、まず、5世代以内に使われていないことが絶対条件ね。それから、当然だけど藻前みたいに軽々しくて偉く無さそうなのは候補に出来ないのよ。候補検索...。よし出た、この中から藻前が選びなさい」

マサ:「え、そんないきなり...うーん、有栖で良いですか?」

真理亜:「問題ないわ。よし決まり!。じゃあ、宙軍省に出生届出すからこれに電子サインして」

マサ:「え、市役所じゃなくて宙軍省に出すんですか?」

真理亜:「そうよ。貴族は生まれたときから公簿上素体として扱われるからね」

マサ:「なるほど。さて、早く仕事を片づけて帰りましょうよ。オッパイあげたいなあ。地質調査員、あとどれくらい掘ればいいの?。重機のテストとしてはもう終わりで良いんだけど」

地質担当研究員:「今日いっぱいで掘れる範囲で十分です」

マサ:「あ、そう。しかし氷落とすのは簡単そうだけど水面作るのって難しいんだね。事前に予定地を調査出来る地上でこの調子じゃあ、金星なんかでやったってうまく行くのかな」

真理亜:「あっちは核の冬をわざと起こすつもりで大きいの落とすから制御が易しいのよ。ただ大きい氷を継続的に確保するのが経済的に厳しいってだけね」


(金星に接近した巨大氷隕石周辺)

あざみ:「スピン加速終了します。針路金星の北緯45度に合っています」

リエ:「金星の浮遊プラットフォームからの誘導電波はどうかしら?」

あざみ:「周回位相はこちらの落下スケジュールとほぼ合っています。あとは微調整だけです」

リエ:「落下速度の微調整にかかる時間は?」

あざみ:「2時間ほどで固体ロケットによる調整が可能な範囲に目標地点を入れられます。浮遊プラットフォームが正確に目標の窪地を指示していればですが」

リエ:「あっちは大気圏内で直接見てるんだから信じるしかないわね。それなら、私は移動装置の撤去班を率いて隕石に降りるから終わったらすぐ言って頂戴」


(監視にやってきたスペーシシェリフ・ワン)

リンダ:「あ、作業機械らしいのが隕石に降下していきますね」

スージー:「奴らは原子炉の付いた装置を落とさないと公表してるから撤去部隊ね。さっきまでちょこちょこと向きを変えながら小さな蒸気噴射を繰り返していたでしょ。頻度が少なくなってきたから間もなく軌道修正が終わるのよ」

リンダ:「この軌道と速度で地球に届く破片が飛ぶことは絶対に無いんですか?。阻止するなら今しかチャンスはないと思いますが」

スージー:「氷隕石の運動は逐一宇宙局に送信しているけど危険はないと言っているわ。私は初めから当局の懸念なんて宇宙を知らない官僚や政治家の妄想だと思っていたけど」

リンダ:「そうですか。何故、無駄と判っていて引き受けたのですか?」

スージー:「そりゃあ金星に湖を作ろうなんて大イベントを近くで見たかったからよ。会長には悪いけど、今回は愛国心より自分の趣味優先で行動してしまったわね。あ、作業機から何人か出てきたわ。原子力推進器を外しにかかるわよ」

リンダ:「眺めていてむかつきませんか?。あいつら、あんな軽装で外に出ているでしょ。私らの方が遙かにごつい装甲なのに艦に閉じこもって観察するのが精一杯だなんて」

スージー:「あいつらより、生命維持装置の改良予算が付かない当局にむかつくわね。いっそ、意地を張っていないで小娘帝国から輸入してくれないかと思うこともあるわ。あれだけ量産していたらスペーシシェリフ・ワンの打ち上げ費より安いくらいでしょうし」

リンダ:「例え当局がその気になっても売ってくれないんでしょ」

スージー:「前の政権があんな事をしたからほとぼりが冷めるまでは無理かな」

リンダ:「奴らの作業員に一人だけ金属光沢を放っているのが居ますね。ロボットかな?」

スージー:「どれ、拡大してみようか。あら、ふーん、あれは金属外皮じゃないのね。透明素材の外皮内に水銀でも詰めているようよ。外皮の光りかたはダイヤモンドみたいね」

リンダ:「え、ダイヤモンド皮膜の外皮ですか!。羨ましいなあ」

スージー:「間違いないわ。人工ダイヤ膜コートを施したスケルトンボディーなのよ。耐環境性は抜群ね。身振りが偉そうな態度に見えるからロボットどころか奴が指揮官よ」

リンダ:「前に遭遇した皇族とやらの艦長だって普通のコギャルみたいな外見でしたよね。独裁帝国で一介の指揮官が皇族より贅沢な外皮にする自由なんか認めるんでしょうか?」

スージー:「生命維持装置の予算だって民衆の要求するエネルギー確保に食われてるでしょ。民主国家の方が自由だとは限らないわよ。実際、帝国の士官は随分高給のようだしね」

リンダ:「はああ。私にダイヤ皮膜を貢いでくれるメカフェチの富豪が居ないかなぁ」

スージー:「貴女がそれほどダイヤに拘るとは意外ねえ。金蒸着よりも良いの?」

リンダ:「メカフェチでも女の子がダイヤに弱いのは変わりないですよ」

スージー:「ふーん。私らの巨体を覆ったら高く憑くわねえ。会員に大富豪は居ないわよ」


(G島 北米連軍事基地)

担当官:「6肢で四足歩行の土木機械らしいものを見かけたが目的は掴めなかったとな。それで乗員は女子高生みたいな奴で、口のききかたは軍人っぽかったんだな」

孫:「帝国のサイボーグ軍人なのは間違いない。手づかみでサソリを持ってきたんだ。あれは明らかな脅迫だったからこっちの正体はばれていたよ」

担当官:「他に帝国人らしい奴は見かけなかったのか?」

孫:「一人も見ていない。あの地域周辺はアリババ聖戦士隊が厳重に封鎖していた。石油業者の事務所も憲兵が見回りに来ていて身分証明書を毎日点検された。幸い北米連のパスポートでも本物なら問題にならなかった。雰囲気の割には雑な防諜だ。地元業者の輸送能力が貧弱で大がかりな燃料輸送を外資に頼っていたのが幸いだったな」

担当官:「とれた情報はしょぼいが、荒事無しの約束だからしかたないな。一応合格だ。とりあえずお前を外注工作員として飼っても良いぞ。基地内のアパートは使いたいか?」

孫:「頼む。人民党の抹殺者が来るかも知れないから基地内の方が安心だ。ところで、基地内にラーメン屋は無いよな?」

担当官:「元部長には気の毒だが、外注に貸せるのは二等兵用の部屋だけだ。我慢しろ。ラーメン屋も無いから食いたかったら外に出て観光街に行くしかないぞ」

孫:「抹殺者に怯えていたら贅沢なんか意味がない。ラーメンが食いたいんじゃないよ。前にやってきた抹殺者がラーメン屋だったから無い方が安心なんだ」

担当官:「そうか。食堂業者を募集するときは気を付けるよう主計隊に言っておく」


(経済特区 地底アイスワールド分園スケートリンク)

マオ:「それーっ。16回転3ひねりジャーンプ!。へへ、どうよこの高性能」

ミキ:「足首に姑息な改造を加えたくらいで私から主役を奪うのは無理よ」

マオ:「あら、そんなこと言って良いの?。これ見てみなよ。もう貴女はトップじゃなくなっているわ」

ミキ:「ふん。私が整備のため休んでいる隙にすり替えたのね。すぐ取り返してやるわ」

マオ:「ところで主役争いはおいといて、脇役の娘の確保はどうするの?」

ミキ:「理美が来てくれるんでしょ」

マオ:「これだけ私らのレベルが上がるとサイボーグでもついてこれる娘は少ないわ。脱落者が出るのは必至だから筋の良い娘を集めておかないとね」

ミキ:「そうねえ。以前やってくれたリエさんやマサさん達は任務で無理だしねえ。ハルとみどりを引き込みたいけどこのごろ店が繁盛して忙しいと言って付き合い悪いのよね」

マオ:「この際、元素体教官の強面で無理矢理引き込むしかないわね」

ミキ:「イヤと言ったら店を荒らしてやるって事か。仕方がないわね」

マオ:「そう、こうしてやるってね」

ミキ:「そりゃ愉快だわ。あの店でなら恥はかき棄てだし」

理美:「こんにちわ」

マオ:「あら。練習しに来たの?。良い心がけね。出世するわよ」

理美:「パパがスケート用の脚を試作してくれたので付け替えてテストしたいんです」

ミキ:「酉山博士か。もう帝国のサイボーグ専用脚なんか自作できるんだ。凄いなあ」

理美:「じゃ、リンク使いますよ。よいしょ、まず右脚ロック解除、差し替え...」

マオ:「一見シンプルそうな足首の形ねえ」

理美:「パパが言うには、目先の技のために変則的な機構にするより全身のバランスだって。それで身体制御CPUからサーバーに運動データを送ってテスト結果をフィードバックするんです。全身の動きに対して最適化すれば故障も少なくできるだろうと」

ミキ:「なるほど。理美がうまく行ったら私も頼もうかな」

マオ:「さすがにサイボーグ娘フェチの間で伝説になっているマッドサイエンティストだわ。やっぱり酉山博士は帝国から離れたら危険人物ね。理美、裏切らせないようにつなぎ止めるのよ」

理美:「そのためにも、うまく行ったら先輩達も酉山科学研究所をよろしく」


(巨大氷隕石)

リエ:「各重機、牽引ロープの張力確認、0.5dで均衡させよ。いいか?。全機発進。隕石離脱後15秒で私の機に運動を同調させよ。...よし、このまま母艦まで曳航する。あざみはいつでも固体ロケットを動作させられる状態で隕石に同航して」

あざみ:「固体ロケット制御リンク掴みっぱなしにしました」

リエ:「落下までしっかり握っておいてね。但し、一緒に落ちないよう自機の運動に注意」

あざみ:「気を付けます」

リエ:「それじゃあ。隕石移動装置を母艦にランデブーさせたら戻ってくるからね」

あざみ:「解体収容の監督は良いんですか?」

リエ:「大型移動装置の分解収容は原子炉の始末がメインだから機関長が監督してくれるわ」


(スペースシェリフ・ワン)

リンダ:「隕石に降りていた奴らが原子力推進器を曳航して離れましたね」

スージー:「いよいよ金星大気圏に突入するのね。ここからが見物だわ」

リンダ:「任務抜きで夢中になっていますね」

スージー:「そりゃあ、惑星テラフォーミングなんて宇宙飛行士には最高の夢よ。これが北米連の事業で自分が参加できていたらよかったのになあ」

リンダ:「あ、固体ロケットに点火しましたね。さらに減速するのか」

スージー:「なるべく大気摩擦を減らして氷を溶かさずに落としたいのでしょうね。そろそろ落下地点の予想精度が上がるわね。どこかな?...ふんふん。水たまりを作るつもりでしっかり窪地を狙っているわね。お、前の方が光り出した。大気抵抗が出てきたようだが、さすがにしつこくスピンかけていただけに安定しているな。分厚い雲に大穴開けて落ちて行くわ。固い氷だから空中で割れることも無さそうね。あ、激しく光った。地表に激突したんだわ。台風のような渦が発生している。やっぱり凄いわね。これを地球でやられたら世界の終わりだわ」

リンダ:「ぞぞっ。当局が疑心暗鬼になるのも当然ですね」

スージー:「これに比べると奴らが戦争で使ったのは軽石みたいな隕石だったようね。本気で怒らせないようにしないと」


(青の公家邸)

有栖:「ばぶう。おっぱいおっぱいおっぱい」

マサ:「はいはい。おっぱいでちゅよぉ。ああ、かわいいけど乳の補充が忙しいなぁ。サイボーグになってから不便だと思ったことはこれが初めてだわ」

真理亜:「所詮人工ミルクだから小間使いに任せても同じ事なのに藻前は物好きだな。わざわざ我が儘言って地上で面倒な任務貰ったり、胸を改造したり何やってんだか」

マサ:「面倒なのは判っていたけど、やっぱり一度はやってみたかったんです。やってみてよかったですよ。乳首吸われるのって非常に気持ち良いですね。それにしても有栖は言葉憶えるのが早かったなぁ。おっぱいだけだけど」

真理亜:「そりゃあ貴族の人生はとんでもなく忙しいんだから早くないと困るわよ。でも、どうやらこの調子なら有栖は素体適性の方も大丈夫そうね。一安心だわ。ダメだったら藻前と別れて新しい相手を探さなきゃならないところだったからね」

マサ:「えーっ。そんなぁ。冷たいなあ」

真理亜:「私を誰だと思っているんだ。帝国ナンバーワンのサド女王様だよ」

マサ:「はいはい。そうでしたね。あ、重要なお知らせのメールだ...国営放送?」

真理亜:「つけてみようか」

アナウンサー:「大本営発表。帝国宙軍部隊は本日正午金星に巨大氷隕石を投下せり。当該氷隕石は照準通り標的窪地に降下、深さ1`b以上のクレーターを穿てり。直後より金星大気圏は膨大なる塵に覆われ現在のところ地表の観測は困難なり。落下地点付近は激しい下降気流によるらしき巨大なる渦が発生、停滞す。されど我が浮遊プラットフォーム観測拠点は健在なれば水面形成の成否は程なく判明す。これより氷隕石突入時の映像を放映する。帝国臣民は一大事業に感銘せよ」

有栖:「ばぶう。だいほんにぇい。きらきら。ちゅどーん」

マサ:「あ、有栖が新しい言葉を喋ったわ。映像に感銘を受けたのね」

真理亜:「将来航宙士になるのにこの映像をつまらながるようじゃ困るわ」

有栖:「だいほんにぇい。ちゅどーん。おっぱいおっぱいおっぱい」

マサ:「はいはい。ああまた補充しないと。興奮したからのどが渇いたのかな」

有栖:「だいほんにぇい。おっぱい」

マサ:「局所的な寒冷化は起きたようですが、金星でも子育てが可能になるのでしょうか」

真理亜:「いつかは出来るわ。いつになるかは今回の投下でどれだけ冷えるか次第ね。予想より気流が激しいと氷が溶けるのも早まるから次が間に合うかも重要よ。ま、気温や酸素比率が良くなっても硫酸の湖は残るから危なくて外で遊ばせられないけど」

マサ:「炭酸ガスよりも硫酸は厄介ですね。減らす方法なんてあるのかな」

真理亜:「気温が下がって安定した水面が存在し続ければ岩石と反応して明礬になるわ。岩石の組成は地球と似たものだからいずれ自然に減っていくけど長い年月がかかるわ」

マサ:「鉄質隕石を落とせば人工的に促進できないかな」

真理亜:「少々じゃ効かないし酸素も吸収されちゃうわ。それより氷集めが先決よ」

マサ:「すると、子育てもそこそこにまた冥王星通いですか」

真理亜:「しかたないわ。出動したら次に有栖に会えるときは学習院生よ」

マサ:「そうか。授乳は今のうちか。真理亜様はやってみなくて良いんですか?」

真理亜:「じゃ、ちょっとだけ。へへ、実はその気でこっそり胸を改造してあるのよ」

有栖:「だいほんにぇい。おっぱい」

真理亜:「ほれ、いい子だからマサに似ず私に似なさい」

マサ:「そこまで言わなくても...しかし私に似たら艦長には向かないか。それも困るね」


(とりあえず表題通り金星に氷を落としましたが、落書きに填ったり、孫や酉山をもっと働かせたくなって寄り道したりで3週間迷走しました。次回ですが、元々の構想では金星への入植をやって年内で本編完成の筈でした。ところが最近フィギュアスケートGP戦のたびに新たな妄想をかき立てられたり、冬子や酉山には将来に繋がる研究成果を出して欲しくなったりで、間にもう1章入れることになりそうです。GPファイナルの結果で内容ががらっと変わってしまうのでタイトル未定です)

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