目が覚めると、視界が違うことに気付いた。メガネをかけないと足元も見えなかった筈なのに、今では遠くの物もはっきりと見える。
(もう、時間がないわ…)
  自分が徐々に別の存在に変わっていくことが分かる。既に、身体の中につまっているのが、肉ではなく機械であることも。
 パジャマをめくると下腹部を中心に金属質の部分が表皮まで侵食している。
(なんで私がこんな目に会うの?)
  あの日、あんな目に会わなければ私もこんな身体にならなかったのに…


  気が付くとそこは手術台のような場所だった。裸で手足を拘束され身動きできない。口には猿轡がされており、声を上げることも出来ない。
(なに? ここは何処?)
  恐怖に震える私は、以前のことを思い出した。コンパの後、終電を降りて最寄り駅からの帰り道。暗い道で口元にハンカチのようなものを押し付けられて気を失ったのだ。
(誘拐?)
  私はどうなってしまうんだろう?
  不吉なイメージばかり浮かぶ。しかも、この手術室。何をされるのだろう?
  数分とも、数時間ともとれる時間が過ぎた。
  恐怖で気が狂いそうな私に一つの変化が訪れた。ライトがついて私を照らしたのだ。
(何が起きるの?)
  その変化にまたしても恐怖を感じる。
(解剖されちゃうの?)
  そんなことを考えていた時、音も無く部屋の隅の扉が開いた。そこからは、白衣の男が2人入ってきた。一人は無針注射器のようなものを抱えていた。注射器の中身は奇妙な虹色に輝く物だった。
「目が覚めているようだね」
  注射器を持った方の男が語りかけてきた。
  私はとりあえず首を縦に振る。
  その間、もう一人の男は私の下腹部をアルコールの付いたガーゼで拭いていた。アルコール消毒特有のスーッという感覚がした。
「これから、君の身体にこのナノマシンを注入する」
  男は宣言するように言った。
「君の身体は徐々に内側から改造されて、約2ヶ月かけてサイボーグになるんだ」
「んー!んー!(嫌!止めて!)」
  必死に抵抗するが、手足の拘束は全く外れなかった。
  そのまま注射器が押し当てられ、プシュッっという音と共に虹色の物が身体の中に流れ込んでいった。
  目が覚めると、そこは自室のベットの上だった。
「夢… だったの?」
  思わず、パジャマをめくって確かめる。
  何も無い。
「ふう、嫌な夢だった」
  声に出して言う。心臓が落ち着くのを待つ。ふと、時計を見ると8時を指していた。
  学校へ行かなきゃ。
  急いで準備をしつつ、パソコンを立ち上げる。
  メールチェックをしなくちゃ。
  メーラーを立ち上げると、いくつかメールが届いている。
  由美子と久美から1通ずつ。
  あと一つ、差出人doormaster?何これ?
  メールを開く。
  そこには、フレームワークの人型と下腹部に虹色の塊が映し出されていた。
  そして短い文章が続いていた。

 inside … 1%
 skin  … 0%
  君の身体の改造状況だ。毎朝データを送る。
  なお、一定値まで改造が進んだら回収する。

  文面はそれだけだった。
(夢じゃない!)
  絶望が再び私を包んだ。

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