「登録希望の柏木です」
「はい、承っています。3階の第一会議室へどうぞ」
 全身メタリックな外装の受付嬢が笑顔で促す。
 その姿に自分の姿が重なる。
 近い将来、私も身体になるのだ。

 第一会議室、と書かれた扉をくぐり部屋に入ると一人の女性が待っていた。
 しかし、その姿は先程の受付嬢と同じく銀色の金属で出来ていた。髪は美しい黒髪だが人工物の感じがする。瞳も瞬きする様子が無い。
「どうぞ御掛けください」
 促されて、ソファーに身体を沈める。
「柏木晴香さんですね」
「はい」
 綺麗な声だ。
「私は機械化事業部のMS-2KAORIです」
「え?」
「ああ、私はサイボーグですが人格権の譲渡をしているので、登録名が個体名になっているんです。」
 サイボーグ化に伴い人格権を売却する事で、人間を止める事が国際法で認められたのが2年前で、日本も1年前に認めている。
 目の前の彼女はそれの適用者だと言うことらしい。
「驚きのようですね。私の場合、個人的な都合で大金が必要でしたので、私を買い取ってくれたこの会社に感謝しているんですよ」
 彼女はそういって微笑んだ。その様子から悲しみは感じられない。

「話題が逸れましたね。弊社の機械化秘書派遣プログラムに登録をご希望だと言う話ですが」
「はい、よろしくお願いします」
「分かりました。なおここでの会話は記録されています。裁判などで証拠として用いられる可能性があります。」
「分かりました」
「はい、それでは説明を開始します。が、その前に一つだけ確認します。このプログラムにはサイボーグ化手術が含まれます。最低レベルのものでも完全に元の身体に戻る事は出来ません。それでも構いませんか?」
「構いません」
 答えてつばを飲む。サイボーグ化は今でも一部ではタブー視されている。それを自ら望んで行おうと言うのだ。
「それでは説明を続けさせていただきます。プログラムは大きく3つのコースに分かれています。Cコースは作業補助用のコンピュータを身体の中に埋め込むものです。これは機械化部分が身体の20%を下回る所謂5級機械化体です。以前とほとんど変わらない生活が可能です」
 前触れも無くモニターに人型が映し出される。
「これがCコースの改造体です。補助用のコンピュータとバッテリーだけなので生体機能を失うことなく改造できます」
 確かに上半身の内臓が無い場所のみに埋め込まれている。
「このCコースでは、補助のみなので機能的には約50人程度までの対応が可能です」
 
「Bコースでは通信機能と内蔵コンピュータと大型バッテリーの埋め込み、生理機能の機械化を行います。これは機械化部分が身体の約50%程度となる所謂3級機械化体です。食事などは不可能ですが、出産は可能です」
 モニターに新たな人型が映し出される。
「これがBコースの改造体です。生理機能ほぼ完全に機械化されています」
 上半身の内臓部分はほとんど機械に置き換わってしまっている。
「このBコースでは、通信機能を活用し機能的には約500人程度まで対応可能です」

「最後にAコースは脳と脊髄の一部以外は完全に機械化します。これは特定部分以外完全機械化した所謂完全機械化体です。生活は完全機械化体特有のものへと変更しなくてはなりません」
 モニターに映った人型は完全に機械に置き換わっていた。
「御覧の様にAコースの改造体は特定部位以外は完全に機械化されています。また機械化特別法により外装も金属製の物にしなくてはなりません」
「このAコースでは1万人以上の規模でも物理的な制限による限界までは対応可能です」
「お分かりだと思いますが、私はAコースの改造と同程度の改造処理が行われています」
 KAORIさんは両手を広げ身体を見せるようにしながら言った。
「Aコースはさらに3つに分かれます。機械化人権法の人格権譲渡・停止が可能となるからです。A1コースでは人格権を弊社に譲渡していただき、弊社所有の特殊備品という扱いで各企業にレンタルされます。
A2コースでは人格権は一部停止し、弊社の契約備品として各企業にレンタルされます。A3コースでは人格権の譲渡・停止は行わず、契約社員として各企業に派遣されます」
「A1コースは終身契約のみとなり、以後は契約違反以外の如何なる理由をもっても特殊備品側からの解除は不可能です。A2・A3コースでは最低5年、以後2年毎に更新が基本となっています。
10年、20年、終身契約コースもございます。双方からの契約解除は違約金が発生します」
「Bコースは最低3年、以後1年毎に更新で、5年、10年、20年の各コース。Cコースでは最低半年、以後3ヶ月毎に更新、1年、3年、5年の各コースがございます」

 KAORIさんが胸元に収納されていたパンフレットを取り出し提示する。各コースの契約金が並んでいるが、A1コースが圧倒的といっていいほど高い。50億新円…平均的な男性の生涯収入の約20倍だ。A2終身契約でも20億新円。
「これらのコースは、いわば契約者様をこちらで買い取る事に等しいことです。この程度の金額が相応しいと経済学者の回答を頂いています」
 A2・A3のその他のコースは初期契約金と労働時間給の組み合わせになっている。私が必要な5億新円以上の初期契約金が支払われるコースは、A1・A2コースの全パターンとA3コースの10年契約コース以上だ。5年間人間を止めるのと、10年間働くのどちらが良いのだろう…
「お悩みのようですね」
「え、いえ」
「当然の事です。不可逆な改造処理を受けることになります。それを悩まない方が人間として不自然です」
「そうでしょうか?」
「私の時も非常に長い間悩みました。まあ、最終的に金銭的な理由で人格権の譲渡という選択をしました。よろしければカウンセラーの先生に相談なされては如何でしょう?」
「カウンセリングですか?」
「はい。機械化処理同意書の提出が必要ですので、そのカウンセリングの際にご相談ください」
「分かりました。そうさせていただきます」
「では、弊社の契約医の所でカウンセリングを受けて下さい。カウンセリング料は弊社が負担いたします」
 この日はカウンセリングの予約をし大量の資料を受け取り帰宅する事になった。

「柏木さんですね?」
「はい」
「私は工藤由香里です。」
 カウンセリングルームに待っていたのは、白衣の下に金属製の身体を持った女性だった。
「工藤先生も完全機械化体なんですか?」
「もちろんです。機械化処理同意書は担当医の等級以下のものに対して出せません。だから完全機械化体に対する医師は完全機械化体じゃなくてはいけないんです」
 そう言って金属製の胸を張る。
「この身体は便利なんですよ。カルテの記入も考えるだけで出来ますし、触るだけで患者さんのバイタルデータも分かります」
 そう言って、私のおでこに触れる。
「36.5℃、熱は無い様ね。でも少し疲れが溜まっているようね」
「そうですか?」
「ちょっと寝不足気味みたいね。良ければ睡眠薬の処方をしておくけど?」
「それじゃあお願いします」
「はい。じゃあ、帰りに受付で処方箋をもらってね」

「それじゃあ、本題に入りましょう」
 椅子に座りなおして先生が告げた。
「知っていると思うけど、自発的改造処置には専門の医師による管理下での機械化処理同意書が必要になります。
これは改造処理が本当に本人の意思による物かを確認するために必要です。未承諾での改造や外部からの脅迫などで本人の意に沿わない改造が行われないための処置です」
「はい、知っています。私は自分の意思で改造処置を受けます」
「ええ。分かりました。それとこれには改造の適性の検査と言う側面もあります。精神的に不適格な方もいますので、該当されると改造処置を受ける事は出来ません。
柏木さん貴女は完全機械化体への改造処置を希望とありますが、これで正しいですか?」
「はい、間違いありません」
「それでは完全機械化体への適性検査と意思確認を行います。私の目を良く見てください」
「はい」
 工藤先生の瞳を覗き込むと、少しずつ点滅を繰り返していく。
「はい、だんだん楽になります…」
 工藤先生の声が遠くなってきた…
「晴香… はるか… HARUKA…」
 目の前がぼやけている…
「起動しましたか? 改造処理は終了しましたよ」
 白衣の人間の先生が笑顔で語りかけてくる…
「御覧なさい。完全機械体の身体ですよ」
 銀色に輝く身体が視界に入る。
 これが私の身体?
「成功ですよ。嬉しいですか?」
 嬉しい。心の底の方から喜びが湧き上がって来る。
 綺麗な身体。ああ、そうか、私この身体に憧れていたんだ。
「嬉しいです… こんな身体にして下さってありがとうございます…」
「元の身体に戻れないのよ。それでも嬉しいの?」
 何故そんな事を聞くの? こんなに綺麗な身体で嬉しいのに。
「この身体がいいんです… 戻りたくなんてありません…」
「そう。じゃあ、ずっとその身体よ。良かったわね」
「はい…」
 先生も分かってくれてる。嬉しい。
「ところであなたは何?人間?」
 先生と自分の身体を比べる。違う。でも先生は人間だ。じゃあ私は人間じゃない。
「違う…」
「それじゃあ、何?」
 機械で出来た身体。機械は人間じゃない。人間が使う道具だ。じゃあ私は道具だ。
「人間が使う道具です…」
 先生が驚いた顔をしている。当たり前のことなのに…
「はい、ちょっとスイッチを切るわよ。目を瞑って…」
 首の後ろに触れる感覚がして、私の意識は消えていった…

「晴香さん。晴香さん」
 工藤先生が覗き込んでいた。
「あれ?機械?生身?」
「混乱しているようですね。ちょっと催眠術が深くかかりすぎたかな?」
「あ、先生」
「はい、自発意思を持っていることが確認できました。適性も最高ランクです」
 あ、さっきのが適性検査だったのか。
「ただ、あなたの場合、機械化後の他者依存度が高すぎる部分がありますね。人格権の譲渡を考えていますか?」
 ドキッとする。さっき自分の言った言葉が思い出される。でも、譲渡は流石に嫌だ。
「いえ、譲渡は考えていません」
「それじゃあ、停止は?」
「えっ?」
「貴女の場合、他人に物として扱われる事を望んでいるわ。より安定していたいなら、人格権の停止で備品として契約する事をお勧めするわ」

 様々な書類を抱えた少女が扉から出て行くのを確認し、由香里はデータの再確認をしていた。
「まさかSSSランクなんて実在するとはね」
 示しだされたデータは先程の少女が、現存する最高ランクの適性を持っていることを表していた。
「この様子では近いうちに人格権の放棄でもしかねないわね」
 人間である事よりも機械として扱われたい。そんな少女の願望が由香里には恐ろしかった。

「それではA3コース10年契約と言うことで良いですか?」
「はい」
 結局、人間じゃなくなることが怖かった。カウンセリング結果は人格権の放棄すらしかねないレベルらしいが、少なくとも今の私には停止する事すら恐ろしかったのだ。
「報告書には表層ではAAランクですが、深層ではSSSランクとありますから、A1コースの選択もあるかと思いましたが…」
「あの適性ランクって詳しく分からないんですが、どのランクがどの程度のものなんですか?」
「あれ?ご存知じゃなかったんですか? わかりました。簡単に説明しますね。
 ランクは全部でGからAまでとAA、AAA、S、SS、SSSの12種類です。Gは全く適性がなく機械化に耐えられない、Fは20%以下の5級機械化体程度は受け入れられる、Eは40%から20%の4級、Dは3級、Cは2級、Bは1級、Aは完全機械化体を受け入れられる人間です。
 ちなみにA級で1千人に1人程度です。AAは短期的な人格権の停止を受け入れられる、AAAは長期の人格権の停止を受け入れられる、Sは永続的な人格権の停止を受け入れられる、SSは永続的な人格権の譲渡を受け入れられる、SSSは人格権の放棄を望む人間です。
 さらに細かい種別がありますが、主なものはこの様になっています。ちなみにSSSは1億人に1人いるかいないかです」
 そのSSSが私だと言うのだろうか? そんな気持ちは無いのに。
「契約は基本的には中断できませんが、上位の契約への変更は受け付けます。もし変更する気があるなら、その時に担当者に言ってください」
「そんな事はありませんよ」
 笑顔が引きつっているのが分かる。それでもそんなことは無い筈だ。

「あとは細かいオプションですね。機械化法により顔は生身の時のものを再現させていただきます。
これは被改造者の人格維持にとても大きな意味があり、非人間型の改造体でもインターフェイスにはその人の顔が使われます。
 失礼ですが、自分の顔にご不満があるなら整形手術を生身のうちに受けてください」
「いえ、このままで構いません」
 自分の顔には不満は無い。
「性処理用擬似性器はデフォルトで搭載されています。ただし、完全機械化体は全裸である方も多いため、カバーを付けさせていただきます」
「はい」
 いくら作り物でも丸出しと言うわけにはいかない。
「なにかオプションを付けますか?」
 差し出された資料には、擬似排泄孔や擬似乳腺などまである。それぞれにかなりの額の料金が記載されている
「オプションは要りません」
「わかりました。では次に…
 さらにいくつかのオプションの説明がなされていった…

「それでは正規の書類と確認できましたので、契約に移る事になります」
 KAORIさんは一枚の書類を取り出した。
「これは改造契約の宣誓書です。記録を撮りますので、発声による宣誓の後指紋捺印をお願いします」

 改造契約同意書

 私はMS社の機械化秘書登録プログラムに従い、完全機械化体への改造を望みます。

  柏木 晴香

 声をあげて読み上げる。ナイフで切った指先から滴る血で拇印を押す。
 これで私は改造を受けることが決まった。

「ご苦労様です。それではこれより改造へ向けてのスケジュールへと移行させていただきます。まず、表情パターンの採取。
改造への心構えをカウンセラーの先生にお聞きください。さらに秘書としても教育も受けていただきます」

「改造前に行きたい所があるんですが、よろしいですか?」
「はい、改造手術は1ヵ月後ですから、指定の休日にお出かけください」
「わかりました」

 [柏木雪] 名札が掲げられた部屋に入ると、様々な機械に囲まれ、いくつもの管が身体に刺さった少女が目に入る。
「雪、もう少しの我慢だよ。手術と義体を買うお金は出来たから」
 自分のミスで交通事故に巻き込んでしまった妹が半植物状態のまま眠り続けて半年、奇跡的にかすり傷で済んだ晴香は自責の念に囚われていた。
 回復の可能性は十分あるが、手術費用とボロボロになった身体の代用となる義体の購入代金。両親を事故で失い保険金で暮らしていた姉妹には払う事はとてもできない額だった。
 晴香がどうしても必要だったのはこのための金だった。だからこそ自分の身体を売るようなことをしたのだ。
 手術のコーディネーターに前金を払い、義体の手配を終えた今、この身体で会う最後のチャンスだった。
「次に合う時は2人とも機械の体かな? でも、ちゃんと雪の事は分かるよ」
 髪をなでる。この手触りも最後だ。
 晴香は面会時間が終わるまで雪と共にいた。

 ついにその日が来た。
 患者用の服を着て待機室で待っていた晴香の下に、KAORIさんがやって来た。
「最終確認です。完全機械化体への改造手術を受けますね?」
「はい。お願いします」
「わかりました。こちらへどうぞ」
 促すように開かれた扉から手術室が見える部屋に入る。
 ドラマなどで見たことがある手術台が2つ並んでいた。そのうち一つには銀色の身体が厳重にパッケージングされて置かれていた。
「あれが晴香さんの新しい身体ですよ」
 銀色に輝く身体は明らかな女性のフォルムをとっており、無表情なマスクは毎日見慣れているものだった。
「脳と脊髄を取り出した後、必要な処置をしてあの身体に接続、収納します」
 開いている義体の後頭部を指し説明する。
「そろそろ先生が来るようですね。処理が終われば世界が完全に別物になっているはずです」
 促されてベットで横になる。完全機械化体の女性が部屋に入ってくる。
「晴香さん、それでは改造手術になります。全身麻酔で目が覚めたら機械の体ですよ」
 手早く準備が行われ、麻酔用のマスクを当てられた。
 さようなら。私の身体…
 意識は闇の中に消えた。

                        「そして10年後」への分岐路→

>human-machinery interface接続・・・完了
>記憶用HDD接続・・・完了
>無線ネットワーク接続・・・失敗
>起動開始・・・完了
 闇の中に文字が並び、完了の文字と共に視界が開ける。
 まぶしいと思った瞬間、カメラが絞られ適切な明るさになる。
「起きましたか?」
 MS-2KAORIがのぞきこんでいる。
「MS-16HARUKA起動完了しました」
 あれ? 私何を言っているんだ? 私の平坦な口調にKAORIさんが驚いている。
「晴香さん?」
「え、はい。大丈夫です」
 慌てている。機械の癖に…
 違う機械じゃない。私は人間。こんな身体でも人間なの。
「気分はどうですか? かなり興奮している様ですが」
 興奮している。確かに。文字通り生まれ変わったような気分だ。
「はい。最高の気分です」
「よかった。改造直後は以前との感覚の不一致に体調を崩す人が多いそうですので」
「じゃあ、身体を起こしてみましょう。はい」
 KAORIさんの合図に従って、身体を起こす。
 体内の機械が立てる音が聞こえる。
「運動プログラムに異常は無いようですね」
「はい、問題なく動きます」
 身体を起こした事で全身が良く見えるようになった。銀色の輝きが綺麗だ。滑らかな表面に周囲の光景が映りこむ。
「新しい身体はどうですか?」
「綺麗ですね」
「はは、多くの人が同じ事を言われますよ」
 本当に綺麗。とても人間には見えない。
「次は、立ち上がってみましょう」
 銀色の足が持ち上がり、床に降ろされる。あ、ヒールも付いてるんだ。金属製の床と金属製の足がぶつかって特有の甲高い音がする。不思議な感覚だった。ヒールの先まで感触があるんだから。
「バランサーの調子も問題ないようですね」
 立ち上がった私がしっかり直立しているのを見て、KAORIさんが確認する。
「じゃあ、こちらに来てください」
 カン、カン、カンと響き渡る音と足の感覚に意識が向いてしまう。
「はい、歩行プログラムにも問題は見当たらないようですね」
 指定の位置までたどり着いた私に笑いかける。
「じゃあ、こちらを見てください」
 促された先には大きな姿見に私が映っていた。
 丸みを帯びた女性型のフォルムと銀色に輝く外装。理想的な女性型機械だった。
 機械… そうだ、理想の機械だ。人間じゃない。私は機械になったんだ。
 違う。機械じゃない。身体は機械でも中身は人間だ。
 嘘。中身も機械が詰まっているじゃない。
 嘘じゃない。心は人間よ。
 私は心まで機械になりたいんじゃないの?
「そんな事無い」
「どうしたんですか?」
 思わず口に出た言葉にKAORIさんが驚いたようだ。
「随分興奮していたようですが?」
「すいません。新しい身体に興奮してしまったようです」
 とっさに誤魔化した。
「そうですか、今日は色々あったから疲れたのかもしてませんね。もう休みましょう」
「はい」
 確かに色々ありすぎた。あんな事を考えるなんて疲れているからに違いに。
「それではレストルームへ案内しますね」
「はい」
 促され手術室から新たな一歩を踏み出した。
 幸か不幸かレストルームまでの道のりで人に合う事は無かった。
「こちらが晴香さんのレストルームです」
 柏木晴香・MS-16HARUKAと書かれた大きめなカプセル状のスペースに、人1人が十分入る大きさのカプセルが据え付けられていた。
「以前に説明しましたが私達の身体はバッテリー動いています。これは接触型充電装置で、一日分なら約20分ほどで充電が可能です」
 充電なんてますます人間離れしているな。
「フル充電されていれば、無充電で最低でも480時間稼動できます。ただし、これは生命維持機能の動力も含みますので、決して使い切るような事はしないでください。
 また、非常時用に生命維持モードに入れば全く動けませんが残り稼働時間の3倍まで生命維持装置を稼動させ続ける事ができます。
 必ず毎日最大まで充電を行ってください。余裕があっても過信せず必ずです。これは命に関わりますので必ず守ってください。
 派遣先の各社にもこれに順ずる設備の設置が義務付けられていますから、そちらでも気をつけてくださいね。
 それでは入ってください」
 カプセルを開け身体を中に潜り込ませる。

>バッテリー充電開始します
>現在98%

 不思議とリラックスする。意識が遠くなる。
「それでは、また明日会いましょう」
 KAORIさんの声を最後に意識は闇に消えた。


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