彼女の視界には両方の義手の具合が悪いことを示す、点滅するマークが現れていた。彼女の義眼は、各種情報が自動的にスーパーインポーズされるようになっているのだ。
「ああンもう、また腕の調子が悪いの?いちいち直すのもしゃくにさわるけど、警告のチラチラ(点滅表示)がうっとおしいから替えちゃおう。あーあ面倒くさいなあ」
そう言うと、彼女はメンテ室に向かった。
そして工具箱をとりだし、いすに座ると、彼女は自分の体の「メンテナンスモード」を呼び出した。視界に「メンテナンスメニュー」なる項目が現れたので「四肢の着脱」を選ぶ彼女。すると、四肢のどれを外すかを指定するサブメニューが出てきたので、彼女はまず左腕を外そうとして…。
「いちいち二回メニューを呼ぶのは面倒ね」と思い、両腕を外すと指定した。
するとゴトンという音を立てて、両腕が外れ床に落ちた。そして工具箱を開けようとして気づいた。両腕が無いのだ。これでは工具箱を開けることも腕をひろい上げることもできない。
「きゃー!しまったー!」と情けない叫び声をあげる彼女。
片腕づつ外して、もう一方の腕で修理するつもりが、うっかり両方外してしまったのだ。
とにかくこれでは何もできないので、とりあえず元に戻そうと思ったものの、残ったひじ上までしかない短い腕のつけ根だけで、外れ落ちた腕をひろい上げるのに、じたばたするはめになってしまった腕を外すぶんにはメニュー一発でできるが、つけるには腕をつける場所にしっかりとあてがい、そうしながらメニューで腕をつける指定をしなければならないのだ。
そうしているうちに、やっとの思いで腕をひろい上げることができたものの、短い腕と頭だけではなかなか元の位置にあてがうこともできず、彼女は生身の腕の何倍も重い義手をすべり落としてしまった。
じたばたと何度もくりかえすうちに、ついに彼女は無理だとあきらめてしまった。
彼女はもう、半泣き状態である。

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