今日は、月1回の義体のメンテ、予約した9:00少し前、なにわ大学病院に行く。
 毎月1回、医師が整備用ハッチを開いて、バッテリーやと回路のチェックを行うんだけど、否応なく機械の体の実感がして好きにはなれないが仕方がない。整備不良でバッテリー切れになったら、行き倒れになってしまう。
 私ら義体の人ってアンドロイドと同じって誤解されやすいけど、元々人間で脳は生身だからバッテリー切れすると脳に酸素を送れない訳で本当にやばい。アンドロイドのように再充電で復活っていかないもんね。生身部分は。
 来月は、半年に1回の入院して3日コースでオーバーホールだから、事前検査もあるので、いつもよりは時間がかかるかもしれないけど昼前には終わるだろう。一応、午後の講義も病欠で休講届出しておいたけど。

 通いなれた13号棟の義体科診察室の待合で待ってるとき掲示板に気がついたんだけど、来月は飛び石で休日が多い。3日間続けて休みじゃない日がそう多くない。オーバーホールの検査枠もあまり残っていないので、順番を待ってる間にちょうど1ヶ月後の同じ曜日に予約をしする。来月はオーバーホールかと思うと憂鬱だけど。

 看護ロボットに順番を呼ばれて診察室に入ると、担当の善哉教授と若い男性の助手がいた。中年の善哉教授一人のときでも整備用ハッチを開けられるの緊張するのに・・・若い男性。
 いつもどおり、服を脱ぎ全裸になって整備台の上に横になる。上を見ると善哉研究室の研修生が中2階から見学している。恥ずかしいと思うが仕方がない。生身の体のときも検査の時、インターンの先生が横にいたもんね。大学病院の宿命だとあきらめる。

 教授が助手に指示を出し、下腹部のハッチを開けさせる。ハッチの中の端子に検査用PCをつながれると、私の体は私の体であって私の体ではない。私に感覚はあるものの私の制御を離れるんだ。
 いつもながら不思議な気分。生身の時の感覚でいうと金縛りって感じかな。

 検査用PCを覗きながら、助手が「主電源電圧よし。副電源電圧よし。ログ転送よし。・・・・・」毎月恒例のチェックが始まる。
 あと、整備台から立ち上がっての外見検査だけが残る。この外見検査がじろじろ体を見られるようでイヤな感じなんですが
 次は外見検査か。と思っていると、教授の助手が「学生達に中の構造も見せてあげてください」と指示。
 えっ、「聞いてないよ〜。」と思うが、まだ、私の体はまだ私の制御じゃなくエアーが供給されないので声も出せない。
 助手によって、私の体の下腹部ハッチ、胸部ハッチ、背面ハッチ・・・すべての検査用ハッチが開かれた。
 エアーポンプ、酸素供給機・・・義体の部位を中2階から見えるように説明する助手。生身の人間だったら人権問題で訴えたいところだが、現在、義体化手術の認定病院はなにわ大学病院だけなので訴えたら、今後のメンテも出来ない。
 教授が中2階の見学室にいた研修生に「近くによって触ってみないとわからいぞ。」なんて言ってるよ。鬱、鬱、鬱、
 中2階からは、顔もお互い見えなかったけど、検査室に下りてきたら顔もお互いわかっちゃうよ。肌ざわりとか、構造とか、ノートにつけながら、男10人くらい女5人の研修生が私の体を触ってる。研修生っていっても現役だと私と同じ年だし、同じ府内だしサークルやバイトの友人がいたら嫌だな。まぁ、さすが医学部、人工性器を触られなかったのがまだ救いだけど・・・ねぇ。

 検査PCとの接続を切り、私の体が私の制御に戻る。次は、立ち上がって、次は外見検査なんですが、体のコントロールが戻るとまだ、研修生が見ていることがへの恥ずかしさが増した気がする。
 丸い台の上にたって回転されながら、じろじろ見られる外見検査。傷やめくれがあるとそこから腐食するということで通常は1回転でスキャナー検査と目視検査を行うんだけど、15人もいるから5回転もまわされる。その間、私は全裸。
「いつもより多めにまわしております」なんて教授は親父ギャグをいってるけどこっちの気も察してほしい。
 研修生退場後、教授から検査結果異常なしといわれひと安心。

 あと、看護ロボットから起動前セルフチェックの指導を受ける。毎月同じことなんだけどね。
・バッテリー75%以下の時は外出しない。
・生活防水レベルなので水には近づかない。
・溶剤は・・・、洗剤・・・、雷は・・・、静電気・・・、ローション・・・、
 つまらなく、読み上げをさせられ、誓約書に判子を押す。一応、義体の所有者は国で、なにわ大学のパイロット事業として私に貸与されてる形のなので、整備や手入れに義務も多く面倒なんだよ。
 なんやかんやで検査から解放されたのは13時過ぎ昼前に終わると思っていたのに、病欠届も出したことだし、午後は、なにわ大学近くの学生街をふらついてみることにしようかな。



「あ〜、今日も朝から講義がだるい」
 なにわ大学近くの下宿で目覚めた直之は、なにわ大学医学部の3回生、代々、医者家系なので医学部に入ったが、本当は血を見るのもイヤなため血をみることの少ない義体工学科の善哉研究室に所属している。今日は、1講目〜2講目連続で「義体工学」の特別実習がある。
 13号館の検査室の中2階見学室で、善哉教授より、今日の患者は、20歳の完全義体化した女性との説明。診察、検査の段取りの説明があった。なにわ大学の先端技術プロジェクトの作品らしい。今回は、高田助手が実際の検査を担当し、それを上から見る形での実習である。

 高田助手が下の検査室に下りると、見学室に残されたのは学生だけである。検査室の患者さんの顔の位置は曇ガラスになっている。が、逆方向の見学室から検査室は丸見えである。また、検査室にマイクがあり、その音を拾って、見学室に流す形であるが、患者に見学室の声が聞こえると緊張させることがあるので防音も万全である。

 検査前の問診で「林美穂」と名乗った女性。きれいというよりかわいいタイプに見える。義体のSpecは身長150B85W60H85につくられているとレジュメに載っている。こんなかわいい子の身体が義体(機械)になっちゃって、可哀想だな、 とは思う。
 でも義体化当時のSpecで義体をつくるのが原則だけど、教授に包めばスタイル改造もOKとの噂もある。生身の身体のときのSpecは、さてどんな感じだったのだろうか。それによって萌え度は違うぞ。と思う。
 
 全裸になり整備台の上に横たわる林美穂を研修生がスケベ心丸出しで覗き込む。直之も見やすい場所をGET。高田助手が検査PCを操作すると検査画面が見学室の大型プロジェクターにも映る。
「人工性器機能OK」の表示で盛り上がるが、検査画面を見てるだけではあまり萌えないものだ。

「学生達に中の構造も見せてあげてください」と教授が指示。やったね。体の制御は出来なくても
感覚はあるらしい若い女って、本来、構造や機器を見ないといけないんだけど、やっぱ、胸の肌触りと人工性器でしょ。男なんだから、といっても、人工性器を触る根性はないので・・・見てるだけ・・・でも、人工性器ってやっぱダッチワイフだよな〜と思う。
 次は外見検査だって、全裸で丸い台の上に立たせて回転させながらの目視検査。東南アジアの買春かよって感じ本当に真面目にじっくりと目視検査したよ。大学に入って一番真面目に、外見検査のときは、生身の脳の制御下にあるわけで、ほんと羞恥プレーだよねぇ。

 見学が終わって見学室に上がる。萌える香具師。萎える香具師色々な男もいるが、女の反応がすごい。いつまでも若いのがうらやましいのか、「完全整形女」とか、「生体脳付ダッチワイフ」とかなんとか。俺も思ってたけど口には出せないよ。義体科に生身の看護婦がいない理由がわかったような気がする。女って怖いよね。

 教授が戻り、まとめと来週の「ログ解析」の実習の予習箇所の説明があり講義が終わる。あ〜もう1時過ぎだ。



 なにわ大病院の待合室で充電をして、裏門から七甲台の町を歩くことにする。生身の身体だったら、七甲台といえばなにわ大正門前のケーキなんだけど義体に消化器がない私には縁がない。ケーキ屋の前を通るのも悔しいので裏門から帰ろうと歩き始めると、何やら懐かしい姿が・・・
 前を歩いているのは、えっ、もしかして小学校で同じだった直之君?
「もしかして、直之クン?」って声をかける。
 近くの公園で昔話をする。直之君って中学からなにわ大学付属中学だったから、小学校時代しか昔話できないけど、今、医学部に通ってるんだって。直之君ってお医者さんになるんだ。小学生のとき、大人になることはないって言われたことを彼が覚えていたので、高校時代に大手術(って義体化手術だけど)をした話もしてしまった。まだ、義体だってことをカミングアウトする勇気はないけど。
 公園で長話してるとのどが渇く。彼のデーパックからコーラのペットが出てきた。口に入れたものは、ノドのフィルターを通して胸のタンクにたまるわけで、糖分は厳禁。私は、あわてて、断る。断る理由が思い浮かばず「射矢ガールのあすみちゃんと同じ体質で・・・」
 彼は勝手に、「女の子はダイエット大変ねぇ」と・・・ホッとする。
 私の場合、発声器と脳への水分補給が必要なんだけど、胸のタンクに蒸留水を補給が必要なんだ。今日は蒸留水をペリエのペットに入れ替えていたので、彼の前でも普通に補給。
 帰り際も彼は自販機で缶ビール買って「飲めへんか?」って、これは普通に「女の子って道歩きながらビールのめへんよ」と断れましたが。
 来週どこかで直之君とまた会うことを約束。来週が楽しみ。
 午後から休講だったので、先週,あった直之と会うことに、

 前回あったときは、突然だったけど、今回は前もって準備ができる。
 でも、服の素材も静電気対策で制約。磨耗対策でデザインも制約。自作しか着れないんだよ。前に赤い布でかわいい服作ったときは、人工皮膚に色移りしてしまって、メンテの時に善哉教授に大目玉くらったことも
 化粧も人工皮膚が色落するから指定品しか使えないし、髪型も切るのいいけど生えてこないから
あと、アクセサリーも指定品以外厳禁、金属は内部の腐食の原因になるんだって

 結局、先週と変わらない姿で、五宮まで地下鉄に乗って出かける。直之君はなんと七甲台から自転車で来たらしい。自転車を置きに自転車置場に行くんでと荷物を預かる。
 荷物っていっても、講義のデジュメだけでけど、医学部ってどんな勉強ってデジュメを見てみると
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「義体工学」
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試料1
検査日 平成16年10月17日
氏名:林美穂 昭和59年12月24日生まれ 平成15年10月15日義体化 年齢20歳
血液・・・義体タイプ・・・バッテリー最終交換日・・・
(中略)
性機能 人工膣=未使用、口腔性交=未使用 人工肛門性交=機能なし
(以下略)
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 ショック!!
 直之君、知っていたの?私の体
 検査のときの研修生?
 義体科って工学部じゃなくて医学部だったんだ。
 ここまで学生に配られてるんだ・・・・



 2コマも真面目に講義を受けたから、もう今日のノルマは達成。パチ屋にでも行こうと裏門を出ようとすると「もしかして、直之クン?」って声をかけられた。えっ、小学校のときの美穂ちゃん?なんかさっきの機械化人間と似てるなぁ。と思うが失礼なので確かめられない。でも、手をつないだら暖かいし・・・すごくかわいいし、今まで医者の息子でなにわ大医学部だからって群がって来たバイキンギャルとは違って・・・清楚な感じ。他人の空似だろう。と思い込むことにする。
 小学校のときから持病で大人になるまで生きられないとか近所のおばちゃんがいってたけど、高校のときに大手術して助かったんだって。来週いつか会うことになった。ラッキー。

 夕方、同じ研究室の松井と飲み。松井は機械化人間に興味あるとのことで、今日の実習のバカ話。義体とのセックスや義体の鬼畜改造で盛り上がる。松井によると義体の人工性器は感度調整が難しいそうで論文のテーマにもなるってことだ。現在、義体になってる人の義体は実験用の名目なので色々実験の義務があるらしい。松井も人工性器の感度調整のテーマで実験申請をするらしい。まぁ、おれは松井に実験動物として協力するとだけ言っておいたが・・・
 午前中は、「ログ解析」の講義だった。が、直之は11:30起床。デジュメだけ友人のから受け取り、自転車で、五宮まで地下鉄に出かける。自転車を置きに自転車置場に置きにいって帰ってくると午前中のデジュメが開いていて、美穂は消えていた。なんで、

 開いたデジュメをみると・・・・
 えっ、マジ。あの義体の女の子って美穂だった。今まで義体のこと悪くいったかどうか思い出す。多分、悪く言ってないだろう。と思う。でも、松井の申請通ったら美穂が実験体になるのかと思うと鬱。と、まぁわけわからん状態の俺。

 とりあえず、美穂を探すことにする。

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